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福田、逃げ切るしか、道が無いんだ

「ラクェレット、こっちだ」


 天幕からゆっくりひっそり逃げだした俺は、小さな少女の手を引きながら走っていた。

 さすがに彼女に合わせているので速度は出ない。

 そのせいで気持ばかりが焦ってしまう。


 彼女は、その、俺がウサギたちにそそのかされて告白してしまった少女だ。

 まさかの幼児。事案案件だった。

 でも彼女はうーんと迷って、迷って、でも俺を彼氏にしてもいいよって言ってくれた。

 だったら、もうこの子を守り切るしかねぇじゃねぇか!


 犯罪? 上等だよ。

 俺はハーレムなんか望まない。綺麗で高嶺の女性なんざ狙わない。

 平凡で良い。多少不細工でもいい。

 ただ、ただ……女の子と恋仲になりたかった。


 その望みをかなえてくれるなら、例え年が離れすぎてても、構わない。構うものか! だから、俺は彼女を連れて戦場から逃げだすことにした。

 もう充分だろ? 俺のやるべきことは果たした筈だ。だからもう、彼女と幸せに暮らさせてくれ。

 彼女は孤児。天涯孤独で家も無い。

 一応教会住まいではあるものの、そこまで他の皆と仲が良いわけでもなく、ただ日々を過ごす事だけを考えて生きている。


 そんな生活送り続けるよりは、ってウサギからレッセン共和国に逃げればいいと言われた。

 あそこなら戦争は及ばないし、クラスメイトの知り合いがウサギの家に住んでるらしい。そこなら部屋も余ってるらしいし、念話で連絡入れたら問題無いって言って来たから向えばいいんだと。


 ラクェレットを幸せにしてやれる。

 俺を唯一彼氏にしてくれると言ってくれた女の子だ。

 絶対に、絶対に幸せにしてみせる。だから、だからっ!!


「どこへ、行くのデースか?」


 走る前方に、突然何かが飛んで来た。

 嫌な音を響かせ地面にめり込む小さな何か。

 飛んで来た方を見てみれば、物見櫓の上に佇む揉み上げが濃い男が一人。


「ジョージ……」


「おかしいデスね? なぜ君が女の子を連れて走っているのデース?」


 咄嗟にラクェレットを隠す。


「ミーたちはモテない同盟を組んでいたはずではアーリマセンカ? しかし、この位置関係、まるでその子を守っているかのよう。つまり、どういうことデース。そこの少女。あなたはそこの男のなんなのですか?」


「え? あ……か、彼女です。こ、告白されて、受け入れまし……ひぃっ!?」


 彼女、告白を受け入れた。

 その言葉でジョージの顔に般若が宿る。


「ジーザス、福田。お前は、お前だけは、我が永遠の親友だと思ってマーシタ」


「悪いな、俺は求めていた彼女が出来た。戦線離脱させて貰う。ウサギと闘う理由がなくなったし、彼女残して闘いに出るとか死亡フラグは御免だ」


「なりまセンッ!!」


 ズダン、硝煙を煙らせながら小銃が火を噴いた。

 俺の頬に傷が出来る。

 見えない鉄の塊が通過したらしい。


「闘いなさい、我が親友だというのなら!! ここで逃げるというのならば、我らが情報を持ちてウサギに下った憎き裏切り者として処分する。リア充、イズ、ダーイ!!」


 やっべぇ、あいつ、眼が血走ってる。これはマジで殺しに来てるぞ!?


「落ち付けってジョージ。俺に彼女が出来たんだぜ? お前だってセレスティ―アさんに執着せずに女の子ナンパしてけばきっと出来るって、なんなら手伝うからさ」


「NOォ――――ッ!! ミーはセレスティ―アに童貞を捧げマースッ! そして経験を積んでハーレムマスターになるのデース! 一等地を買い上げビルを作り、下民共を見下しながらバスローブを着て豪華な椅子に座り、ペットのワーキャットを膝に乗せながらワイングラスを片手に人がゴミのようだ、と言ってやるのデース!!」


 夢がゲスすぎる……


「我が友だった者よ。お前の記憶は我が胸の内に。大人しく、死ぬがいいデース」


 ジャキリ、銃口がこちらに向けられる。

 せめてとラクェレットを抱きしめジョージに背を向ける。

 この子だけは。この子だけは絶対に……


「転生して出直すが良いデース。ディアマイフレ――――ンド!!」


「クソ、ちくしょぉッ!! 折角、折角彼女が出来たってのに……ラクェレット、せめて、せめて君だけでも……」


 ラクェレットを逃そうとする。

 だけど、彼女は震えながら俺に身体を寄せて来た。

 力無い手がぎゅっと俺の服を掴む。


「い、一緒だよ。これから、幸せにしてくれるって、言ったでしょ、タカくん?」


「……ぁ」


 驚く俺の唇に、少女はそっと触れる。


「No―――――ッ!! 見せつけんじゃねーデースッ!!」


「いーや、見せつけてやれッ!! 分からずやのジョージには丁度良い罰だ!」


 乾いた音が一発。パァンと鳴った。

 俺の身体に何かが突き抜ける感覚が……来ない?


「ぬっははははっ! 鋼鉄の身体と言うのはこういう時だけ便利だなオイッ!! 良く頑張った福田、そしてその若すぎる彼女。安心するが良い。我が来たからには貴様等の安全は数千年単位で約束された。そしてジョージ! 我が暗黒魔法の真髄に触れ、三千世界の輪廻転生を覚悟せよ! 我が名は、そう! 我が名はッ!! 暗黒十字軍創設者にして闇の覇王! 魔人、ロアであるっ!!」


 ……なんかまた面倒そうなの来たぁ――――っ!!?

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