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???、運命の選択28

 空を見ていた。

 何か、忘れたような気がする。

 何かは分からないが、とても腹立たしいことだった。


 忘れてはいけない何かだった気もするし。忘れてしまった方が良かった感情の気もする。

 ただ、彼女が言えることがあるのなら、自分にはもう、関係の無い過去だということだ。

 過去は過去。今は今だ。

 自分は過去に囚われる女ではないのである。


 透き通るような白魚の肌。といっても魚ではなく白魚に似た透き肌であるというだけ。

 なんとなく、自分の身体に違和感はある。

 本来自分は女ではなかったんだ。と魂が叫ぶような、不思議な感覚。

 他にも、自分は産まれたばかりなのに狩りの仕方を覚えていたり。

 ウサギを見ると異常に怒りを覚えたり。

 基本困ったことがあれば短絡的に暴力に頼ったり。


 自分じゃない自分が身体の中に住み付いているような、でも身体の所有権は与えられてないような感覚。

 幾度も違和感を覚えつつも、今の生活に役立っているので気にしていない。

 そもそもの話。強くなって生態系上位に君臨出来れば問題ないのだ。


「ア゛ーッ」


 声を出す。否、それは声ではなく鳴き声。

 魔物である自分にとって音は自分の居場所を告げるモノ、あるいは仲間を呼ぶモノである。

 声に反応したのか、バシャバシャと水面みなもが揺れる。


 とある森の泉の話。

 白き人魚のような人型と魚が融合した、より魚類に近い魔物の群れがいた。

 白い身体に赤い瞳。肉食の彼女達をピラニクス・マーメディアと人は呼ぶ。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 暇である。

 とてつもなく暇である。

 何しろ赤ん坊から再出発なのだ。

 

 ホムンクルスのように自壊の危険は無いし、ステータスは魔王を吸収した時点と変わらない。

 ゆえに、歩けるようにさえなればあのウサギ共に復讐ができるのだ。

 だが、無策で突っ込む気は無い。

 あいつらは俺の事を知らず、俺はあいつらの事を知っている。

 ゆえに、こちらから先に見付けられ、奇襲攻撃することが可能なのだ。

 あのウサギだけは絶対殺す。殺して殺して殺しまくってやるぜ磁石寺ィ。


 俺からあらゆるスキルを盗みやがって。絶対に取り戻してやる。

 俺は絶対に諦めねェ。お前はウサギの次、どんな生物に転生すんだろうな?

 すぐに見付けてまた転生させてやるけどな。

 転生するのが地獄と思えるほどに、精神的に殺してやる。


「人間とは、難儀だな」


 不意に、声が聞こえた。

 ばっと振り向けば、小柄な紫肌の幼女が一人、くるくると巻かれた飴が棒に刺さった奴を舐めていた。


「だぁぅ?」


「我を殺して吸収しくさったホムンクルスを殺そうと追って来たのだがな。まさかこんなことになっているとは。ふっ、産まれて初めて愉悦を覚えたぞ」


 お前、まさか……魔王か!?


「ふむ。どうにも身体が馴染まんが、やはり女の身体だと心持自分の実力が抑制されている気がするな」


「だぁぁ」


「くぅっ。ぶはっ。我を謀った奴がこのような。くふっ。人間は生まれてすぐ自分の足で立つことも出来んのだな。ふふ。弱い、弱すぎるぞ博樹とやら。フハハハハ。折角だからお前の赤ん坊プレイを見させて貰おうかなあ。ああ愉悦愉悦」


 や、止めろっ。

 なんか嫌だ。恥ずかしいじゃねぇか。俺は普通に赤ん坊になってるだけだぞ!?

 ほーれほーれ悔しいか? と頬をつんつんしてくんな! やめろっ。


「母の乳を飲むのだろう。それはもう赤子の如く。既に人格形成済みのお前が。我に見られながら。クフ、クフフ」


 こ、こいつ、転生したら随分とゆかいな性格になってんじゃねーか! 


「いや、すまんすまん。魔王の城から出たことがなかったのでな。転生してから楽しくて仕方がない。ウサギには感謝せねばな。まあお礼参りの方が先ではあるが」


 やはりウサギへの恨みはあるのか。一応共闘はできるんだが。ほんと良い性格になりやがったなこのクソ女。


「お、いたいた。やっふー博りん、元気ー?」


 あん?

 魔王襲来だけだと思ったら想定外の来客はもう一人居たらしい。

 家の人が止めるのも聞かずずかずかと上がり込んで来たのは……天竺郁乃?


「いやー、自称幸運の勇者君凄いねー、まさか本当に見付けちゃうなんてー」


「はは、運が良かっただけですよ。あの、それじゃ私はこれで……」


 ここからだと見えなかったが、郁乃の後ろに誰かいたようだ。


「オイコラ逃げんな。調教の勇者みたいに十六分割されたいの?」


「あ、ははは。私か弱い女の子、だから暴力反対、みたいな?」


 なんだなんだ? 俺の周りが女だらけになっちまったぞ?

 魔王も女になってるし、二歳くらいの背格好だが、死んだ時期からいってもまた一ヶ月も経ってないはずだ。

 俺はなんか産まれた瞬間から意識があるというか、おそらく産まれた瞬間に転生が確定したか何かだろう。生後一カ月。ウサギに殺されてからもう一カ月だ。ウサギというか、あのメイドというか。とにかくあいつらはぶっ殺す。


「わ、すっごく運が良いよ君。魔王の転生体まで揃ってる。纏めて勧誘できちゃうよ!」


「ふむ? 勧誘?」


「ウサギ討伐を目標にして皆を集めてるの、魔王さんもぜひぜひ一緒に磁石寺殺そ?」


 気のせいか? こいつ、なんか言動からして危ない女になってないか?

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