ウサギさん、世界蛇VS世界の救世主
宇宙に翼を広げ、アーボが飛翔する。
透明な翼は透明な羽を撒き散らしながら彼の身体を一瞬でヘリザレクシアへと届けた。
透明な槍で交錯際に斬り付ける。
おお! ダメージ通った! いいぞぉ! さっすがアーボ! そこにシビれる憧れるぅー。
いやーとか照れてるんじゃねーよ! そんな余裕無いだろ!!
あ、ほらっ、風の一撃避け損ねてんじゃねーか!?
撃ち落とされたアーボは慌ててきりもみ回転しながら急上昇。宇宙に上昇という言葉が通用するかどうかは知らんが俺から見れば墜落して行ったアーボが急上昇してヘリザレクシアの真下から槍で真っ二つにせんと迫るように見えたのだ。
当然、黙って喰らうヘリザレクシアではなく、上半身を軽く後ろに退けることでこれを回避。アーボに向けて口から怪光線を……
やっべ、転移!
あっぶね。闘いに巻き込まれて死ぬとこだった。
そういえばあのブレス攻撃範囲が凶悪で熱波攻撃だけで俺が死ぬ大技だったわ。
宇宙を焼き尽くすとか意味わかんねー。
しかし、アーボはその辺り気にしてないようで、焼かれた宇宙に突っ込みながらも普通に羽ばたきヘリザレクシアに接近、浅い傷を付けて駆け抜けるを繰り返す。
強い。正直な話、多分俺より強くなってる。
クッソ、なんと言うか、アーボが俺より強くなったことへの妬みよりもソレを認めてしまってる俺自身にイラッと来る。
俺、結構進化しまくってた筈なんだけどなぁ。なんで一足飛びに飛び越えてるんだいアーボ君。しかもちゃっかり宇宙行動が可能になってるし。
飛行まで出来る? 武器はほぼ透明でありながら世界蛇相手に普通に闘える攻撃力。
専用武器はワールドエンド、専用盾はワールドメサイア。コピー不可? 俺のマジックで増やせない?
なんだそれ!? 畜生、畜生ッ! 神ェ、怨むぞ―ッ。
―― あー、それなんじゃがな、儂アボガード関連全くプログラムしとらんのよ ――
は?
―― どうも駄女神の奴がお前さんの種族弄る際にアボガードに目を付けたみたいじゃな。進化条件は限りなく面倒じゃが、条件さえクリアすれば全アボガードが最終進化先としてアボガメシアに成れるようじゃぞ ――
アホか駄女神はッ!? 普通に世界蛇と互角に闘える存在生み出してんじゃねーよ!?
―― あー、それとじゃな。駄女神が付けたスキルなんじゃが、救世之一撃だけは絶対に使わんように ――
ん? そういやアーボが覚えてたな。
―― 別の世界で駄女神が作ったスキルなんじゃが、あの馬鹿何を考えとるんかこっちの世界にも組み込んだようじゃの。あれ、一撃放ったら対象の敵諸共消滅するからの。しかも魂も消し飛ぶから転生不能、存在も消し飛ぶからアーボがこの世界にいた事実も消えるぞい ――
とんだクソスキルじゃねーか! その駄女神に使ってやろうかオイ!?
―― やめとけ。アレ、使われた方は死んで転生するだけじゃが、使った方は文字通り伝説になるからの ――
うわーお。使う奴いんのかよソレ。アーボ。お前も、絶対に使うなよ。使ったら天音が悲しむから俺がブチコロスからな。
―― ブチコロスもなにも既に消失してる気がするのでが、それは? ――
つべこべ言わずに使わなきゃいいんだよっ!
了解、と念話が来たので多分大丈夫だろ。
代わりに、アーボがヘリザレクシアの眉間ばかりを狙い始めた。
これは、多分だが乾坤一擲スキルを使う気だな。
一撃一撃は大したものではないけど同じ場所に積み重なるほど、ダメージも加速度的に上がるらしい。
今のアーボも攻撃がさらに増えるとか、軽く悪夢だな。
すげぇ、世界蛇のHP天文学的数字なのに、かなり急激に減り始めてる。
慌てて眉間を隠そうとしてるけど手のないヘリザレクシアではそれは不可能に近い。
しかも、眉間に刺さるごとに攻撃力は乗算されている。8のダメージを与えたら次は16、ではなく64。次は4096といった具合に増えるのだ。正直俺は10回程喰らっただけで死ぬ確信がある。でもアーボの一撃、攻撃力自体アホみたいな威力だからな。俺は1回か2回で死ぬかもしれん。
そんな連撃をヘリザレクシアは10回、20回と喰らって行く。
ダメージがどんどん積み重なり、早くも半分のHPが消し飛んだ。
さすがに世界蛇もこれ以上のダメージはマズいと思ったらしい。
雄叫びと共に宇宙に風が渦巻いた。
アーボは……すげぇ、暴風の宇宙風を右に左に飛翔して風流に乗ってやがる。
行けアーボ! 神殺之槍だーっ!!
気合一突、アーボがワールドエンドを突き出す。
うおおおおおっ! 行ったァ!!
眉間に突き立つワールドエンド。
ヘリザレクシアの悲鳴が宇宙に轟く。
うっわ、マジで英雄じゃねーか。いや、むしろ救世主?
さすがアボガメシア。さすアボ!
しかし、これでもヘリザレクシアはまだ死なない。
まぁ死なれても困るんだが。
ダメージ的には同じ場所に後一撃だな。
どうするヘリザレクシアー。もう後ないぞ? アーボの実力は充分示せたんじゃないか?
―― くぅ……悔しいですが……確かにアーボの実力は認めざるを得ないでしょう。あの、抜いてください、槍 ――
戦闘終了、らしいので槍を引き抜き勝鬨をあげるアーボ。うむうむ。もう、お前に教えることは無い。
―― でも、小さきモノよ、そなたの実力はまだ途中だぞ ――
あれ? アーボと一緒に合格じゃないの?
やめろアーボ、がんばってーとか手を振ってんじゃねぇよ!? もう既に俺限界だって!




