幸次、俺の女になって貰うぞ真廣さん
戦場を縫うように、俺は必死になって探していた。
元道真廣。俺の初恋の人で憧れの人だ。
今は、クソウサギの毒牙に掛かっちまったが、俺はその程度で諦めたり落胆するようなクソじゃない。
真廣さんが居ればいい。俺の傍に、俺の彼女で、ずっと笑いかけてくれてればそれだけでいいんだ。
でも、今の状態じゃ無理だ。
だから、この戦争で必ず勝つ。
そして真廣さんを捕らえて監禁する。
といっても戦争が終わるまでだ。
真廣さんだって戦争が終わって俺が求婚すれば嫌とは言うまい。
その時はウサギも死んでるだろうし、俺と真廣さんの間を邪魔する奴は誰も居なくなってる筈だ。
最悪は、そう、最悪は、セレスティ―アさんにお願いしなきゃいけないかもしれないが、真廣さんならきっと分かってくれるはずだ。
俺が一番貴女を愛しているんだと。
「見付けた! 真廣さ……」
「ま、そう来るわよね」
ちぃっ!
横合いから突き出された槍をぎりぎりで躱す。
誰かと見れば、そこにいたのは戸塚葉桐。
おまっ、関係ない奴が出てくんじゃねぇ!!
「悪いけど元道さんは先約済みよ、そっちが終わってからなら相手してくれるらしいから大人しく待ってなさい」
「なんだそりゃ? 真廣さんの相手? 誰だよ!?」
「なんでも剣術で越えたい奴がいるんだってさ。ほら、あのS級冒険者の」
S級? 剣術……ああ、ストナさんか、なるほどなぁ、ストナさんを越えたいってなら確かに納得だ。でもそれはこちらに来れば何時でもできること、今じゃなくてもいいよな?
やっぱ、俺が遠慮する必要性は皆無だ。
むしろ今ストナさんと闘ってる真廣さんの方が捕獲は容易い。
一騎打ちを邪魔するのは気が引けるが、ここは戦場。油断する方が悪いんだ。
だから、さっさと消えろ戸塚ッ!
固有スキルの打撃強化で思い切り腹パン決め込む。
無防備に受ければ内臓破裂、いや、一撃で腹に穴が開くかもしれん。
だけど俺の邪魔をしたお前が悪い。
慌てて槍で受けようとする戸塚。馬鹿なのか? そんな柄で俺の拳が受けられるわけ……痛ってぇぇぇぇ!?
ただの木の柄だと思った槍を思い切り殴り付け、骨が砕けるかというほどの衝撃に腕を押さえてのたうち回る。
な、なんでだ? 木下の強化スキルに加えた打撃強化だぞ!? 俺の能力ならアダマンタイトだって粉砕できるはず……
「あんた馬鹿なの? あんたに固有スキルがあるように、私にだってあるのよ固有スキル。スキル封印っていう便利スキルがさぁ!」
スキル、封印?
え? スキル封印ってスキルを封印するスキル?
ってことは、俺のスキルが、封印されてる?
「ちなみに皆には伝えてなかったけど、このスキル、常時スキルやバフスキルも封印するのよね。つまり、あんたは今麗佳さんのバフが及んでない、この戦場で唯一の……一般人よ!」
……は?
「あ、ちなみにこの槍、何の威力も無い鉄の槍だから。柄は木の棒よ?」
「なっ!? う、嘘だ。嘘だろ?」
「ホントなんだなぁ、これが。しかもこのスキル、私の周囲に入った時点で効果が発揮されんのよ。敵にだけ、便利でしょ?」
「チートじゃねぇか!?」
「そりゃそうよ。私達勇者だし?」
クソ、真廣さんがすぐそばにいるのにっ。
だけどこいつのスキルに無策で突っ込むのは無謀だ。
ただの馬鹿がやる突撃じゃないんだ。悔しいが、撤退するしかねぇ。
ヘンドリック達と対策ねらねぇと、こいつはあまりにも厄介だぞ。早めに殺すしかねぇ。
「おっと、逃げるのね。まぁいいわ。じゃあねぇー」
クソ、あんな女に……
だが、今回ばかりは仕方ねェか。
次は覚えておけよ戸塚葉桐。お前は必ずぶっ殺す。
血反吐吐き散らして吐しゃ物塗れに変えてやるっ。
ヘンドリックの居る場所まで引いて、戸塚の危険性を告げてやる。
すると、だったらなぜ追って来て俺にトドメを刺さなかったんだろ? と疑問を提示して来た。
おいおい、まさか、あのチートスキル、何か穴があるのか?
だから、俺が撤退したら下手に深追いしようとはしなかった?
「多分、時間的なものか、一人だけを対象に出来るか、なんにせよ強力なスキルなだけに制限は付いてる筈だ」
つまり、戸塚の奴に一杯喰わされたってことか!?
あのまま粘ってればあいつを倒せた?
く、っそがぁぁ!! あの女、ぜってけ許さねぇ!!
俺を騙したのか!
真廣さんの前で!
真廣さんを手に入れる直前で!
あの女さえいなければ俺は、俺はッ、俺はァッ!!
先にあいつだ、あいつを必ずぶっ殺す。
ヘンドリック、あいつを殺す方法はあるか!
「そ、そうだね。遠距離からの狙撃が有効かな?」
俺にそんなスキルはねぇよ!
クソ、近距離攻撃でなんとかならないのか?
どうにか、どうにか殺す方法考えねぇと……




