ジョゼ、運命の選択25
さて、悪だくみの時間だ。
部屋に戻ってきた私はチョコミントが事前に付けていた隠しカメラに布を被せる。
場所はチョコミントの部屋に行った際に確認済みだったので映ってる場所から推定して直ぐに見付けることが出来た。
ウサギは私に関しては放置するみたいだし、監視が出来なくても問題にはならないだろう。
つまり、策謀の時間である。
ふふ、ようやく自由にできる。
しかもウサギとの奴隷契約による制約もなくなった。
楽しい楽しい策謀時間。
まずは書類に残す適当な考え。
思いつくことをただただ書き尽くす。
これから行うことを適当に、考えつくままに。敵になったり味方になったり、とにかく様々な状況と行動を書いて行く。
しばし書いているとよくわからないモノまで書いていた。
なにを思って書いたのかしら? 自分で自分に嘆かわしいわ。
なんで、ゾンビ化ウイルスばらまいて世界終末にしようとしてるのかしら?
これはもうただの妄想ノートね。
とりあえず、使えそうなのはこれとこれとこれ。
ふふ、どうしてあげようかしら?
まずは、そう、まずは情報収集がしたいわね。ヘンドリック側の情報入らないかしら?
んー。ふふ。そうだわ。いいこと思いついた。
そうなると、ここがこうなって、あーなるから。協力者が必要ね。
もちろん、何も知る必要無く私の手の中で踊ってくれる協力者がね。
誰にしようかしら?
えーっと、そうね。ふふ。じゃああいつと、あいつに情報を貰おうかしら。
そうなると問題となるのがあいつだから……
ああ、これよ。この感覚、安全な場所で思うままに巡らせる策謀の嵐。
私の頭の中で展開される状況の作り方。
そして私が求めている真なる何か。
私の求めているモノとは何か。欲しいモノを思考錯誤、邪魔なモノ、どうでもいいモノ、気になるけど無くても困らないモノ。
いらないモノをそぎ落として行く。
すると隠れていた本音の部分が浮かびだす。
それがどんなに想定外のものだったとしても、それこそが私が求めている……えぇ、そうだったの? 私ってそんなに……いや、まぁ、うん。それはそれでいいわ。
じゃあ勝利条件を付けましょう。
自分の思う通りに行けば大勝利。
そうではなくとも自分が与する側が勝利すればよし、逆に負けたとしても生き延びられたならこれも勝利。
割合的には50対50といったところかしら?
さぁてどうなるか。できればもっと割りの低い賭けの方が盛り上がるのだけど。
あまり下げ過ぎて舐めプし過ぎても私が辛いだけだし、どうせなら決してやれないことは無いけどかなり努力しないと出来ない。それぐらいの悪だくみをしてみたい。
方針を決めて用紙に書きだす。
大まかな骨子が出来たら詳細を詰める。
もちろん、これは一番の理想だ。
当然ながら現実なので上手く行く訳もない。
ゆえに次善策を用意する。
次善策も駄目なら別の策。
徐々に妥協出来る範囲を増やし、最後に、大失敗した時の起死回生の一手も考える。
ここまでやっても失敗の可能性はわずかに残る。それが人生という奴なので仕方は無い。
けど、限りなくその失敗確率を低くすることには成功した。
後はもう運の話になってくる。
ゆえにこれ以降の失策があった場合については考えない。
もはや人事を尽くした後なので天命を待つしかないのだから。
さて、次は人物把握ね。
誰がどう行動するのが理想的でその為にはどう動かすかが重要になる。
つまり、それこそが私の腕の見せ所。
前回はウサギの天空城が出て来るという想定外中の想定外により敗北を喫したが、今回は負けるつもりもない。
最後に笑うのは私なのだから。
「セレスティ―アさんも独自に動いたみたいだし、ヘンドリックにウサギ組、皆曲者ばっかりだけど、最後に笑うのは……ふふ。では、まずは最初の一歩と行きましょうか、ねぇ、ピスカさん?」
ドアが開き、異変を探るためにピスカが私の部屋へとやって来る。
驚きは無い。何しろ狙ってやったことだ。
まずは彼女をオトす。
いや、別にウサギみたいにエッチな事をするとか、悪事に手を染めさせる訳じゃない。
ちょっと手伝ってもらうだけだ。
「それで、何をしたでありますか?」
「はい、悪だくみを少々。面白くなりそうです」
「それは何よりであります。では、辞世の句をお読みくださいであります」
ジャキンと腕が折れて銃器が顔を出す。
背筋を這う冷や汗に気付かない振りしつつ、私は最初にして最大の難所へと挑むことになった。
いや、最大の難所、ではないか。確かに失敗すれば死ぬのだろうけど、今回はワザとなので許して欲しいl
「まぁ、おまちくださいな。まずは悪だくみの内容をきいてくださいまし」
さぁ、ゲームを始めよう。味方だろうが敵だろうが関係なく私の掌で踊りなさいな。
ふふ、ふふふ……




