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ヘンドリック、わかっているんだそんなことくらい

「ちょっと、いいかしら?」


 部屋で準備を整えていたヘンドリックの元へ、彼女はやってきた。


「やぁジョゼ。どうしたんだい?」


「さわやかなのはいいけど殺気が滲みでてるわよ」


「おっと、失礼」


 思わずもれていたらしいウサギへの殺意を噴き散らす。


「で、何の用だい?」


「今回は失敗よ。ウサギへの叛意は押さえておいた方が良いわ」 


「ああ、あのピスカさんのせいかな?」


「分かってたの。私だけじゃなく他の二人も今回は見合わせるみたい。一人で反旗を翻しても間抜けなだけだし何も出来ずに終わるわよ?」


「まさか君が忠告してくれるとは思わなかったよ」


 ふふ、と軽く苦笑したヘンドリックは意識を切り替え真剣な顔で彼女を見据えた。


「わかってるんだ。そんな事くらい。だからって止まれる段階は既に過ぎてる。警告を無視したのはウサギだ。僕はただ敵に会う、それだけさ」


「だから、今は……」


「ピスカさんが居るから止めるべき? じゃあ何時やるんだ? ウサギへの怒りと憎しみを抱えたままずっと笑顔で過ごせって? 寝取った相手と寝取られた彼女の前で楽しそうに会話しろって? 出来る訳ないだろ。俺がそんな聖人君子だとでも思ってんのか? 誰だってそうだろ。大切なモノを奪われたのなら復讐くらいするさ。大丈夫、誰の助けも無くたって、俺にはウサギを殺す術はある。すぐに使うかどうかは、奴次第だけどね」 


「ウサギを、殺せる? それが本当なら大したものだけど……」


「ピスカに殺されるだろうって? 問題ないさ、どうせ死んでも転生するだけさ。ただ、ウサギに敵対する、それくらいはさせてくれよ。俺だって、男として引けない一線ってものがあるんだ」


「……そう」


「殺したりしなくとも、ウサギを殺したい奴集めて反旗を翻すさ。もしもその時、ウサギを裏切れそうなら、君も手伝ってくれると嬉しい、まぁ、無理は言わないけどね」


 そう告げて、ヘンドリックはジョゼの隣を通りぬけて部屋をでていく。


「死ぬ気?」


「まさか? ただ話をするだけさ。結果はどうなるか分からないけど」


 ほぼ確実にただで終わるわけがない。そう思いながらもジョゼは止める気にはならなかった。

 そもそも止まる気がないヘンドリックを無理に止める意味がない。

 決戦に挑む男の背中をただただ見送る。


 ヘンドリックが見えなくなった後、ジョゼはふぅっと息を吐いた。


「馬鹿ね、可能性も低いのに裏切るなんて。せいぜい満足して死になさいな」


 見えなくなったヘンドリックの背中へと嘲笑を送るのだった。


 ---------------------------------


「っと、言う訳じゃ」


 そこはラビット・ネスト中心部から隠し扉を開いた先にあるチョコミントの秘密部屋。

 この城の各所を監視するカメラ映像が無数に映るモニタールームである。

 そこに呼び出されたウサギさんは、チョコミント、ぱんなこった、ピスカと共にジョゼとヘンドリックの話を監視していたのである。


 ―― いやー、見事に怨まれてますな ――


「他人事ではないであります」


「ジョゼちゃんも裏切る気満々じゃのー」


 ―― いや、ジョゼはなんやかんや言いながらも俺との生活結構気に入ってるっぽいから大丈夫だって ――


「え? それマジで言っとるんかM・C?」


「落とした女性は裏切らないって思っとるんじゃなぁー、女性で痛い目見たろうに」


「馬鹿は死んでも治らない、であります。いえ、ご主人様がバカだとは言ってないであります」


 三人からはあまり支持されていないようだが、ウサギさんはジョゼのことを信じているのだ。

 大丈夫、手を付けた女性で裏切るような存在はいないはずだ。ちゃんと俺満足させてるし。と謎の安心感を持っているウサギに、チョコミントたちは付ける薬がないな、と溜息を吐き合うのだった。


「ところでダーリンや、儂の初めては何時になるんじゃな?」


「わざわざ女になって襲われたいとか、儂にゃ全く分からんわい。改造についての話は合うんじゃが、そっちはとんと合わんのぅ」


「私はメンテナンス終わったので警戒任務に入るであります。ヘンドリックさんは本当に放置でいいのでありますね?」


 ―― ああ。あいつも一人で会うつもりらしいしな。ジョゼが居ない以上最悪でも転生だ。ま、大丈夫だろ ――


 魔王すらも撃退したウサギは既にヘンドリック一人程度相手なら死んだりしないだろ、っと鷹を括っているようだ。

 一抹の不安を覚えるピスカだったが、本人が大丈夫だというのだから大丈夫なのだろうと信じるしかない。


 最終兵器ではあるが、彼女の行動の最終決定権はウサギにあるのだ。

 心配だからと差し出がましい行動は行えないのである。

 なのでチョコミントにアイコンタクトだけを送っておく。


「ひょっひょっひょ、余程の事が無い限り大丈夫じゃろ。まぁ警戒はしとこうかの」


 悪の秘密結社時代、絶対の大丈夫は無かった。

 ゆえにチョコミントが警戒すると言えばソレ相応の対応をするということであった。

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