うさぎさん、S級冒険者会議・真2
「ロスタリス王が暴走している、といことか?」
「ああ、可能性は高い。現に既に勇者を一度牢に入れているしな。まさか拉致された王女が救出に来るとは思っていなかったらしいが。その後は俺はこっちに来ちまったからギルド経由になるが、どうやら王が率先して勇者を集め始めたらしい。まぁ、殆どがこっちに来てるし。他のメンバーは魔族領に行っちまった訳だが。どうにも王の行動が読めなくてな。アトエルト、追加情報は?」
「そうですねぇ、そう言えば、勇者たちを追って騎士団が派遣されたのはご存知ですか?」
「ああ、そう言えば俺の出発前後にそんな話があったな」
「その代表の女性騎士が冒険者共々ロスタリスから逃走したそうです。代表を失った騎士団は即座にロスタリス王国に引き返すことはなく、そのまま女性騎士を追って他国へと向かったとか」
「その騎士団、本当に騎士団か?」
なんだよマージェス君、騎士団に何か違和感でもあんの?
「ああ、ウサギは知らないか? 国の騎士団ってのは任務優先なんだ。例え騎士団長が死んだとしても騎士の命令を優先する。なのに逃げた代表が逃走、ソレを騎士団が追うというのはおかしい。騎士団ならその場で待機し国王の判断を仰ぐか副団長が指揮を取り、今回は確か王女たちに合流する、だったか?」
「だな。つまり、代表の女性騎士が逃げた瞬間、これを追うというのは騎士団じゃねぇっつーことだ」
「ええ、しかも一緒に逃げた冒険者は黒髪の女性冒険者だったそうで、コーライ村でよく見かける方だったんですよね。かなり歴戦で頭の回る方です」
「ああ、あの黒髪の女性か。となると、女性騎士は何らかの理由で彼女が騎士団から離したことになるか」
黒髪冒険者っていやぁあの女だよな多分。確か千尋とかいう名前じゃなかったっけ?
あいつ、リアに変なことばっか教えてやがるからな、いつかは御灸据えてやらないとって思ったんだよ、落ち着いたらあいつ襲いに行こうかね。
「アトエルト、お前はどう思う?」
「そうですね、状況から考えますと、騎士団ではなく暗殺班ではないでしょうか? 女性騎士はいろいろと話を聞いた限り、どうも勇者さんがたと面識があるようですし、大方彼女を道案内役にして王女と共に居る勇者を暗殺、目撃者となる女性騎士も諸共闇に葬る、なんてさすがに飛躍しすぎですかね?」
「王の心情しだいだが、あながち間違いじゃなさそうだな。二人の動向には気を付けておいてやってくれアトエルト。俺も落ち付いたら合流することにする」
「おや、クロウさんが動きますか」
「まぁ、あの女性とは色々あるんでな」
「なんだ? 彼女か?」
「違ぇよ!?」
なんだ違うのか? クロウの彼女ならターゲットから外そうと思ったのに。
「ちょ、お前、あいつまで襲う気かよ!?」
だってよークロウ、あいつがリアちゃんに大人になる方法教えたせいで俺が爺ちゃんに襲われることになったんだぞ。
「いや、それはお前が襲わなかったら良かっただけだろ!?」
いや、リアには……襲われたんだよ、俺。
「ありえねぇっ!?」
という訳で、あいつにはきっつい御灸据えてやるんだ。
「あー、話がそれてるみたいだから、戻しますよー」
アトエルトが話を強引に方向修正する。
「えー、そういう訳で、ロスタリス王国についてはひとまず現状維持、逃げた女性騎士と冒険者は私が場所を把握した後クロウ君が責任をもってウサギ君からも守るってことで」
「ちょ!? 俺だけで守れるかよ!?」
「そういう訳で、次、ストナさん」
クロウがなんか叫んでいるが皆がスルーしてストナの話を聞き始める。
「今回私が担当していたのは北側だ。エルトラン、アバランボーネ、ボザーク、アテネポリスを探索していたのだが、クロウが緊急招集して来たので一度コーライ村に向かった。ゴブリンとオークの集団戦なんて初だったぞ? 森の守護者たちと共同できたからかなり楽ではあったがな」
なるほど、ようやく分かって来たぞ。
S級冒険者が普段何をしているか。
普通にギルドのSランクの仕事しながらあらゆる国を回って怪しい動きしてる国が居ないかチェック、危険な国があったら潰すとかする抑止力をしてるんだ。
だから絶えずいろんな国を移動している。
クロウ君はなんか喰っちゃ寝してたけど普通はいろんな国を渡り歩くのがS級冒険者なのだ。
その真実が、各国の監視だったりするのがここ、コロアギルドでのSランク会議でヤバい国を報告し合っているってことである。
多分、メインは冒険や依頼より国々の監視だな。
俺が気付いた様子なのに気付いたガドウィンがほぅっと眼を瞠る。
「今の所はハーレントもゲンテウクもそこまで危険はなさそうだ」
「では北方諸国に危険な兆候は無し、アトエルト君、どうかな?」
「そうですね、ボザークは除いて北方諸国は問題ないでしょう」
ボザークは今戦争中だもんな。危険な国の一つだ。潰すんだろうか?




