桃瀬、ミミック狩り1
リルハさんとエフィカさんに案内され、私達は再びミミック狩りへと向っていた。
今回は人数が多い。
何故かローエンさんたちまで参加してるし、アウレリスの森から大量のアボガード系魔物がやってきた。
皆してミミック狩りらしい。
御蔭でリルハさんが張り切っていて、ミミックパレスもっかい倒すとか言い始めたのだ。
まぁミミック系の反応が分かるだけでどの規模のミミックかは分からないらしいから再びミミックパレスと遭遇なんてことはまず無いと思うけど。
「はーい、そろそろ着きますよ」
森をかき分けやってきた私達が見付けたのは、森の中に悠然と佇む巨大なキャッスル。
パレスよりは大きい訳じゃない。
むしろ縦に長いだけだ。
宮殿とは違い、敷地がないので横にはそこまで広くない。
でも、城だ。
王様が住んでそうな豪奢な城が森の中に存在していた。
そう、ミミックキャッスルである。
「うわぁ、何つー違和感」
「あはは。莱人、入っちゃだめよ?」
「誰が入るか。ほら、誰か即死草さっさと投げ込めよ」
「あ、駄目駄目。まずは全員一回攻撃して。レイド戦に参加状態になってないと経験値にならないよ」
西瓜の言葉に慌てて動き出すアボカド軍団。
私達も一人の漏れなく攻撃を行い、全員が参加したことを確認してからジョゼさんが即死草を城門の奥へと投げ入れる。
一瞬の静寂。
そして一分、アイテム入手確認ボックスが閉じたらしく、ミミックキャッスルが消えて行く。
多分だけどミミックキャッスルの頭上にボックスが出現してたんだろう。
即死草を投げて約1分。
まさに即死の域でミミックキャッスルが散ってしまった。
これって……投げた即死草を食べてすぐ死んだってこと、だよね?
「ミミックパレスの時に、これ……知ってれば……」
「言わないで楓夏さん。なんか、辛くなる」
皆、ハイライトが消えた瞳で何も無くなった広場を見つめていた。
思いはきっと一つだろう。
すなわち、ミミックパレス戦の苦労って一体何だったんだろう……
はは、なんか、私も辛い気持が押し寄せて来た気がする。
「と、とにかく、この調子でどんどんミミック狩って行きましょ」
「そ、そうだぞ、むしろウサギが攻略法を教えてくれたんだ。今までのような辛い闘いをしなくていいと思えばいいんだよっ」
エフィカさんが必死に皆の気持ちを底上げしようとしてるけど、それは私達にとってはトラウマ抉りみたいなもんだからね。
それにしても、アボガードって、これだけ揃うと声が無いのにやかましいって思えるんだね。
えいえいおーっと槍突きあげて勝どきあげてるアボガードたち。
いくつか種類が別れているけど皆楽しげに槍突きあげている。
それからも、ミミックハウスやミミックコテージを撃破して行く私達。
戦闘らしい戦闘はなく、ただ建物に一撃入れた後草を一枚放り込むだけの簡単なお仕事だ。
正直これはこれで精神的に死んで行くものがある。
現に戦闘民族である真壁君やロア、真廣さんの目がかなり淀んでる気がする。
これはちょっと本格的戦闘挟んだ方が良さそうだ。
私はユーリンデさんと話し合って一度休憩も兼ねて神様にシミュレーション戦闘を行わせてもらうよう掛けあう。
全員で磁石寺君が今まで闘ったメンバーとの激戦だ。
なんか皆この闘いがレベルアップとかに最適だとかで結構人気なんだよね。
なんていえばいいのか、そう、ゲームの攻略方法を探してる感覚に近い?
試行錯誤しながら協力プレイでレイドボスの連戦を撃破する感覚に近い。
敵に麗佳さんとかS級冒険者の面々とか普通に居るんだけどね。
「よーし、今日こそは最後まで生き残る!」
「最後までピスカさんがクリアしちゃったからな。何が出てくるかは分かってるけど……さすがに魔王はきつくないか? しかもまだ先があるとか」
「でもさ、皆急激なレベルアップしたでしょ? 今なら攻略可能なのでは?」
「そうだ! その可能性はあるではないか! 我が封印された力が、今、解放されるッ!!」
「いやー、なんか負け確フラグな気がするアル」
「確かに、でも行けそうな気がするのも確かよね。一度試してみましょうよ。まずは皆で」
「なんなら一人一人ソロアタックしてみるのもいいかもな。同時進行で、いかがだろうか?」
―― なんか面白そうじゃからプログラムしとくわ。その間全員で挑んどくが良い ――
神様、ホントに普通に語りかけて来るよね。
親戚のお爺ちゃんか何かかな? ってくらいフレンドリーだし。
神様感は殆どない。まぁやってることは超常現象だから神様並の存在だってのは確かなんだろうけど。
さって、私もちょっと、息抜きにレッドキャップ2000体から始めようかなっと。
でも、一人でソロアタックかぁ。啓太君が倒した面子を倒し切れたら。啓太君ほめてくれるかな?




