マックス、ウサギ見付けた
戦場を娘と走る。
ひらひらと舞うスカート、やはり戦場にメイド服で来たのは間違いだっただろうか?
なんだから動きづらい気がしなくもない。
いや、しかし俺、いえ、私はタンク職。そこまで動かないから服装は問題ないだろう。
メイド服と言ってもバトルメイドという名前の戦闘用の服だ。魔術的効果で防御力を底上げされているのでそんじょそこらの攻撃じゃ傷すら付かない。
ふぬぅんっと娘に攻撃を仕掛けて来ていたロボの腕を盾で跳ね上げる。
アダマンタイト製の全身盾は私の身体に良く馴染む。
「せいっ!」
娘は剣を扱うことにしたようだ。
ずいぶん慣れているのはヘンドリック陣営に向かった時に冒険者たちと訓練していたからだろう。
実戦形式の闘いでガロワやストナたちと打ち合っていたので急激な経験値アップに繋がったと思われる。
彼女も充分に戦闘要員だ。
さすがに、経験不足のせいで敵意から身を守るのは得意ではないようだが、そこは私のタンク力次第でフォロー可能なはずだ。
「くぅ、こんなキモい父にフォローされるなんて」
「おいおい、照れるなリピラ」
「照れてないッ!」
はっはっは、ホント娘はツンデレさんだな。
これもウサギたちが娘の相談に乗ってくれて話す機会が出来た御蔭……ウサギいた――――っ!?
「あ、ウサギ!」
戦場に突如出現した白いウサギが走りだすのが見えた。
少し遠くだが見付けてしまった以上逃す訳には行かない。
娘は私が女装性癖に目覚めた一番の理由だと討伐を決めたらしいのだが、私としてはウサギ君に恨みは無い。
むしろこの道をしめしてくれたことに対する感謝すらあるのだ。
あるのだが、このまま娘がウサギと闘ってしまうと十中八九襲われてウサギ好きにされてしまう。
さすがに自分の娘の夫がウサギだというのは私が女になるよりも度し難い。
私とて女っぽくなるのはいいが女性に成りたいとは思わんし、娘が危惧するようなお父さんがお母さんに成るかもしれないっていうのはあり得ないことである。
あり得ないことなのだが、娘は警戒してしまっているので私としてはその警戒を解くためにも娘の近くで生活し続ける必要があった。ゆえに、恨みは無いが覚悟しろウサギ君。
「あ、見失った……」
ウサギが隠蔽スキルを使ったようだ。
見る見るうちに周囲の背景に溶け込んで行くウサギ。常人には追えないようだが私だけなら……
む、いかんっ!
「お父さんっ!?」
咄嗟に娘を庇う。
全身盾に衝撃。
馬鹿な、押し負けるっ!?
「クソ、不意打ち防がれた!?」
「だから言ったじゃん、その人S級だって!」
シールドバッシュで敵の攻撃を跳ね上げる。
その瞬間、相手の驚く顔が見えた。
男だ。どこかで見たことのある。しかしそこまで接点のある男ではない。
それと、もう一人、見覚えのある服装の女が共にいた。
「勇者か!」
「おうよ! 俺は真壁莱人! あんたの鉄壁破りに来たぜ!」
「ああもう、そっちの嬢ちゃんは私が相手になるよ」
「って、おい楓夏、名乗り名乗り」
「そんな旧時代的なことする訳ないでしょ。勝手にやってなさいよお馬鹿」
「おま、彼女に成ってから当り強くね?」
「あんたがちゃんとできるように教育してるのよ」
どうやら彼氏彼女の間柄になったようだが早速彼女の尻に敷かれているらしい。
懐かしくも初々しいな、ともう別れた妻との交際時を思い出して懐かしくなる。
「お父さん、さっさと片付けるわよ!」
「了解だ、真壁君だったな、悪いが押し通る」
「うぅ、変態おっさんの癖に無駄にカッコイイ顔で告げて来るのどうにかなんねーか楓夏?」
「え? 普通に無理。相手は任せたわよ」
そう言って娘との闘いを始める楓夏という名の女。
娘が心配だが、この男を倒さないことにはフォローも出来そうにない。
「行くぜおっさん。そのメイド服着て来たこと後悔すんなよ」
「ふっ、これは私の戦闘服だ。新しく生まれ変わった鉄壁のバトルメイドマックス・テルミドル、全身全霊を持って貴様を倒すと誓おう!」
相手の攻撃は基本蹴り技のようだ。
武装はスパイク付きのブーツ。
足を保護する機能と共に攻撃補助の魔術も入っているようだ。
しかし、攻撃力が桁違いだな。
我が防壁でも多少のダメージが入っている。
それはつまり防御越しの私にダメージを与えられるだけの攻撃力を持っていることにほかならず。武器が破壊されていないことからも武器自体もかなり強力なモノなのだろう。
アダマンタイトにダメージを与える武器か、アダマン製か、ミスリル製か、あるいはオリハルコン? いや、違うな、なんとなく神聖な雰囲気が迸っている。おそらく神聖武具の類だろう。
一体何処からあんなものを?
いや、そもそも、木下麗佳という勇者によって全ステータスが底上げされているこちらに対して普通に闘えている、むしろ圧しているのはどういう理由なのだ?
今回の闘い、ただの蹂躙劇にはなりそうにないようだ。




