修介、新たなる冒険の地へ
「キリトゥ、いい話聞いて来たぜ!」
その日、パラマ王国に来ていた俺、仲村修介にドガッサが話しかけて来た。
全身黄色の装備で身を包んだガタイの良いおっさんは、凄く嬉しそうに向かいに座って来る。
酒場だからおっさんが来るのは問題ないのだが、さすがに全身イエローなおっさんが向かいに座って来ると皆の視線が痛々しいのでちょっと辛い。
とはいえ、俺も大概ではある。
全身黒で統一した恰好で、好きだったアニメのキャラを意識して名前も修介ではなくキリトゥに変えたのだが、未だに彼女は出来ていない。
顔も容姿もモテ系の筈なんだが、多分この黄色いおっさんが常に傍に居るせいだろう。
このおっさんもモテを意識していたがために、一時期ピンク一色だったりしたのだが、今は黄色一色で金運を高めているらしい。
金さえあれば女なんて寄って来るとか場末の占い師に言われたのがきっかけなんだそうだ。
おっさんの癖に占いとかしてんじゃないよ。絶対騙されてるだろ。その甲冑の金額だけでも娼館くらいなら行けてるぞ? 俺は行かないけど。
出来るだけドガッサを視界に入れないようにして食事をかっこむ。
「で、なんだよいい話って」
「おう、最近ロスタリスのコーライ村、だったか? そこに天空城が着陸したらしい」
天空城。
ゲームならば絶対にフラグだろうし、凄いお宝が眠っていそうな魅力的な単語だ。
イベント開始の合図っぽいし、探しに行くのもいいだろう。
だが、ここは現実。
しかも天空城の出現はつい先月。ボザーク帝国とシャコタン王国の戦争中に出現したらしい。
その後、コロアにしばし止まっていたらしいのだが、再び移動を開始し、レッセン王国へ。かと思えばロスタリスへとやって来たそうだ。
冒険者としてはぜひともダンジョン探索したいだろう。
でも、でもだドガッサ。噂程度だが、お前も聞いただろ。城から降りて来るウサギを見たって。
俺はそのウサギ、多分だが知ってるんだ。
「お、キリトゥここにいたのね」
「キリトゥさん、情報収集終わりました」
別行動で情報を集めていたペレッタとレペスタが戻ってきた。
「どうだ? なんかあったか?」
「んー、何処も天空城で持ちきりね」
「むしろ天空城の話題ばっかりで他の話がかき消されてる、かな?」
全く、あのウサギはやっかいなことしかしないな。
俺のパーティーに居るこの女性二人、モテを狙うならここが狙い目なのだろう。
だいぶ前だが、実際に俺もドガッサも狙ってはいたんだ。
ウサギにかっさらわれる前はまでは。
あのウサギに襲われたせいでこの二人の恋愛対象がうさしゃん一択になっちまったんだよ。だから俺らには脈無し。
モテたいと思うならこの二人以外の女性を探さないといけないってことだ。
新人に期待するっきゃないかな。
「でも、ウサギさんの噂があるなら、行ってみたいかな」
「でもここから向うまでに多分また移動しちまうよペレッタ」
「あ、そっか。それに折角ロスタリスから出てここに来たんだもんね」
「一応次の目的地はゲンテウクのつもりだが、どうする? 戻るか?」
「いえ。行きましょ。うさしゃんにならいつでも会えるわよ」
「そうですね。きっとその内会えちゃいます。そんな予感するんです」
えへへ、っとはにかむ女ども。畜生、血涙出そうだ。
しかし、ウサギかぁ、あの野郎他の女性はべらしてよろしくやってんだろうか?
それとも、もう死んじまったとか?
ワールドエネミーのメッセージが何度かでてたが、もしかして魔族領でなんかやってんだろうか?
まぁ、どうあってもあのピスカだったか、アレが居る以上ウサギが死んでるとは思えんが。
やはりあの天空城に居るんだろうか?
「まぁ、近くに天空城来たら立ち寄ってみるか?」
「ホントですか!」
「キリトゥ話分かるね」
「キリトゥ、お前モテ期か?」
アホか。この二人どう見てもウサギ目当てだろうが。
ドガッサはホントその容姿どうにかしろよ。
そろそろ黄色もキツイって。
なんだ、次はゴールドクロスにでもする気か?
「そう言えば、この前出会った黒髪の冒険者が言ってたんだけど」
「ん?」
「この近くの森に居る守護者、なかなか話の分かる魔物らしいですよ」
「ああ、そう言えば守護者って会話可能なんだっけ」
「なんだ、行くのか?」
「急ぐ旅でもないしな。折角だから行くだけ行ってみるか」
「守護者ねぇ。さすがに俺らより強いんだから逃げれるようにしとけよ?」
「ああ。その辺りは出来るだけ逃走アイテム持ってくよ」
「うさしゃんの名前出したら大丈夫だったりしないかな?」
止めてくれ。絶対にあいつの名前だしたら激昂して襲ってくるのがオチだって。
俺の娘をよくもぉぉとかとばっちり受けることになるのは御免だぜ。
あいつのことだからこの辺りの魔物にまで手を出してる可能性高いし。




