麗佳、それはさすがに卑怯でしょ!?
「お、おいおい、アレってもしかして、リアちゃんなのか!?」
「え? リアって……ライゼンさんの孫の!? なんで戦場にいるの!?」
陣幕で遠視スキル持ちの守護者に加護を貰った私達が戦場を遠くから観察していると、ライゼンさん相手に立ちはだかった相手がまさかのリアちゃんだった。
想定外の相手にライゼンさんも驚き動きが止まってしまっている。
音、音は聞こえないの!?
―― ライゼンさんに念話繋げて周囲とも会話出来るようにすればよい。我に任せよ ――
守護者の一人が気を利かせて向こうの音を拾ってくれた。
「な、なぜ、なぜお前がここにおる……リア……?」
「なぜ? だって、うさしゃんもおじいちゃんも家から勝手に出ていってこんな事してるんだもん、私もう、待ってるだけは嫌なの! だから、お爺ちゃん! 私、うさしゃんと結婚しますッ!!」
「なっ!!? そ、そんな事、許せるわけがないじゃろうがッ!!」
「だから、お爺ちゃんを倒して勝手に結婚するんだよっ。お爺ちゃんはもう、絶対に喜んでくれないって理解してるから、だから、実力で捩じ伏せて、私の子供たちに囲まれて貰うから!! 認めてくれるまでうさうさ天国だよっ」
なんだその悪夢……
いや、でもライゼンさん以外にとってはウサギのもふもふに囲まれるのは天国かな?
って、そんなどうでもいいこと考えてる場合じゃないっ。
ライゼンさんが脅威だからってリアちゃんを直接戦闘参加させるのは卑怯でしょ!?
「り、リアよ、落ち付くんじゃ! お前に槍など似合わん」
「皆と一緒に頑張って強くなったんだよ。槍の使い方も習ったし! だから、勝負!」
一足飛びに飛び込むリアちゃん。まさかの速度で突き出された槍をギリギリで反応したライゼンさんが冷や汗を流す。
ちょ、ちょっと待って。今気付いたけど、私のスキルで強化されてる皆相手に、向こうの誰も彼もが普通に善戦してない!?
リアちゃんも強化されたライゼンさん相手に普通に応戦してるし、ライゼンさんが本気に慣れないから終始圧され気味だけど。
「り、リア、話し合おう、儂らは会話が足らんかったようじゃ。落ち付いて、の?」
「うん、落ち付いて話そうお爺ちゃん。私が捕獲して、ラビットネストで落ち付いて、ね!」
速い、なんてもんじゃない。スキルまで使って強化状態のライゼンさんと一騎打ち出来ている。
なんで? どうしてあんな実力持ってるの!?
「これは、さすがに想定外だ」
「あ、ヘンドリック君、どういうこと?」
「向こうのメンバー、数は少ないけど一人一人のスペックが上がってる」
「マズいのではないか? あの動き、強化されていない我でも苦戦する実力だぞ?」
元魔王の転生体が近くに寄って来て告げる。
戦慄した顔をしているのは、おそらく一人一人が自分に匹敵する実力になっているという事実に純粋に驚いているからだろう。
「つまり、魔王が数十体同時に固まって襲って来てると思っていい訳だ」
「なんだその悪夢?」
「とはいえ、今の我や坂上はお前のスキルで強化されている。案ずるな。あの程度ならこちらの負けは無い」
そうかもしれないけど、ここでライゼンさんが落とされるのは痛い。
しかも、私にとっては夫と呼べる存在だ。ライゼンさんが目の前で倒れてしまったら多分戦況を維持できない。
「まぁ、その辺りは大丈夫だよ。卑怯だとは思ったけど想定してた人がいるからさ」
「え?」
リアの振り抜いた槍がライゼンさんの槍を叩き折る。
横一閃の一撃を受け切ったと思っていたライゼンさんが驚きに目を見開く。
「お爺ちゃん! 覚悟っ」
「……っ、強く、なったのぅ、リア」
ふいに、ライゼンさんの顔に笑みが浮かぶ、全てを悟り死に行くような、満足げな笑み。
リアちゃんの一撃がライゼンさんを……
「甘ぇ!!」
振り下ろされた槍の柄、ライゼンさんの意識を狩り取ろうとしたソレを、横合いから割り込んだ剣が受け止める。
「ファイアーボール!」
「っ!?」
同時に、リアに向けて放たれる火炎弾。
そこまで威力は無いが、私の能力で底上げされているため、リアちゃんは保険で避けたようだ。
「あ……な、なんで?」
「間に合った。この馬鹿リアッ!」
「よし、よぉしっ! 今度は俺も闘える!」
「おじちゃん、大丈夫? 新しい槍持って来たから。少し下がって! リアは、私が相手をするから」
現れたのは二人の男女。
リアはその二人を見て思わず動揺する。
それはそうだ。今まで一緒に育って来た尊敬するべき姉、マールと、共に冒険者を志していた幼馴染のレット。
姉と姉の幼馴染が、リアの前に立ちはだかったのである。
「ま、マール!?」
「なんとなく、リアが家から居なくなってからこうなるんじゃないかって思ってたの! リア、貴方こそ観念して家に帰ってきなさい!」
よかった。これならライゼンさんが一方的に負けることはなさそうだ。




