ウサギさん、魔王対七つの大罪2
「ふん、何を狙っているかと思えば、こやつのことなら気付いていたぞ。何やら危険な武器を持っていたからな」
がぁ、神聖武器が裏目にでとる!?
アーボがえーっと大げさに驚いてるけど、お前魔王目の前に居るのに余裕だな?
しかし、あの感じからして魔王の奴危機察知能力も高そうだ。
アーボの一撃は隠蔽からの忍びの一撃。
死角から放たれ、俺の引力で引っ張られ体勢崩した瞬間の致命的一撃だった筈だ。
アレを避けるのは相当だぞ?
「邪魔だ黒いの! ん? 黒い? なるほど、こやつの一撃が貴様の狙いだったか」
俺の宣言覚えてたのか。クソ、悔しいけどその通りだよ。
仕方ねェ、アーボ、フォローよろしく、出来るだけ俺が前に向かう。刺せそうならぶっ殺してくれ!
「さぁ来いウサギ! 手数の多さは凄まじいな! 楽しくなってきたぞ!」
俺はアーボと連携しての攻撃に切り替える。
魔王は遊んでいるつもりらしく動くのをやめて俺とアーボに接近戦を挑むつもりらしい。
仕方ない。高速移動されるよりはマシか。その誘いに乗ってやる!
アーボが槍を使って闘い始める。
無駄の無い動きなはずだが、アーボ自身がコミカルに動くせいで隙だらけにしか見えない。
でも、魔王はソレをチャンスだと反撃したりはしない。
なぜならアーボのアレは演技だからだ。
コミカルで無駄だと反撃に転ずれば、その隙を的確に見抜いて襲ってくるのが今のアーボ。
ちょっと見ない間にまた腕上げてやがる。
何時練習してんだあいつ?
「くぅ、この黒い魔物、やりおる!?」
魔王が呻く。
アーボの実力、魔王に匹敵してんのかよ!?
畜生羨ましいな。俺、魔王にやりおるとか言われてないんだが?
アーボの槍連射。無数の残像と共に槍が突く突く突く!
魔王はこれを時に避け、手で払い、受け流す。
上手い、なんか二人の演舞見てるみたいだ。
いや、演舞って。絶対魔王手抜いてるだろ?
ってことはアーボの実力でも魔王相手には届いてないってことか。
ワールドエネミーになったから俺も最高種の一人、と思ってたんだが、魔王の実力見せつけられるとさすがに天狗になってたんだなぁって思わざるをえないな。
何しろ俺らがスキルガチガチでステータス上昇させてなお魔王の素の実力に届いてないのだから、魔王が本気出してステ上昇スキルとか使いだしたらどうなるんだって話だよ。
だが、今なら届く。
アーボも健在、俺もいろいろ奥の手を隠したままだ。
これなら、やれる!
電光石火!
「来るかウサギッ」
突撃、からの大ジャンプ。ドロップキーック!
「甘っ!? なんとぉ!!」
俺の一撃を受け止めようとした魔王。
その足元に転がったアーボが唯一の武器であるロンギヌスを投げたのだ。
ぎりぎりで回避して見せる魔王。
そこで俺の必殺、テクニシャンによる、投擲っ!
ドロップキックから魔王の腕を足蹴にして飛んで行くロンギヌスを絡め取る。アイテムボックスに一旦しまい、取り出し際にアーボ向けて投擲。
当然、射線上にいた魔王に直撃コースの一撃だ。
「がぁっ!?」
初めてのダメージ。
アーボのロンギヌスをテクニシャンスキルで投擲返し。そのクリティカルヒットが魔王に直撃した。
背中に槍が突き立ち思わず呻く魔王。
慌てたように俺達から飛んで逃げる。
「何が……ばかな!? 避けた筈!?」
ぬはははは、余裕ぶっこいた罰じゃーい。
「やるではないか! ふふ、ダメージを受けたのは久方ぶりか。しかも、かなりの痛手だ。我もまた魔王という実力に胡坐をかいていたということか。よかろう。我も遊びは終わりにしよう!」
あ、やっべ、遊び気分吹き飛ばしちまった。
アーボ後頼んだ!
あ、こら、嫌じゃーっじゃねーんだよ!?
逃げようとするアーボを両手で掴んで前に押し出す。
するとくるっと位置を入れ替えるアーボ。なんと俺を前に押し出しやがった!?
ええい、お前がやるんだよっ!
「何を、しているんだ?」
折角やる気になった魔王。
しかし、目の前で繰り広げられるのはどっちが魔王の犠牲者になるかの押しつけ合い。
必死に相手を前に押し出しては、そうは行くかと位置を入れ替え逆に相手に押し出されるを繰り返すうさぎさんとアーボであった。
「ええい、ふざけているのか!」
そうさ、ふざけてるのさ。これが俺の戦闘スタイルだったんだよ。真正面から打ち合うとかバカのすることだぜ。だってこの魔王ゴブリンキングやオークキングとは全然別格だもんよ。
ゆえに、相手を怒らせ萎えさせ隙を突く。
それが俺の本来の戦闘スタイルだぜ。
「ええい、こちらから行くぞ!」
焦れた魔王が高速移動。
俺はアーボを蹴り転がしてバックステップ。
魔王はアーボを放置して逃げた俺に突撃して来た。
手には巨大な剣。ドクロを柄にあしらった大剣で形状的には青龍刀が近いだろうか?
少し曲がったような剣先の俺よりも数段巨大な黒色剣。
こんなもんでぶった斬られたから即死案件だろ!?
まぁ、斬られる気は無いんだけどな。




