ジョージ、運命の選択5
「ミーは決めマーシタ」
「おう、どうすんだ?」
コロアの街を散策中、ミーは隣の福田に告げた。
正直まだ迷いはあるのですが、このまま磁石寺に付いて行ってもモテる気配は全く無い。
だからとコロアに降りてナンパをしてみているのでーすが、どうにも芳しくない。
たまに、福田と一緒に居るせいでは? と思うこともありまーしたが、個別に一時間別の場所でナンパをした結果、二人揃ってボウズだったので相手のせいではないこともわかりマーシタ。
やはり、女性陣の言うように転生すべきなのでしょうか?
「ヘンリーの所、向かいマース」
「マジかよ!? おまえ、負けたら強制転生で女性になっちまったらウサギに襲われんだぞ!?」
「モテない今のまま、ウサギのハーレム眺めるのは酷デース。仲間に成るかどうかはともかく、向こうのにいるS級冒険者の女性陣ナンパしてみまーす」
「マジかよ……」
「福田はどうします?」
「俺は……このままでいるよ。戦争に参加するかはともかく、いつか来る運命の女性を……」
最後まで台詞を告げるより早く、ミーたちの背後からふにょんっと柔らかな感触が背中にのしかかる。
「悩める少年共よー。お姉さんで童貞卒業しなーい?」
思わず振り向く。そこに居たのは、女狐の笑みを浮かべたセレスティ―ア。
「あ、あんた、磁石寺の女じゃなかったのか?」
「ええ、残念ながら襲われたので彼の女よ。でも、私は一人じゃ満足できない女なの。ウサギさんとの行為はとても満足よ? でも私は毎夜毎晩一年中男に求められたい女なの。だから、ウサギさん以外と寝れない制約が付いたままなのは辛いのよ。ヘンドリックだっけ、あっちについてウサギを一回殺しましょ? 私の制約が無くなれば、貴方たちの童貞をお姉さんがもらってあ・げ・る」
悪魔の囁きだった。
でも、でも磁石寺、ミー達を悪く思わないでくれ。
ミーは、男なんだ。
ずっとモテ無かったんだ。
女性から襲っていいなんて言われたら、抗えるわけが、ないだろう?
「で、でも、いいんすか? 俺ら……」
「彼女が欲しいのデース、ただ肉欲に溺れたいだけでは、ないデース」
少しだけは、抗ったんだ。でも……
「あら、経験は男を上げるモノよ。お姉さんが女の子にモテる方法を教えてあげる。でも、それは私に童貞を捧げた後。お姉さんに任せなさい。貴方たちにハーレムを築かせてあげる。放っといても女の方から寄って来るわよ」
こんなこと言われてしまったら、そりゃ抗うなんて出来る訳がないのデース。
ウサギみたいに、放っておいても女性が集まって、ふふ、くふふ。
い、いやいや、駄目デース。この女に付いて行ったら、自滅しそうな気がしまーす。
「お、俺のは、ハーレム。可愛い子がよりどり、みどり?」
「ええ。狙った女性をオトすことだって可能だわ」
「で、でも、そんなに上手く……」
「行くわ。だって貴方たちに足りないのは自信だもの。私で童貞を卒業して、男としての余裕と自信を身につけなさいな、そうすれば、もう、あとは貴方たちの思い通り」
思い、通り……
ごくり、ミーなのか、福田なのか、生唾を飲み込む音が嫌に響いた。
周囲の雑踏の声が遠のいて行く気がする。
「ほら、見て。あそこの道を行く女性も、親子連れで買い物している二人だって、あそこのプライドが高そうな女だって、貴方たちが自信と男の余裕を見せてやれば、喜んで貴方たちにしな垂れかかるわよ。甘えるように抱きついて、キスをして、愛を囁いて来るの。それって、素敵なことじゃないかしら」
駄目でーす、悪魔の誘惑に、ミーも福田も既に乗り気になってしまってます。
駄目だと分かっていてもこの誘惑には抗えそうにありません。
「行きましょう。ヘンドリックさんの元へ。ギルドで聞いて来たけどカラザン皇国に向かったそうよ。さぁ、貴方たちの栄光を掴むために、ウサギさんを殺しましょ。私を自由にさせて、三人で、蕩け合いましょうよ」
ミーたちは抗った。抗って抗ってそして、頷いた。
所詮ミーたちではこの経験豊富な悪魔の手から逃げることなどできなかったのだ。
磁石寺、怨んでくれるなよ? 次に会う時は、敵同士デース。
「ふふ。楽しみだわ」
舌をちろりと見せるセレスティ―ア。
罠だと分かっていても抗えない凶悪で甘美な罠に、今、二人の哀れな男達が引っ掛かった。
抜けだせることは無く、ただただ彼女に捕食されるためだけに、必死に働く奴隷にされるのだ。
それが分かっていても、わかっているのに、誘惑に抗えそうにない。
ミーと福田はセレスティ―ア共々乗合馬車でカラザン皇国を目指すのだった。
その内部。何故か同じ場所向けて天竺さんが奇妙な笑い浮かべながら泣いているとう意味不明な精神状態でいたんですが、ヘンドリック側に付く気なのか? なんか、性格変わってるみたいだけど、いえ、君子危うきに近づかずデース。




