ウサギさん、馬鹿な!? ディアリオさんが失踪、だと!?
「おい魔王! ウサギが出たって聞いたぞ! 何処だ!」
「ビッグなアレを持つウサギは何処だー! 儂のもんじゃーい」
なんか変なのが二人来た。
魔王が凄く面倒臭そうな顔をする。
「今闘っているっ。邪魔をするな」
「闘ってる!? バカなのか? ウサギだぞ! テメェのバカ力で闘ったら即死だろォがよ! 俺の一部にするンだから殺したらダメだろ。アイテムじゃ出てこねぇんだぞ!」
「そうじゃそうじゃ! 儂の……お、アレがウサギじゃな。鑑定鑑定。間違ってはおらんはずじゃ……ダーリンっ!?」
なんかめっちゃ可愛らしい魔族っ娘からダーリンと呼ばれたんだが。
白髪赤眼の額に一対の小さな角を生やした、モノクルを片目に付けたイカっ腹娘だ。
襲っちゃって、いいのかい?
「アホなこと言ってる場合か! 魔王は今攻撃の手を止めてるヨ! 畳みかけるネ!」
畳みかけるも何もパオさんや。あいつ余裕ぶっこいてるだけだって。
俺ら指先一つでパチュンよ?
これはもうディアリオさん案件だって。
―― ウサギさん、聞こえる? ――
おっと、この念話はカルセット君か?
突然どうした? でも切羽詰まった感じがないから急ぎって訳じゃなさそうだ。
んじゃ、軽口で返すのがご挨拶だよな?
―― はいはい、あなたの愛人ウサギさんでぃす。カルセット、抱かれたくなった? ――
――誰がだよっ!? 違うからっ。って、そうじゃなくて、ディアリオさんと連絡取れないんだけど、そっちから取れる? ――
なんだよノリ悪りぃな。
そこはうん抱かれたく……なるわけないでしょっ! くらいのノリツッコミをしてほしかったぜ。
えーっとディアリオさんね。ディアリオさ……あ、魔王と眼が合っちゃった。
―― ディアリオさんと? ちょっと待って今魔族の兄ちゃんと追いかけっこ中だから。あ、らめぇ、そんな魔法は避けきれないのぉっほぉぉぉ ――
魔王の放った魔法と思しき一撃が俺に直撃する。
速度速すぎだぜ。物質透過がなかったら危なかったな。
「馬鹿な!? アレを避けた!? いや、透過したのか!? 面倒なウサギだっ」
ありゃ、ほんとにディアリオさんと連絡取れないな。何かあったかな? 誰か暇人ディアリオさんのいるレッセン共和国行って来てくんね?
って、やべぇ、あの魔王滅茶苦茶連発してきやがった。転移っ!
―― あ、じゃあチョコミントさんに頼んでレッセン共和国行ってくるよ、多少時間掛かるけどいいかな? ――
了解、任せた。ディアリオさんだから問題ないと思うけど……
と念話しつつ、変な二人組の場所へと転移。
魔王が勢い余って一発こっちに魔法撃ちだして気付いた。
あ、やべ!? みたいな顔をする。
という訳で貫通しまーす。
―― なんじゃ、ディアリオを探しとるんか? ――
「うわっ!? あぶねぇじゃねぇか魔王! 俺らを殺す気か!?」
「すまん。しかし出て来なければよかったではないか。お前らのせいで攻撃しにくくなったぞ」
え? なんだ? 神か?
今めっちゃ立てこんでんだけど、二つの事同時進行中なのにあんたまで声掛けてきたら三股よ? 俺そんな一気になんてぇ、無理ぃって、ぎゃあぁ!? 何そのデカいの!? 無理だってウサギさん丸焼きになっちゃうぅっ!?
―― ディアリオなら別世界の勇者がこっちに来る用事があってな。せっかくじゃし居場所教えてやったら夢の島に連れてくって言っておったぞい ――
なんだそりゃ? とにかくこの話をカルセット君に伝えておくか。下手にディアリオさん探しても可哀想だし。
―― なんか、こっちの世界に用事で訪れた別世界の勇者? がディアリオさんを夢の島連れてったって言ってんだけど? しばらくディアリオさんと念話できないんだと。マジか!? 俺の奥の手助けてディアリオさんが、使えない、だと!? ――
今気付いた! 俺の最後の奥の手が今、封じられちまったってことじゃん!?
魔王相手にディアリオさん呼びだして最終決戦考えてたのに!
「他人任せは止めようよウサギさん……」
―― ばっきゃろー。背後にディアリオさんが控えてるから俺も安心して闘えてるんだぞー、魔王とか出てきたらどーすんだ。ディアリオさんいなきゃ勝てないかもしれんだろー! ――
まぁ、既に魔王でてきてんだけどな。
アーボの一撃がダメだったらディアリオさんに助け求めるつもりだったんだが、どうする?
アーボで止められなかったら打つ手がなくね?
最悪、七大罪系うさしゃんで奇跡に賭けるっきゃないか?
アーボは既に隠蔽使ってゆっくりと死角を移動中だ。
物影に隠れつつゆっくりと、意識が外れた瞬間素早く動いてを繰り返して徐々に近づいていっているのだ。なんであいつは塹壕作戦中の兵士みたいな動きをしてんの? それ演技? いらねぇからさっさと行けよ!
物影に隠れた後、背中向けて三角座りしてふぅっとか溜息いらねぇんだよ!
俺は目立つように避けまくってアーボへの意識を全部自分に集める役である。
そう、ウサギさんはただの避け役なのだよ。アーボ、さっさと配置着けや!
ひらりひらーりひらーりマ○ト。あ、これマントじゃなくてゴブリンの腰布だった。
ばっちぃっ。
捨てよっと。そいやー。
「ぎゃぁ!? 臭ぇっ!?」
あ、なんかやかましかった男に当った。




