涙亞、あなたを越える、その為に……
蟷螂拳。構えたのは良いけど凄く困惑した顔をパオがする。
この構え知らないみたいだけど、それだけじゃないな。多分隙だらけだからどうしたものかと困っているんだろう。
当然、構えはフリだけで実際に蟷螂拳が使える訳じゃない。
私の場合拳法は我流だからどうしようも無いネ。
崩拳も漫画見てやり方覚えたヨ。
さて、どう攻めよう?
唯一倒し切る武器は崩拳。
それ以外の拳法はどう考えても相手のが上手だ。
それでも闘えるのはひとえにミミック軍団を狩り尽くす勢いで狩ったレベリングの御蔭だろう。
向こうも麗佳のスキルにより全能力が増加しているのだが、その増加量が丁度自分たちの強化値と同等位になっているのだ。
ゆえに、単純に実力は同等。技量は単純にS級に昇りつめたパオの方に軍配が上がる。
ならば負けるのか? といえばそうでもない。
シミュレーションを行うことでパオの動きは覚えて来た。
そして対策も練っている。
ならば負ける要素はあまりない。
何しろウサギを殺すために本気を出したパオ自身と闘って来たのだ。
あえてトドメを刺さずに組み手のように何時までも闘った時もある。
そこで覚えた体捌き、彼女ならどう動くかという思考は決して本人を持ってしても変えきることは不可能に近い。
つまり、ちょっとだけ速く強くなったハードモードシミュレーターみたいなモノだと思えば充分闘える。
それだけのスペックは私自身持っているヨ。
「せァッ!」
飛び込みと共に拳を打ち込む。
左腕でいなされ回るように身体を回転させたパオの回し蹴りが襲いかかって来る。
上体を逸らしてパオの足を自分の蹴りで足を狙い撃ち加速させるように斜め上に跳ね上げる。
するとパオが軸足で飛び、さらに回転しながら二連撃の回転飛び蹴り。
すぐに蹴りに回していた足を軸足に変えて逆の足で蹴り上げる。
まずっ!?
さらなる回転を得たパオは身体を捻り伸身宙返りで身体を捻りながら上半身と下半身を入れ替え私を掴み取ろうとして来る。
さらに身体を倒して手で支えながらブレイクダンスでかわし切る。
くぅぅ、息付く暇もないか。
下手に喰らうとそこから連撃に繋げられそうだしなぁ。
でも、ワクワクして来る。
掌底を打ち込み、いなされ、反撃の掌底をいなし、さらに反撃を加える。
打ちて打たれて打たれて打ちて。
どれ程の拳の打ちあいがあっただろうか?
双方、同時に一歩飛び退き、すぐさま踏み込みからの崩拳。
拳同士がぶつかり合い、震脚の威力で地面が陥没する。
楽しい。やっぱりこの人は凄いな。
まだ見たことない拳法を使ってくる。
まだ底の見えない動きで翻弄してくる。
でも、負けない。
ダメージも喰らわない。
私だって迫って行ける。
それが……
楽しい。楽しいっ。
何時までもこうして打ち合い闘っていたい。
でも、今は戦争中だ。
彼女も気付いているだろう。
もっと違う出会い方としていれば、きっと二人で試合し合って互いを高められる存在になってただろう。
だから、少し悔しい。
ここで撃破しなくてはならないことに。
勝たせて貰うよ。パオ!
「ッ!?」
パオの拳をいなした次の瞬間、軸足で飛び込み一気に距離を詰める。
パオが驚きの声をだそうとするが、それより速く。私の崩拳が身体の中心を捉える。
突き出された拳が骨に突き刺さり粉砕する。
その感覚が……ない?
私の拳が直撃した瞬間、ふわりとした謎の感覚と共にパオが一気に吹き飛ぶ。
今のは、軽気功!?
自身の身体を羽より軽くし、敵の攻撃をふわりと躱すと言われる回避の技術。
こんな土壇場で、必殺の一撃だったのに、避けられた!?
「あ。危なかった。やるじゃない戒涙亞。私もここまでされたら秘中の秘でやらせて貰うネ」
「さっきの呼吸法が秘中の秘じゃなかったアルか?」
「ここからは、さらに速度あげてくヨ! 死んでも、怨むなヨ?」
「つべこべ言わずに掛かって来いネ!」
「……岩砕拳・空裂走!」
次の瞬間、地面が割り砕け、弾丸の如き速度で突っ込んでくるパオ。
避けられたのは奇跡に近い。
まさか瞬発的な加速法があるとは思わなかった。
おそらく気功の一種。
踏み出す瞬間にほんの数秒感じた危機感と、ある偶然をもってしてようやく避け切れた。
まさに空を裂くように突撃したパオが、私のすぐ隣を打ち抜き、遠く離れた場所に移動していた。
「速い!?」
「今のは挨拶よ。次は、外さないッ」
マズい、ここに来てこの加速は想定外。
でも、楽しい。これを攻略する実力があるかどうか、私自身を試すことが楽しくなってきた。
だから、私もスキルを解放しよう。
今まで己の体術でひたすらに闘っていたけれど、これ以上は全ての技術を使わないと勝てないだろうから。
「スキル使用……プロビデンスビュー、ファストムーブ、条件反射、デスカウンター、ハードヒット、さぁ、第2ラウンド開始と行きましょうか。戦塵無双ッ!!」




