シュリック、戦争開始悪夢の初陣
「おう、シュリック、お前もこっち来たのか」
私がそこに辿りつくと、既に来ていたガロワさんが片手をあげる。
見知った顔を見付けた私はついつい駆け寄ってしまう。
やはり、生死を賭けた戦争に従軍する以上、柄にもない緊張をしているらしい。
私はB級冒険者だ。しかしながら、あのウサギたちと行動を共にしたことでA級冒険者に上がることが出来た。
それでも実力は追い付いてないような気がしなくもないが。
とにかく、ウサギたちは私にとって味方のようなものだった。なのに今、私は敵対する側に立っていた。
「しかし、良いのかあんちゃん。あいつらにゃそれなりに愛着もあんだろ?」
「ギルドが敵対宣言したからね。こればっかりは敵対も仕方ないだろう」
ちなみに、今回の目的はウサギの殺害、そしてラビットネストの破壊である。
まさかあんな巨大な城が空を飛んでくるとは思わなかった。
可能なら無傷での奪取とか言われてるんだが、さすがに無理があるだろう。
「冒険者だけじゃねーな。ありゃ魔物じゃねーか」
ガロワが思わず顔を顰める。
魔物も合同でウサギへの敵意から参加したのだろう。
まぁ、味方であるうちは襲われる訳も無いし。
それにしても、守護者と思しき存在がちらほら見えるな。
大丈夫なのかこれ?
まさに烏合の衆。数だけ集めましたって感じだぞ?
「宣戦布告と共にラビットネストに戦争を仕掛けるんだと、俺らは徒歩だから飛行系魔物などが城の動力を落として落下させた後が本番になる。つっても、血気盛んな馬鹿野郎共が普通に突撃しちまうんだろうがな」
届かないのにそんなバカな奴らいるかね?
そもそもヘンドリックはまだ開始する気ないんだろ?
だったらまだ準備を……
「突撃じゃーっ!!」
……おいおい。
「あーあー。行っちまったなぁ」
「止めなくていいのですか?」
「良いも悪いも、もう手遅れだ。見な」
言われて、遠く上空に浮かぶラビットネストを見上げれば、そこから何かが降り注いだ所だった。
丁度真下まで走り寄り、魔法と弓矢を構えた冒険者達が、その霧のようなモノをその身に受ける。
途端、悲鳴が轟いた。
「ぎゃああああああああああああああああああああああああ!?」
「た、たすけてくれぇ―――――っ」
「痛い痛い痛いッ、何だよこれっ!? 身体が燃え……」
これは……一体?
「おそらくだが、そこいらの森に自生していた毒性植物の粉末垂れ流してんだろう。あの霧、吸い込む以前に肌に触れるのもアウトだな」
「カエンタケでも混ぜてんですか……しかし、こりゃ確かに……げぇ!?」
私とガロワさんは魔法使いの一人が杖を掲げた瞬間、ヤバいと察して慌てて身を隠す。
次の瞬間、空気中に舞い散っていた粉が火炎魔法で引火し、粉塵爆発が巻き起こった。
うわぁ、爆心地が凄いことに……
「毒粉を振り撒いて相手が火器を使用すれば爆殺か。えげつねぇ戦法しやがって」
「あのウサギ、なりふり構わなくなったなぁ。追い詰め過ぎたんじゃないですかね?」
「ああ、そう……かも、な?」
そして次の瞬間、カッと光るラビットネスト。
そして私達のすぐ近くを光の壁が駆け抜ける。
次の瞬間、大地が切り裂かれ、空が引き裂かれ、射線上のことごとくが二つに切り分けられた。
ラビットネストより放たれた光線が地を割り、山を割り、海を切り裂く。
光が駆け抜けた後には、海が焼ける音だけが残った。
「お、おいおい、なんだ今の?」
「これは、さすがに攻略不可じゃないですかね?」
戦慄していた私達の視界に、空から迫る人型の生物が映った。
ラビットネスト向けて進むそれは、どこかピスカによく似ていた。
ある程度まで近づくと、何処からともなく砲塔のようなモノを取り出す。
すると、行動を起こすより速く、ラビットネストよりピスカと思しき存在が飛び出し、メイド同士の戦いが始まっている。
なんだか環境破壊規模の闘いが始まったが、こちらには余波も来ていないのでそこまで気にするものでもなさそうだし、放置してラビットネスト攻略に注力した方が良いだろう。
「しかし、アレをどう攻略するか……」
「戦闘開始の宣言、どちらも無くて始まりじゃあ締まらないですね」
「それでももう始まっちまってるみたいだしなぁ、そろそろ準備といくか」
この状態なのにやる気満々か。
はぁ、仕方ない。覚悟を決めよう。
「しかし、実際どう攻めます? 遠ければ光の一閃。近くは毒の粉だらけ」
「そうだなぁ。とりあえず、放置しときゃ勝手に降りて来るだろうが、ちぃっとA級冒険者ってもんを見せてやろうじゃねーか」
「はは、お供しましょう」
さて、敵に回ってしまいましたが、ウサギ君たちの元に辿りつけるかな……と。
自身に使えるスキルを確認しながら、撃墜目標のラビットネストを見据える私であった。




