うさぎさん、ウサギたちの儚き一生
帰りの海底洞窟を移動している最中、結構な頻度でウサギを見かけた。
どうもこの近海はウサギの宝庫らしく、海ウサギが群れで泳いでいるのがよく見られる。
洞窟を脱出すれば、なんか凄い光景が目の前にあった。
思わずピスカ共々呆然と見守ってしまう。
見上げた先に居た、兎達の群れ、その地獄を……
「うわぁ……」
マグロと思しき魔物達が数十匹、数千数万のウサギの群れへと突撃。
どうやらウサギを狩ってるらしい。
さらに遅れて鮫が参戦。物凄い数の鮫たちが次々にウサギを駆逐して行く。
食事にありつけた鮫から去って行き、他の魚たちも次々に参戦。
兎達の群れが少しずつ小さくなっていく。
そして、トドメに現れたクジラっぽい生物が残った兎達を丸飲みし、数万羽いたはずの海ウサギが完全に消失した。
……おかしいな、こういう光景テレビで見たぞ? あの時はイワシの群れだったけども。
そっか、海ウサギってイワシと同じくらいの下位存在だったんだぁ。はは。
俺の傍に寄ってきた鮫に八つ当りのようにロンギヌスを投擲。
水中でもテクニシャンスキルが仕事して一撃命中。
落下して行く鮫にピスカが近づきロンギヌスを引き抜く。
「回収であります」
悪い、ちょっと熱くなっちまった。
仲間たちが無慈悲に消される姿見るとさすがに堪えるわ。
「それはいいのですが、次の獲物にご主人様が選ばれているでありますよ?」
ふと周囲を見回せば、鮫の群れが俺達を中心にぐるぐる回っていらっしゃる。
へへ、良い度胸だクソ鮫ども。こうなったら生態系変わるまで駆逐してくれるッ!
いざ、死にさら……あれぇ!?
鮫たちが徐々に円を狭めて来る、かと思いきや、突然慌てたように逃げて行った。
なんだ? まるで強敵を見付けて慌てて立ち去ったような……
後ろか?
深淵の中、不意に見えた流れる体毛。
二つの耳が靡いている。
海中を泳ぐ一匹のウサギ。その姿は、あまりに異様。
鮫たちが逃げた理由は理解した。
奴が来たのだ。
兎達の守護者。そう、ビッグシーラビット。
巨大化した海ウサギである。
クジラ以上の巨体で、ゆうゆうと大海を泳ぐ。
慌てて逃げる鮫達からして、このウサギは捕食対象に成りえないようだ。
むしろ、脅威?
そっかー、巨大海ウサギなら襲われないと。俺もビッグシーラビットになるかなぁ。
そう、思った時だった。
ピスカが物凄い軌道で急加速。
一気に距離を取る。
なんだ? と思った俺の視界の先、ビッグシーラビットがこちらに赤い眼を向けた次の瞬間、そのビッグシーラビットが突如消え去った。
というか、巨大なアギトの中に消えて行った。
タイラントテラシャーク。
ソイツの名はそんな名前だった。
あまりにも巨大な海の捕食者により、最強かと思われたビッグシーラビットは捕食されて消え去った。
うさぎェ……
なんでそんなに巨大化してまで被食者側なんだよッ!?
ほんと報われねぇなウサギ……
―― ほぅ、ただのシーラビットかと思えば変わったウサギも居たモノだ ――
うぉう!? この念話、まさか……
そこなタイラントテラシャークさんは意思持ちでいらっしゃる?
―― ほぅ、念話まで可能か。なかなかに面白い ――
なんかよくわかんないけど興味を覚えられたようなのでピスカ共々タイラントテラシャークの背中にひっ捕まらせて貰って会話する。
ウサギ仲間喰った奴だけど、この世界は弱肉強食。そして強い者が俺に対して捕食対象ではなく興味を示したというなら。このウサギさん、それはもう下手下手で揉み手しながら遜る所存でございますっ! 貴方様に付いて行きますゾ~。
―― なるほど、地上は面白いな ――
地上での話を聞かせてみると、思いの外楽しんでくれたようだ。
興味を覚えてくれたので、一応戦争に参加お願いできないか聞いてみると、敵を海に落とせば喰らってもいい。と言ってくれた。
念話で場所伝えてそこに落とすと。
なかなか面倒な方法だけど手伝ってくれるというなら是非にお願いしたいところだ。
海の世界も陸同様に守護者がいるらしく、この近海はこのタイラントテラシャークが治めているらしい。
海の守護者も結構危険な存在が多いらしいけど、向こうは海の魔物まで味方に引き入れようとしたりするんだろうか?
ふむ。味方に引き入れてみるかな?
まぁ今はそれよりも先にやることがあるしな。一度ラビットネストに戻るとするか。
俺たちはタイラントテラシャークに暇を告げて浮上して行く。
実力的にはピスカの方が上だったから会話して来たのかな?
もしくは俺がドルアグスさんの加護受けてるからかもしれん。
海上へと出た俺たちは一旦ラビットネストへと方向転換。魔族領を素通りして我が家へと帰還を果たすのだった。
皆、帰って来てるといいなぁ。
リアの奴も家に来るなり疲れて寝ちゃったから黙って出て来ちゃったし。お土産買ってってやるか。ピスカどっかの街でなんか買って帰ろうぜー。




