ボルバーノス、海の中は危険がいっぱい
のおぉぉぉぉあぁぁぁぁぁぁっ!!?
海に入った瞬間、襲いかかってきた鮫の喰い付きをぎりぎりで躱す。
あっぶな。今の一瞬でも遅れてたら喰われてたよ!? ねぇピスカさん、今の喰われてたよ!?
「そうでありますね」
ありますね、じゃないよねっ!? 普通助けるよね!? 迎撃するよね!?
なんで普通に放置しちゃうの!? 僕を殺す気か!?
「ボルバーノスさんなら多少命の危険があっても大丈夫だから助けなくていいよ、とご主人様の御命令であります」
うぅぅぅさぁぁぁぎぃぃぃぃっ!!
あの野郎なんてこと言ってくれて……って待て待て。ピスカさんや、さすがにあのウサギ君でもそんなひどい事言ってないよね?
「……正確には、ボルバーノスさんなら多少の危険は大丈夫だろー。もしもの時はフォローよろしく、でありますね」
ぜんぜん違うよね!?
それ、今のは助ける場面だよピスカさん!
臨機応変! ここはボルバーノスさんを手助けすべしだよ!?
「臨機応変に見守ったでありますよ?」
ちっがーう!?
見守ってどーすんの!?
そこは普通に助けてよ!? ほら、また来たまた来た!
「ミサイルがもったいないであります。えい」
やった! けどそこ勿体ぶらないで!?
なんか海の中すごい勢いで魔物が増えてるんだけど!? 鮫の群れが僕らの周り回り始めたんだけど?
変な魚が無数にやって来たんだけど!?
「見知らぬ獲物が水の中でジタバタもがいているから物珍しさで集まって来たでありますね」
喰う気だ。こいつ等喰う気だよ!?
というか気泡が心もとなくなってきたからちょっと浮上したいんですが?
「仕方ないでありますね。もうちょっと水中潜れないでありますか?」
無理でーすっ。
そもそも蜘蛛は海に入るような生体構造にはなってないんですーっ。
「それはおかしいでありますよ、ほら」
ほらって……えぇぇ?
海の中を普通に泳ぐ蜘蛛っぽい生物。
アクアスパイダー……
ちょっとあんたぁ!?
こっちが無理だって言った傍から可能性見せつけてんじゃないわよっ!?
馬鹿ですかーっ!?
おっと、思わず前世の言葉遣いが出ちまったぜぃ。
あっぶねぇあぶねぇ。想定外過ぎる生物に焦っちまった。
僕は男、僕は男、雄だよ雄。オッス!
「あ、群れがいるであります」
ちょおおい!?
アクアスパイダーめっちゃおるぅ!?
しかもスイムラビット捕食しとる!?
「生態系ではご主人様より上位でありますよ」
素直に喜べないのは捕食したアクアスパイダーが鮫にぱくんちょされたからかな。
どっちみち被食者には違いないようだ。
海の中って弱肉強食が酷過ぎないか?
「うわー、見てくださいであります」
ありゃあカニか? 浮遊してるとこ初めて見た。
というか、カニって海の中漂うんだっけ?
ふつう海底歩いてなかったか?
「おお、全部の足をげそっぽく動かして移動してるでありますよ?」
あれカニじゃねー!? カニモドキだよ。擬態してるだけだ。
ミミッククラブじゃないかーっ!
「え? あれもミミックでありますか。ミミックは多種多様でありますね」
ホントになー。
それよりピスカさんや。そろそろ僕らを囲ってる魚さんたちとの距離が無視できないモノになってるんですけどー。
「問題無いであります。はい、迎撃ミサイル発射ーであります」
うわーお、綺麗な魚雷花火がたぁーまやー。ってかぁ!? なんだそりゃぁ!? ちょっと、待って、理解が追い付かないよ? なんで数千発のミサイルが同時発射されてるの?
しかも海の中普通に移動してるんですけど!?
「あ。これ換装した水中装備であります。ホーミング魚雷でありますよ?」
ミサイルじゃねーじゃん!?
「ミサイルであります。それよりほら、守護者様のご登場でありますよ?」
え? あ、ほんとだ。でっか。なんだありゃ。
海の守護者はでっかくなるのが常道なのかね?
巨大なマンボウっぽいのがぬぅっと海底から浮上して来た。
「ほらほら、挨拶であります」
ああ、そうだった。守護者さんちーっす。
―― ちーぃぃぃっすぅぅぅぅ―――――― ――
「喋り方が長いであります!?」
―― ちーじょーおーのー…… ――
地上の生物が何しに来た? と聞いて来たので海の守護者に会いに来た旨を伝えておく。
それにしても、間延びした口調だし、思考回路もゆったりしてるなこの守護者。
本当に守護者?
この近郊の海を守護できてる?
とりあえず最初に出会った守護者はなんとか味方に引き込むことは出来た。
しかし、多分だけどこの守護者、味方になったこと忘れて日向ぼっことかしてそう。
うん、期待するだけ無駄っぽい。




