ウサギさん、魔王対七つの大罪３
フラッシュラビット、電光石火ッ！
光のように駆けるウサギさん。
魔王の股を潜り抜け後ろへと向かう。
クソ、やっぱり股潜りじゃ死ななかったか。
剣を振り下ろした魔王は全く気にした様子もなく振り向き、ノーモーションで飛んで来た。
なんだその長距離移動！？ 一度蹴っただけであとは蹴った体勢のまま滑るように俺に向かって飛んで来たのだ。ちょっと怖かった。
光を残してウサギさんも駆ける。
魔王の間を縦横無尽に光が走り去る。
魔王も追っては来るものの、やはり光より早いフラッシュラビットの動きには付いて来れてないらしい。
「なんだあれ……」
「考えるなパオ。ああいうモノだと思った方がいいわ」
「いや、まぁ、そうなんだけど、ローエン、なんかちょいちょい女性っぽい口調になってない？ むしろオネエ？」
「何を訳の分からないことを言ってるんだ。それより、援護くらいはしてやれ」
「了解ネ 空掴み行っとくヨ」
おっとまさかの援護くれるのか。アトエルト、フォローしといてくれよ。
「真空斬ッ！」
「飛ぶ斬撃か！」
避けようとした魔王に空掴みが襲いかかる。
びくんっと動かなくなった魔王。
って。待て、俺も動かなくなってんじゃん！？
やべぇ、斬撃の範囲に俺も入ってんですけど！？
畜生、ハイリキッドラビット進化！
進化した直後、ストナの斬撃が襲いかかる。
あ、ダメだ。大ダメージ喰らった。これ光属性だから魔法属性もついてるやー、げふぅっ。
「くぅ、味方諸共攻撃とは。だが、ウサギに今のは耐えられなかったのではないか？」
と、魔王がウサギさんを見る。
しかし、そこにウサギさんは居なかった。
隠蔽スキルで既に移動中だぜ。
おいパオ、お前後で覚えてろよ。絶対ダブルピースさせてやるからなっ！
「落ち付くねウサギ。あたし悪くない。ローエンがやれって言った！」
「オイ、俺を巻き込むなっ！？」
「遊んでる場合か！ 来るぞ！」
「ウサギは死んだか？ いや、そこか！」
隠蔽はやっぱバレるか。
無音歩行も付けたのに普通に見付けやがった。
多分だけど看破スキルか何か持ってるな。
仕方ねェ、なら、これだ。
アーボ、合わせろ！
アーボが驚いたジェスチャーしてるが無視だ。
あいつはやれといったらやってくれる。
それくらいの実力はあるから安心して任せられる。
「ふはは、生きていたかウサギっ！ だが、随分と満身創痍だな？」
そりゃそうだろうよ。
今ガッツ掛かってＨＰ１だもんよ？
すぐに回復アイテム使って傷を直してＨＰ全回。
ヒヒイロウサギ、限界加速、突撃じゃーっ！！
ガッツが既に使用済みだから次喰らったら死ぬかもしれない。
でも、ヒヒイロウサギならダメージ喰らっても一撃は耐えられることは実証済み。
貫通しまーっすっ！
振り上げた魔王が剣を打ち降ろす、
俺はその剣に切り裂かれながら飛び上がる。
驚く魔王。剣の上を駆け寄って来るウサギに戦慄を覚える。
剣を持ち上げた瞬間、俺は親指を隠す。
親指、消えまーす！！
「なにぃっ！？ 親指が消えたァッ！？」
いや、効くんかーい！？
モノは試しとやってみたけどこのスキル意外と使えるな。っていうか魔王にも効くスタン効果スキルって何気に凄くね？
よし、行け、アーボ！
真後ろから、神殺之槍を使用した必殺の一撃が硬直した魔王に放たれる。
ぎりぎり硬直の解けた魔王が逃げようとした瞬間、前方にウサギさん。
そして使用されるは……聖槍流星群！
「なん、だとぉっ！？」
逃げようとした魔王は前から出現した無数のロンギヌスに一瞬止まる。
そこに背後からの一撃が背中を襲い、衝撃で前に出たことで無数のロンギヌスに突き刺さる。
「ぐがああああああああああああああああああああああああっ」
はっはー、魔王の串刺し一丁上がりだぜぇ！
着地した俺は魔王の隣でアーボとハイタッチ。
よくやったアーボ。俺達の勝利だ！
「待て、まだだッ！」
ローエンが叫ぶ。
俺とアーボが声に反応するより早く、魔王から衝撃波が全周囲に弾け飛ぶ。
アーボが吹っ飛び壁にめり込む。
俺？ 秘密結社時代から敵を倒した後こそ気を付けろって言われてるからな。
ちゃんと物質透過しといたさ。
「ガアァッ！ 我が、我がこんな奴らにぃぃぃッ」
よろめきながら血走った眼で俺を睨む魔王。
まだ死んでねぇのか？ ロンギヌスどんだけ喰らったと思ってんだ？ しかもアーボの一撃喰らってんだぞ！？
魔王はよろめき、倒れ、必死に立ち上がろうともがく。
しかし無数の槍に貫かれた彼はやがて力尽き……
ステータス確認。ＨＰはどうなってる？
ちゃんと死ぬんだろうな？ アイテム入手がまだ出てないぞ！？
ん？ おい、待て。
なんだこの……第二形態って……？
