天音、運命の選択22
中庭の原っぱの上、美代に抱きしめられて可愛がりされている私は啓太……ウサギさんを抱えて可愛がりしながらゆったりとした日々を送っていた。
正直、暇だ。
だってここ、ド田舎みたいでやることがないんだもの。
こっちの世界が現代世界から見て遅れてるのでゲームもできない、スマホも見れないで手持ち無沙汰なのである。
今までは魔物退治などで気を張り詰めることが多かったけど、この城に来てからは美代に愛でられるか、啓太と遊んでいるかしか選択肢がない。ほかはずっとこの辺でぼーっとしとくだけだ。
たまに畑の世話してるけど、それも頑張っても一時間。残りはすべて暇である。
やることはないかと城内散策してみたけど、できそうなのはシュミレーション戦闘への参加。
もともと人と一緒に生活というのがあまり好きではない私としてはちょっとご遠慮願いたい。
なので、暇を持て余しているところである。
「と、いうことで、暇をつぶせることを所望する」
―― いきなりだな ――
「んじゃー3「却下」えーっ」
「えっちなこと以外。啓太も考えて」
―― 考えろって言われてもなぁ。んー。シュミレーション戦闘に参加するとか? ――
「人込みは嫌」
「チョコミントさんたちと勉強会とか?」
「頭使うのは無しで」
―― なんてこった。天音がわがままモードになっちまった ――
「天音が、わがままモード!? わがまま天音とか何それ私得じゃない!」
美与はそろそろ頭の病院行ったほうがいいと思う。
んー、でも二人に振ったはいいんだけど、私自身も何かしたいというわけじゃない。
でも、現状の状態からは抜け出したいの。
「わかったわ! いくらでもわがまま言って。私にあなたの思いをぶち込んでぇっ」
―― まぁ、変態はほっといて、だ。せっかくだしコロアの店回ってデートとかどうだい? ――
「ん。採用」
現状を打破できるからそれでいいや。
方針を決めた私たちはコロアへと降りる。
途中、アーボたちがエントランスで戦闘シュミレーションしてたけど、私たちは無視して通り過ぎた。
一度全クリしたらしいけど、ピスカさんの手伝いがあってのことだったので、自分たちだけで頑張りたいらしい。
ラスボスピスカさんらしいじゃない。絶対本人いないと勝てないでしょ?
コロアの街に降り立ち、いろいろな場所を見て回る。
別に他の場所に行ってもいいんだけどコロアでちょっとイベントが起きるのでそれまではここにとどまるつもりらしい。
ある意味敵国なのに普通にデートとかしちゃっていいんだろうか?
ここのギルド長、つまり国王に類する人とトラブったはずなんだけどなぁ。すごく無防備な気がする。
私の隣に美与、腕の中にウサギ。これ、啓太とデートじゃなくて美与とデートしてるみたいになってない? むしろ女子二人でぶらり旅?
傍から見たら私がウサギとデート中なんて全く誰も理解できないんじゃないだろうか?
「おぅ嬢ちゃんたちー、焼き鳥旨いぞーっ」
「おじさん、三つください」
私が告げると、啓太がアイテムボックスからお金を取り、出そうとするより早く美与が支払う。
三つの串をもって近づいてきた美与は、ウサギの口に一つ無理矢理突っ込むと、もう一つを自分で持って、最後の串を私の口元へと持ってきた。
「はい、あーん」
慣れたものなので仕方なく口を開く。
別に餌付けされたわけじゃないんだけど、こうしないとへこみだすから仕方なくやってあげるのである。
ん。焼き鳥おいしい。
「はは、嬢ちゃんたち、まるで親鳥と雛みてぇだな」
「まぁ、おじ様ったら。嬉しいこと言ってくれたからサービスするわね」
美与、普通逆だよ? おじさんがサービスで焼き鳥一本プラスしてくれるとかじゃないの? なんで美与がお金をサービスでおじさんにあげてるのかな? いや、まぁいいんだけど。
―― ウサギってさ、羽で数えんだぜ。一羽、二羽ってな ――
「知ってる。それが何?」
―― つまりウサギは鳥の仲間ってことだ。そして俺は今、焼き鳥を食っている。これは、共食いになるんだろうか? ――
「ん。どうでもいい考察だった。ずっと悩んでなさい」
付き合いきれないので先へと向かう。そもそもウサギは鳥じゃないよ。昔の人が羽で数えただけなんだから。たぶん。
屋台が多いなこの道。
おかげでさっきから美代が無駄遣いしまくり、私の口にはまだ中に入ってるのに新しいジャンクフードが入ってくる。
まだ食べきってないんだけど。口の中にはイカ焼きと焼きそばとチョコバナナとケバブが混在している、なのに次を買ってくるのはやめなさい。まだ食ってる途中です。
―― 美与、ストップ。天音の頬をどんぐり蓄えすぎたリス君みたいになってる ――
「あ、ごめんなさ……これはこれでじゅるり」
美与はやっぱり変人だと思う。同じ啓太の彼女じゃなければそろそろ縁切ってたかもしれないよ。




