康弘、運命の選択1
磁石寺君に送って貰い、レッセン王国へとやってきた。
国王陛下に磁石寺君とユーリンデさん共々、僕とシエナが謁見する。
謁見の内容は僕らが侯爵家の屋敷に住むけど問題ないっしょ? 問題無いよね。んじゃよろしく。
と告げるためである。
代替わりしてご隠居となったレッセン王に代わり、ガッパイ王が玉座に座り、僕らの話を聞いていた。
当然ながら頭を抱えて何とも言えない顔をしている。
一応、うさしゃんが名誉貴族になってるので、話は聞かざるをえないようだ。
なんというか、ご愁傷様です。
「あー。なんとなく言いたいことは理解した。その男とロスタリスのシエナ王女を自分たちの代わりに名誉侯爵邸に住まわせたいってことだろ。好きにしろ。お前さんは名誉な役職なだけで貴族としての役割はほぼねぇしな。誰を住まわせようと、まぁ犯罪者でない限りは問題ねぇよ」
―― さすがガッパイ王。話が速い! ――
「全く、緊急だって言うからわざわざ時間を取ってみれば……そういうしょうも無いことは書面で出してくれ。そしたら全部ビルに丸投げできるから」
「ちょっと兄上、私としては仕事が多いのでウサギのことまで引き受けたくないのですが」
「宰相なんだ、諦めてくれ」
「ふざけんな!」
―― 揉めるなら家族の時だけでなー。んじゃ、オイラたちはお暇しやっす。 ――
「あ、こらウサギっ!?」
ほれ、行くぞ田代。とウサギに促される。
促されて慌てて動く。シエナさんは既に行動起こしていた。
早いよシエナさん。事前連絡受けてたの?
「あの野郎逃げやがった!?」
「兄上、まだ話は終わってませんよ。ウサギについては兄上に一任しますからね!」
「なんだと!?」
兄弟喧嘩が始まってるんだけど!?
気にしない気にしない、とウサギは気にせずユーリンデさんと共に去って行く。
困った顔をしながらも、ここはウサギさんに任せましょ、とシエナもこれに従った。
いいんだろうか? 気にはなるけど、喧嘩するほど仲が良いっていうし、兄弟だから大丈夫だよね?
ウサギに案内されて屋敷へとやって来る。
屋敷に入ると同時に執事服のお爺さんがびっくりした顔をして出向かえる。
磁石寺君が何かしら伝えると、慌てて屋敷に駆け去っていった。
「あの、ご老人ばっかりな気が?」
「ええ。夫はこの通りウサギの身なので、チェルロ以外は老人だらけになっておりますわ」
「え? 大丈夫なんですか? おもに寿命的なもので」
「ええ。お死にになられたら遺族に見舞金が送られますから。ああ、でも不正をしていないか調べないといけないわね。アナタ、今日は我が家の経費確認をしますのでチェルロとグレース、あと計算の得意な方を数名お貸しくださいな」
―― 了解、ぱんなこったが空いてるだろうし、ジョゼにも働いて貰おう ――
それから少し、天空城から降りて来た面子はかなり多かった。
何でも城の中ばかりだと暇だからってことでわざわざ仕事しに降りて来たようだ。
老婆メイドと老人執事がわたわたしている廊下を歩きながら、ユーリンデさんに抱かれたウサギが家を案内し始める。
ユーリンデさんと共に付いて来た殆どが書斎に籠ると、僕とシエナさん、そして磁石寺君とサタニアーナさんが中庭へと歩きだす。
中庭に辿りつくと、既に全執事とメイドが整列していた。
うわぁ、本当に老人ばっかりだ。老人ホーム来たみたいなんだけど?
―― やぁやぁ皆さんごきげんよう。名誉侯爵うさしゃんです。諸事情により、この屋敷をここに居る田代康弘、シエナ・ロスタリスの二人に譲ることにした。ああ、落ち付け。ざわつく理由は自分たちはどうなるか、だろ。安心しろ、継続勤務だ。住む者が変わっただけで今まで通り過ごしてくれ。あとメイドや執事が老人ばっかりだといろいろと大変だろうけど、新人を雇うかどうかはシエナさんに一任してある、財政についてもシエナさんが管理することになるからこれまでみたいにチェス盤勝手に買ったりはできないからな。そこ舌打ちしない。ウサギイヤー甘く見んなよ、あとこれまでの利用状況をユーリンデが調べてるからな。ああ、そうだよ。ある程度はやるだろうと見越してたから不問にするが、さすがに見過ごせない不正があった場合は、わかるよな? ――
数人、青い顔になっている。
そのまま死んじゃうんじゃないかな?
でも、ウサギ君はどうやら僕らが過ごしやすいように改革しておいてくれるようだ。
御老体達には悪いけど……というか、この中庭だけでも凄いな。あそこにあるのはチェスボードだし、ゲートボール場がド真ん中に出来てる。
あっちにある庭園は松とか盆栽で見かけるような渋いのばっかりだ。
この世界でもああいうの流行ってるのかな?
ここに住むとか不安しかないけど……シエナと一緒だから、僕はなんだってやってみせるさ。
ありがとう磁石寺君。戦争については、二人で応援させて貰うよ。参加はしないけど。




