美与、運命の選択23
天音とデートである。
天音とデートである。
天音と、デートなのであるっ!!
ひゃっほーう。最高っ。今日はなんて日なの!
こんな最高の日はもはや叫ぶしかないじゃない。
私の思いの丈全てを込めて……
「なんて日だッ!!」
―― それ、ギャグじゃなかったっけ? 用途は違うけど ――
うるさいモブウサギ。今日は彼氏面してんなっ。殺すぞ!
私と天音のデートなんだからペット一号は天音の腕の中でおとなしくもっちゃもっちゃしてりゃいいのよ。
デートコースはどこがいいかしら?
やはり天音の好きな場所がいいわよね。
「天音、どこか行きたいところはある?」
「ん。大丈夫、歩いてるだけで楽しい」
よし分かった。ここで片っ端から商店の味を網羅すればいいのね。
任せて。金にいとめは付けないわ。
「だから、食事を無駄に買うのはやめるべき」
さっき怒られたばっかだった。
だって天音に構いたいんだもの。
お世話焼きたいのよ。大好きだから。
「でも……」
―― おちつけ美与。天音は今ゆっくり歩きながら喧騒を堪能しているところだ。茶化さず隣をゆっくり歩きな ――
「うるさい駄兎。しゃべんな。私と天音の邪魔すんな。というか出しゃばんな丸焼きにするぞッフォローありがとよっ。」
―― あれ? フォローしたはずなのにものすごい罵声浴びた気がする ――
「気のせい。きっと当たり前のことしか言われてない」
―― そっかぁ、ってんなわけあるかいっ ――
しばらく街道を歩くと、天音はんーっと考え、適当に道を曲がる。その先にあったのは廃屋。どうやら人が済まなくなった家が自然と壊れたようだ。
「風情」
―― そうかぁ? ――
「うるさい黙れ及びじゃない。さっさと先に帰ってなさい。私が天音エスコートするから他の女でもさそってしっぽりしてなさいよ。私たちは私たちで楽しんでくるから」
―― それ、楽しいのお前だけじゃね? やめとけよストーカー。天音だってゆったりしたい時だってあるさ、そしてこの後俺とともにホテルに消える予定だから嫌なら帰ってもいいんだぜ? ――
「なんですって!」
―― なんだよ ――
「どっちも変態。さっさと行くよ」
あ、ちょっと天音。んもう、恥ずかしがり屋さんなんだから。
「ああん待ってぇ」
天音とのデート、瘤付きだけど仕方ないわね。一応一緒にいることだけは認めてあげるわ。だから私と天音が愛し合う邪魔はしないでよ彼氏面兎。
―― ふざけんな。天音に愛されてるのは俺だぞ。っつかお前の彼氏でもあるのに何でそんな邪険なんだよ!? ――
「天音と私の恋を邪魔するからよ!」
―― 天音、ストーカーとの会話が成り立ちませんっ、どうしたらいいですか? ――
「放置で。まぁそれでも喜ぶけど」
―― 構っても蔑んでも放置しても喜ぶとか、もうどうにもなんねぇな ――
「ふっ、私の天音への愛はその程度では止められないわよ」
「むしろ止まってほしかった」
ため息一つ。あのため息、吸い込んじゃダメかしら。クンクンスンスンハスハスしちゃダメかしら。
ダメらしい。ウサギのやつ、わざわざ私に見せつけるように両手使ってバッテンを作って見せた。
くぅ。自分は天音に可愛がられやがって、私も可愛がられたい。
小動物に転生するまで死にまくってこようかしら?
でも、それだと今のように天音を可愛がることができないから却下だわ。
やっぱり私は今の体のままがいいわね。
この体だと存分に天音を堪能できるし。
うさぎはアレね。天音を抱きしめてこうやって世話焼くとかできないから残念よね。
ふふ、これについてだけは私の勝ちだわ。
「ついた」
―― おお。コロアって図書館あったのか ――
「本を読むのね、天音好きだもの」
「ん。読書タイム。いい?」
―― 構わんよ ――
「私はいつも通りだから気にしなくていいわよ」
と、いうわけで。
図書館にやってきた私たちは、私が椅子に座り、天音がその上に座り、ウサギが天音の上に座り、天音が本を読む間に私が甲斐甲斐しく天音を可愛がり、ウサギが天音の邪魔するように身悶えしながら昼寝を開始するというなんかこう、癒され空間を醸し出す。
「いや、異常だと思う」
ええぇ? どこが?
天音はとっても可愛いんだから皆が注目してるだけよ。
「私は気にしない、でも皆が見てるのは美与が変人だから、私への注目じゃない」
ああんつれない。でもそんな天音が私は好きよ。
あああ、天音の髪さらさら。癒されるぅ。
「天音、私一生ついていくわ。ヘンドリック側だろうと、地獄だろうと、いつまでも、どこまでも」
「向こうに行く気はないから問題ない。あとさすがに地獄には来ないように。もしもそうなったら責任感じる」
「私のことで天音が責任っ! ヤバい、どうしよう、興奮しすぎて鼻血でそう」
「言っちゃダメな奴だった。はぁ……」
ため息一つ。天音は本を読むことを再開し、その後読み終わるまで一切会話をしてくれなかった。
でもいいの、本を読む天音はとっても可愛らしかったから。




