ウサギさん、大団円……と思ったら桃瀬達のこと忘れてた
「あー、もふもふぅ、癒されるでありますぅ」
俺は今回の功労者、ピスカさんの膝の上でしばし愛玩動物と化していた。
ウサギさん成分が足らないからしばらくもふらせて、とのことなので、ピスカにこの身を差し出しているのである。
いやー、まさか坂上をあんなに楽に倒せるとは思わなかったぜ。
ほんと良く帰って来てくれたよピスカ。
アーボも、それなりに頑張ったな。
アーボ、悪いんだけどそこのサタニアーナ拾って来て。自力じゃ動けないだろうから。
はぁー、なんか一仕事終えた感があるなぁ。
このまま城に帰ってゆったりしたいぜ。
あ、そうだピスカ。
「はい、なんでありますか?」
地面に座り、膝の上に寝転ぶ俺の背中を撫で廻しながらピスカが優しげに尋ねて来る。
あー、なんかもうウサギとしてこのままずっと撫でられていたいような気がして来たな。
はー、ゆったり。魔王戦で激しく動く必要もなくピスカに守られた安全地帯。
ああ、久しぶりだなこれぇ。最っ高!
俺が直接出張るような危機は殆ど無くピスカに全て任せておけばオッケー。
脅威は全て排除してくれるし、行きたい場所に即座に向かえる超高速移動。
ああ、俺のピスカ、よく帰って来てくれた。
アンゴルモアと異世界転移した時はマジ絶望したからなぁ。
そういえばアンゴルモアどうなった?
「アンゴルさんなら我々を放置したまま別世界に呼ばれたであります。次に見付けることがあったらマジでぶっ倒しますでありますよ」
うわーお。あいつ、相変わらず不幸だな。
「それにしても、こっちはこっちで大変でしたでありますな」
おー、そうなんだよ。お前がアンゴルモアと居なくなってから爺ちゃんに追われてよぉ。ディアリオさんに会わなかったら死んでたかもだぜ。
「ディアリオという名の赤ん坊なら会ったでありますよ。この世界に送って貰った勇者様がディアリオを別世界に連れて行ったであります」
ん? ってことは、ディアリオさんと入れ違いでこの世界に戻ってきたのかピスカ?
「はい、そうでありますよ。それまでは異世界の地球という所で武装を変えて貰っていたであります。あと夢の島だか悪夢の島だか? でレベル上げ、というのを体験していたであります」
あー、それでピスカのレベルがおかしなくらい上昇してたり武装が無駄に強化されてたのか。
まぁ御蔭で坂上に苦戦することなく撃破できたからいっか。
「そうであります! ご主人様聞いてください。アンゴルさん酷いんでありますよ。しかも向かった先では勇者の群れが襲いかかって来て何度殺しても教会で復活してくるのでどんどん数が増えていくであります!」
うわー。それはちょっとキツいな。
どれだけ倒しても蘇って来るうえに遠くに居た勇者たちが時間を追うごとに合流するんだろ。
こっちは残弾がなくなったら終わり、俺だったらまず間違いなくパンデミックしてるとこだよ。
今だったらタルタロスラビットかな。
神から呪い受けるかもだけど、そうしないと生き残れないしなぁ。
最悪神を殺すつもりで全力の抗いを見せるしかあんめ?
―― あんめ、じゃないわい。止めてくれんかの冗談でもそんなこと。ピエロ君みたいな結果は御免被るのじゃ ――
なんか変な声来た。
「ご主人様はどうでしたか?」
そうだなー。いろいろあったぞー。
爺ちゃんに追われたろー。ディアリオさんに会っただろー。レッセン王国で妻が出来て屋敷も貰ったんだよー。それからー、S級冒険者に襲われたりー、ワールドエネミーに進化してみたりー。魔王と闘ってみたりー。かと思ったら魔王が吸収されて坂上が強化されたりー。
「大変だったでありますなー。でも、私が戻ってきたからにはこのピスカに全てお任せあれ、でありますよ。当然。夜も、であります。いやん、言っちゃったでありますよぉ」
くぅ、なんて従順なメイドさんなんだ。
これはもう夜までなんて待ってられるか。今すぐにでも……
―― ウサギ君生きてるー? そっちどうなった? できれば助けてー ――
うわっ!? 滅茶苦茶リラックスしてたからびくっとなった。
今の念話はボルバーノスさんか? いや、話の感じからするとゲスター君だな。
「どうしたであります?」
いやー、魔王戦坂上戦が終わったことで緊張の糸切れちゃってさ、別働隊のこと忘れてたわ。
「ああ、まだ仲間が居るでありますね」
悪いけどピスカ、手伝ってくれるか?
「当然であります。ご主人様は一言、こう言えばいいのです。ピスカ、敵を排除せよ、と。それだけでピスカは張り切るでありますよ。魔王城なんて粉みじんであります」
いや、粉みじんにされると仲間が、ね。まだ中にいるんだよ。
とりあえずアーボを拾い上げて飛翔する。
ピスカにはサタニアーナを背負って貰う。
さぁって、大物は撃破したし、残敵討伐と行きますか。
ピスカが居るならもはや負ける方が難しいぜ!




