うさぎさん、全く奇襲しようとすれば忙しくなって困るぜ
予想以上に時間を取られちまった。
ヘンドリックに奇襲掛けようと思った矢先に楓夏から女の子捕まえたけどどうしたらいい？ とか念話が来たのでジョゼに頼んで牢屋に転移させておいた。
ついでに顔見知りだったのでウサギさんも牢屋に転移。
あまりにも無防備だったのと、密かに狙っていたのでチャンスっとばかりにハッスルさせていただいた。
御蔭で時間掛かったよ。
なんで奇襲仕掛ける時に限って忙しくなるかなっ。
「疾ッ！！」
んで、また戦場に舞い戻って来ていざ奇襲、と意気込んだ瞬間、こいつだ。
サイドステップ踏んで飛んで来た何かを躱す。
短剣？ しかも縄付きかよ！？
飛んで来た短剣は地面に突き刺さる、が、直ぐに引き抜かれて持ち主の元へ、あいつは……べルクレアか！
「見付けたわよワールドエネミーッ！ 確実に仕留めるッ！！」
飛びかかってきたべルクレアを転移で避ける。
って、反応した！？
「転移は魔力の移動を見れば分かるわッ！ そこっ！」
「っらせるか！！」
うおわっ！？ なんだ？ 今変な言葉聞こえた。しかも割り込んできたソイツはべルクレアの放った短剣を蹴り落とす。
「よぉべルクレア。ウサギと戯れてねーであたしと遊ぼうぜ」
「コルトエアさん……」
おお、コルトエアか。唐突に視界塞がれたんで女性とすら分からなかったぜ。
べルクレアは任せた。
コルトエアが何とかしてくれる様子だったのでそのまま放置して走りだす。
「あ、ワールドエネミーッ！！」
「おいおい、他所見かべルクレア？ ずいぶんと余裕だな」
「このっ、なに降ってんですか先輩ッ」
「わりぃな、ウサギにゾッコンになっちまってな。悪いがテメェは、あたしが潰すッ」
コルトエアさん、倒したらジョゼに頼んで牢屋に飛ばしといてソイツ。
「覚えてたらな」
「何を言ってるんですか！」
あ、悪い、俺の念話に返事したから突然意味不明の独り言喋ったみたいになっちまったようだ。
そんなコルトエアを放置して、俺はさらに駆け抜ける。
「ウサギぃぃぃっ！！」
げぇ！？ じいちゃん！？
「貴様にじいちゃんなんぞと呼ばれたくないわッ！！」
リアとぶつけるつもりだったけどマールちゃん出現で自由の身になったライゼンさんが突撃して来た。
慌てて逃げようとする俺の前に、またも割って入って来る女性が一人。
「啓太君無事！？」
「むぅ、確か、高藤桃瀬じゃったか」
「ええ。本当はリアちゃん任せだったけど、臨時で相手、させてもらいます。啓太君、私が守るからね！」
うおおっ、俺の彼女がイケメン過ぎるんですがどうしたらいいっ！？ ちょ、今のウインクもう一度やって！ もう一度っ。
「啓太君……茶化さないでよ」
溜息一つ。折角カッコよく出て来たのにといった思いが存分に込められている。
うん、ごめん、思わずテンション上がっちゃいまして。
あー、えー、ここは任せた。
俺は桃瀬にお任せしてさらに戦場を走る。
また誰かいる？
「俺は魔人の勇者ッこの前みたいな失態は……」
邪魔じゃー。股潜りっ。
「ぎゃぼぉっ！？」
「魔人の勇者ーっ！？ テメェクソウサギッ！ ブッ殺……」
あ……
暗殺者っぽい風貌の男がなんか叫びながら突撃して来ようとした。
真上に居たハーピーちゃんが急降下して彼の肩を掴んだ。
え？ と驚いた顔の男が天高く去って行く。
「ぎゃああああああ――――っ！？」
そして高所で落下開始。
うん、死んだな。
そっか、ハーピーちゃんは空から奇襲することにしたのか。
まぁこの乱戦なら滅多に狙われないから丁度良いかもしれないな。
「魔人も暗殺もまた死んじゃったか」
っ！？
声のした方に振り向く。
刹那、全身がびびっと来た。
「久しぶりだねウサギ君。僕は幸運の勇者。あの時のさいせ……うわっと」
クソ、避けられた！？
滅茶苦茶美少女じゃねーか。
オラッ、モフらせてやるから服脱ぎなっ！
「いや、話し聞けよ！？ 僕だよ僕ッ！ ＴＳ転生しちゃったけど、幸運の勇者。覚えてないのか！？」
幸運の勇者？ あー、そう言えばいたな。アンゴルモアに倒された奴。
……敵に幸運が付いてるのか。これはどうしたもんか。いや、こいつに関してだけは仕方ねぇ、いでよ、アンゴルモアーっ！！
「って！？ なんでぇ！？ 僕幸運じゃないの！？ なんでまたこいつがっ」
幸運の勇者のトラウマ、アンゴルモア君で……お前何してんの？ 全裸？
「ちょぉいっ！？ 今風呂入ってるとこだったんだぞ！？ なんで呼んだし！？」
そりゃ呼ぶ時はこっちの都合で呼ぶ訳だし、風呂に入ってるかどうかとかは分からんがな。
とりあえず、殺さない程度に幸運無効化してやってくれ。
あ、無効化したらちょっとハッスルするから向こう向いといて？
