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楓夏、お留守番中にやること

 ウサギたちが魔族領へと向かっていった後の事、会議が終わりS級冒険者たちが各地に散っていくのを見送り、クラスメイト組は天空城ラビット・ネストへと帰って来ていた。

 この城だけで過ごせるだけの巨大な城であるラビット・ネストは食糧こそ少なかったのだが、コロアで皆が買い溜めたことでむしろ貯蔵し過ぎているくらいになっていた。


 皆、思い思いに日々を過ごすようで、城からは出ることはしないが、ウサギが帰って来るまで城でできることをやっておくことになった。

 赤穂楓夏は暇だったのでチョコミントに城の操作を教わるというユーリンデ組に付いて行くことにしたのだ。


 今回班で分かれて行動することになったのだが、その班分けは、ユーリンデ、チェルロ、グレース、楓夏、チョコミント、そして天音と美与を含めた城操作教育組。

 イルラ、リベラローズ、ペルセア、ジョージ、福田、葉桐はラビット・ネストの中庭を耕す農耕組。

 中井出、瀬尾、はーぴーちゃん、咲耶の何かよくわからないけどゆったり中庭ほっこり組。

 ヘンドリック、ジョゼ、セレスティ―ア、中浦は寄り集まって会話組

 真廣、雲浦、真壁、上田の四人は雲浦がなにやら行っている事に興味を覚えた運動組。

 エペ、レパーナ、スラ子、イリアーネ、カルセット、ルルジョパはやることが無いということで適当に集まって何をするか考え中らしい。


 楓夏は城操作教育組として、ラビット・ネスト心臓部にやってきていた。

 この班に付いて来たのは本来ならやることが無く、真壁と一緒の場所に行こうと思っていたのだが、真壁と真廣がどうにも脳筋タイプで互いに話がよく合うので蚊帳の外にされがち。

 本人たちには恋愛要素は皆無のようなのだが、ついついこちらで邪推してしまうのだ。

 そんな自分のせいとはいえ辛い時間を過ごすよりは、と、一度二人と離れた場所にやって来てみたのである。


 しかし、付いて来てみれば専門用語を連発するチョコミント。

 知識を焼き付けたらしいためにチョコミントと同じ舞台で会話をし始めるユーリンデ。

 付いて行けてないながらもウサギの家ということで必死に操作を学ぼうとしている天音。

 そんなユーリンデと天音を見てほっこりしているチェルロとグレースと美与。


 つまり、付いて来たはいいけど楓夏にはやることが無く、話にも付いて行けず、ただただ無為な時間を過ごす結果になっているのである。

 付いて行く場所を間違えた。

 今更気付いても後の祭りだった。


「……で、じゃな、このポルンクスタを右に2回と43°回し、左に4回と56°回した後、上に2°、下に3回と18°傾けると……」


「……なるほど、ということは、透過の際は右に1回と22°、左に……」


「なんか、これなら上昇と下降くらいなら私も出来るかも……」


 正直何が何やらわからない。

 どうもこのポルンクスタ、四方向に回せるらしく、その回転数と角度を合わせて行くことで複雑な動きができるらしい。

 基本的な動きなどはもっと簡単な動かし方があるのだが、今やっているのは緊急時、自動制御機能が使えなくなった時の手動操作の方法をチョコミントが教えてくれているのだ。

 それがこのポルンクスタを直接回して命令を与えるという方法だった。


 正直そんな状況が来るなら、ほぼ確実に天空城落とされた後だと思うので手動にする必要性も無いと思うのだが、それは言うべきではないのかもしれない。


「ああ、真剣な天音もいい……」


 うっとりとした表情で告げる美与。軽く危険人物だ。


「先輩、トイレ行きたいです」


「さっさと行って来なさいグレース」


「場所、忘れちゃったんですが……」


 トイレは一階と二階にあるのだが、地下には無い。

 迷宮と言うほどではないが、一階まではかなり長い通路なので……ああ、そう言えばチョコミントの部屋にトイレあったなぁ。


「チョコミントさんの部屋にトイレあったっしょ」


「おお、チョコミントさん、トイレ行きたいですっ」


 楓夏の言葉におお。と感心したグレース。チョコミントの会話をわざわざ止めてトイレを求めた。

 メイド、なのになぁ、と楓夏は思ったのだが、彼女はただのメイド見習いでしかないので、主人と話している相手の話を中断するなどという恐れ多いことはやらない方が良い。ということなど全く気にしていないようだ。


「おお、トイレかの。そうじゃ。せっかくじゃしアレをためしてやろうかの。ここを30°でこう、さらに3回回して3°っと。ほれ、そこに現れた光の魔法陣に乗りんしゃい」


「へ? あの、トイレ……」


 小首を傾げながらもグレースが言われた魔法陣の上に乗る。


「ほあぁ!? な、にゃにこれぇ!?」


「転移術式を使った尿意と便意を一瞬で解消する古代のトイレじゃな。ちなみに汚物は転移で外に放出じゃ」


「え? 外に!?」


「うむ。どうも魔法で砕いて焼却して噴霧上にしてから撒き散らすようじゃな」


「な、なんか嫌ぁ!?」


 涙目のグレースが股間を押さえる。

 古代技術のトイレって便利だけど人として大事な何かを失うようだ。

 これは使わないようにしよう。そう心に堅く誓う楓夏であった。

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