ウサギさん、宣戦布告
人の少ない場所を見付けたので城が着陸を開始する。
ここにやって来たのはヘンドリックが俺に話があるってことで外で話したいって言われたからである。
なんかヘンドリック裏切りそうな雰囲気あるみたいだし、一応警戒はしながら外へと向う。
何人か心配していたようで付いて来たそうにしてたけど、今回は男同士の会話ってことでご遠慮頂いた。
なんとなくだけどあいつの話、予想付くしな。ほぼ確実に咲耶先生関連だろ。
ようやく不倫に気付いちゃったって所か。それで俺を殺そうとするのか、許して新しい恋に向かうのか、どんな話だったとしても、出来るだけ正面から受け止め、反撃を行うかはその時々で。
俺だってクラスメイトとは出来るだけ敵対したくないし?
ヘンドリックには先生襲っちまったっていう後ろめたさもあるからできれば別の女性と幸せになってほしいなってのはあるんだ。
でも、向って来るなら話は別。敵として確実に遺恨は断ち切らせて貰う。
さぁてどんな話し合いが待ってるか……
おお、あの野郎既に先に出てるじゃん。
準備が良いこって。しかも全身武装済み、と。殺る気満々っすか。
風吹きすさぶ荒野。
地面に降り立つと、ウエスタンっぽい藁の束が風に吹かれて転がって行くのが見えた。
んー、なんか本当にゴールドラッシュ時代の一騎打ちみたいな風景だなオイ。
ゆっくりと近づいて行く。
背中を向けて風景を見つめていたヘンドリックは、俺の接近に気付いてゆっくりと振り向いた。
殺意の無い穏やかな微笑み浮かべ、俺を見る。
「やぁ、時間を取って貰って悪いね」
―― いや、俺もお前とは一度話し合いしときたかったしな ――
「そうかい。それって……咲耶のこと?」
―― ああ ――
やっぱり気付いてたか。
まぁそうだろうな。他の奴らも気付いてたんだし、こいつだけ気付かずに過ごすなんて無理な話だ。
「一応、君の口から聞かせてくれるかい? あまり聞きたくは無い結果だろうけど」
―― 咲耶、東雲先生は既に俺が襲った。時期は先生をピスカと助けた時だ ――
「はは、随分早い、いや、予想通りか」
物憂げな顔で自虐的に笑う。
「辛いな。ずっと寝取られた女を口説いてたんだぜ」
―― それはその、すまない ――
「いいさ、うすうす気づいてたのに聞くのが怖くて何も出来なかった俺が悪い。そもそも咲耶が大切だったのならお前に渡すことなく自力で助けるべきだったんだ。でも、寝取られた怨みは、別だよな?」
ゾクリ、背中を何かが這った。
久々に感じた強烈な殺気は俺を殺しかねない憎悪の眼光。
しかし、危機察知には何の反応も無い。攻撃、仕掛けて来ない?
「今日はさ、殺し合いをするつもりはないよ。ただ、男として、けじめは付けないとって思っただけさ」
静かに俺を見据え、厳かに告げる。
「君を殺す。ライゼンさんと同じだ」
おいおい、殺害宣言かい!?
「ただ、今は無理みたいだ。僕一人じゃ君を殺せても転生するだけだろうし、ピスカさんやディアリオさんがいる。こちらも死んだら意味がない。少なくともS級冒険者数人はこちらに引き込まないと勝負にもならないだろうね。だから、これから数年後、装備を整え人を集い、君を討つ」
いや、待って、これ殺害宣言じゃない。開戦宣言だ!? こいつ、世界を巻き込んで戦争する気か!?
「今、ここで決着を付けた方が君としてはいいんだろうね。ジョゼさんのトラップだっけ? それで俺の転生を不可にして記憶持ち越しさせずに殺せばそれで後顧の憂いはなくなる」
―― それがわかるならなぜそんな宣言を俺にした? ――
「言ったろ? けじめさ。男として、俺はお前に決闘を申し込む。けど俺だけじゃ勝てないのは分かってる。ライゼンさんや転生しただろう坂上を仲間にしてお前を殺す戦力を整えるさ。だから、互いに準備しよう。多分、これが君にとって最後の大戦になるだろ。君を危険視する全ての者が相手で、君を許容する全ての者が味方。世界を二つに分けての戦争だ」
―― 東雲先生も巻き込む気か? ――
「むしろ……君を慕う全てを駆逐する。それが俺の復讐だ。出来ないと、思うかい?」
そういって、ヘンドリックは不敵に微笑む。
こいつの固有スキルってなんだった? ただ、こいつのスキル次第じゃ確かにヤバいことになるかもしれん。
確か固有スキルは冷酷なる執行人だったな。
自分が大罪だと思った相手を死刑執行するスキルだっけ?
いや、本当にその程度で済むのか、概念系のスキルだからまだ奥の手がありそうだ。
これは、凶悪な相手を敵にしちまったか?
「ここで二人で殺し合うってのもありだけど、どうする? 磁石寺啓太?」
―― わかった。それが最初で最後のお前の闘い、なんだな? ――
「ああ。どっちが勝っても恨みっこなしって奴さ。そのかわり、やるからには全力で殺し尽くす」
―― 分かった。城の中に居る奴もお前について行きたい奴は付いて行くよう伝えておく ――
「セレスティ―アやジョゼさんは縛られてるみたいだけど?」
―― わーったよ。あいつらの神前契約も解く。それで俺の元離れるなら俺はその程度だったってことだな ――
互いに条件を出し合い、折り合いがついたところで別れることにした。




