うさぎさん、守護者たちの生き字引4
「楽しいぞウサギぃっ!」
意外と俺も楽しんであるよアルデバラン。だが、そろそろ終わらせて貰う。
我が必殺のぉ……
「ぐきゃぁ♪」
ぎゃあぁ、でぇたああぁっ!?
俺とアルデバランが対峙していた中間地点。茂みを揺らして飛び込んできたのは、二メートル大のエリマキトカゲ。
無駄に楽しげに飛び込んで来て着地したエリマキトカゲは、ぎょろりと視線を俺に向けると急加速でぺったぺった走りだす。
あのトカゲ独特の二足歩行走り気持ち悪い。
しかも俺に向かって近づいてくるのやめて!?
なんで俺に襲って来るんだよ!?
「おお、あれはトカゲか」
「うむ。アカイロスト―キングエリちゃんじゃな」
なんだその可愛らしい名前はっ!?
そこの生き字引。名前知ってんなら助け方も分かってんだろ。どうすりゃいいっ!?
「儂、お主助けるの嫌じゃ」
がっでむっ!
「ぐぎゃぁ!」
ちっくしょぉ、なんで俺ばっか追うんだよ。しかも湖回り込んだら湖の上走ってショートカットして来るし。
徐々に距離が狭まっている、だと!? ばかな、俺の速度より速い!?
ウサギが、ウサギがトカゲに負けるだと!? そんなことあって、たまるかぁ!!
「お婆ちゃん、うさしゃん助けてあげて?」
リアが少し泣きそうな顔でお願いしてくれていた。
どうやら俺がトカゲに追われてるのを見て可哀想だと思ったらしい。
畜生、俺は別にトカゲに襲われてるわけじゃねーんですよ!? でもありがとうっ。
「仕方ないのぅ、ウサギやリアに感謝せぇよ」
ふぅ、と心底面倒臭そうに溜息吐いて、生き字引の婆さんが告げる。
「気付いとらんようじゃが、そのエリマキトカゲはの、メスじゃ」
よっしゃ付いて来いストーカー! 俺の力をみせてくれるぁ!!
……
…………
……………………
「と、いうわけで、ご主人様とエリマキトカゲは仲良くなったであります」
「うさしゃんのえっちっ! へんたいっ、さすかっち!」
「リアよ、それはサスカッチに失礼じゃ」
オイ。
いやー、相手が雌だって分かってたら逃げる必要なかったんだよな。
なー、エリちゃん。
「ぐきゃぁ♪」
結局、こいつは俺に一目惚れしておっかけて来ただけだったらしい。
卵生? 知らねぇよ。女なら俺は襲える。人外? バッチコイ。
しかし、このトカゲ、猫背なのがなんとも言えないな。そのエリマキどうにかなんない? 無理? あっそ。
それにしてもアルデバランとの闘いがうやむやになっちまったな。
どうするアルデバラン?
もう一戦するなら日を改めるけど?
「構わん構わん。満足だ。バァバ共々味方に成っておいてやる」
「え? 儂嫌なんじゃが?」
「お婆ちゃん、一緒は嫌?」
「リアとならええんじゃー」
くっそ、この生き字引、なんでこんなに俺に辛辣なの!?
「ふん、お前さんがリアの夫でなければとっくに見限っておるわ。このウサギの中のクズめが」
ぐほぁっ!? ウサギの中でクズ!? オイラのハートにクリティカルヒットだよ!? うぅ、しかも反論できねぇ……自分で自分のクズさ加減を認めちまってる……
「さすが悪人、であります」
「折角だバァバ、なんかこいつのために成る事教えてやってくれや」
「えー。ウサギのかえ? 仕方ないのぅ、我が守護者様の願いとあらば、このバァバが道を開いてやろうかの」
と、俺の前にえっちらおっちらやって来ると、杖を取り出し地面に突き刺す。
「ババァがジジィとバーリトゥード。ババァがジジィをチョークスリーパ。ババァがジジィとレッツダンシン、ジージーバーバードゥドルドゥーひゃっはーっ!」
バァバが狂った!? っていうかこいつの名前バァバでいいのか?
「ほありゃあ!!」
かぁっと目を見開いたバァバ。あまりの奇声にびっくぅ、と俺とリアとアルデバランが驚く。
いや、なんでミノタウロスまで驚いてんだよ!?
「ふむぅ、見えた、見えたぞ。来てます来てます。こんなんでましたけど? ごほん。汝が向うべき道は……」
「道は?」
「上じゃな」
上……宇宙か。
いやぁ、さすがに上はなぁ。
でも、生き字引がなんかスキルっぽいの使った訳だし、行かなきゃ、駄目かな。
「あと海じゃな」
あー。よぉくわかった。つまり俺がヘンドリックに対抗するためには海の守護者と宇宙の守護者を味方に付けろってことらしい。
「あとミミックをひたすら味方と狩るのじゃ」
「全部これからやろうとしてたことであります!?」
「あはは。最善だね」
折角の生き字引が無駄だった気がする。
いや、むしろ自分たちが行おうとしてた事が合ってると太鼓判貰ったってことか。
仕方ない、空に上がるか。
「それでじゃな。えーっと、蜘蛛はピスカと海を、ミミック狩りは土塊とともに、ウサギはアボカドのアーボ? と宇宙へ、が最好手じゃ」
アーボと? まぁ言われたとおりにやってみるか。駄目だったら駄目で何とかなるだろ。




