うさぎさん、マーダーピエロをマーダーっちゃう
「テメェ、何逃げてんだよ!?」
失敬な。プラネットラビットに進化したら宇宙に飛ばされただけですよ。
「宇宙? ってなんだ?」
あー、そっか普通に俺たちは宇宙の概念があるから良いんだけど、この星の上って行ける存在がいないから魔物も人間も宇宙と言われても反応できないんだな。
宇宙にも魔物は住んでるけど基本そこから降って来ることは滅多にないんだろう。メテオラビットくらいかな?
「チッ、まぁいい、さっさと潰してやるからもう逃げるなよ!」
え? めっちゃ翻弄してたの俺じゃね? 潰せるとか正気か?
良かろう。ならば俺も潰されないウサギになってくれる。
タングステンラビットからさらに進化!
ニュートロンラビット!
説明しよう!
ニュートロンラビットとは進化条件が解除されたことにより系統樹に生まれたタングステンラビットからの進化先である。
もともとはタングステンラビットに成った時に、強力な衝撃で爆発経験有という条件を満たせば進化出来る個体だったのだが、正直爆発経験とか生還できないからな。
そういった条件が取っ払われたので経験値上げて種族レベルを10まで上げれば進化出来てしまうのだ。
ニュートロンラビットは身体が中性子で出来ていて……ぎゃあぁ!? なんか周囲の物体が俺に向かって来てるんだけど!?
「な、なんだこれは!? ぎゃあぁぁぁぁ!?」
いやぁ!? ギョギョン君とくっついた!?
ディアリオさんが咄嗟に皆を守ってくれたが、ギョギョン君は放置されていたので引力が働き中性子な俺に向かって超高速で突撃してきたのだ。
さらに引力がそこかしこの物体を集め始める。
あかん、中性子はアカンって。
即座にレベルを上げて進化を開始。
ヒヒイロウサギに進化したことでギョギョン君と離れることに成功した。
あっぶね、あのままだったら重力に押し負けたギョギョン君が俺に向けて潰れる所だった。
潰れたトマトが全身に掛かるより酷い結果になるとこだぜ。あっぶね。
「テメェ、よくもやってくれたな!」
あ、やべ。
真正面に来ていたギョギョン君が怒りの一撃を叩き込んできた。
マラカスの一撃が俺の頭蓋を強打する。
「ぎゃあぁ!?」
ガインっと意味不明な音を響かせ跳ね返されるマラカス。
攻撃したギョギョン君の方がダメージ受けていた。
あー、そうだった。今の俺の姿ってばヒヒイロラビットじゃん。
種族特性は時の止まった金属なので物理では傷つけられない。というものらしい。
つまり、俺の身体は実質タングステンラビットよりも堅い、と。
しかも動作に関しては普通のウサギと同じだ。
ちょっと黄金風味入った鈍い黄金色の毛並みがまた良い味だしてるな。
ふむ。これで限界加速したらどうなるかな? 今度ディアリオさんと走る時はこのウサギでやってみよう。
「畜生、こうなったら……死んでも怨むなよ!」
言うが速いか、ギョギョン君の姿が徐々に霞んで行く。
これは……暗殺スキルか!?
こりゃ下手なウサギだと殺されかねないな。
ここは、暗殺には暗殺、だな。
進化先変更。出来ればニュートロンラビットの別進化も体験したかったけど、別の機会にするとしようか。
んじゃ、変身、ハイシャドーラビットから進化、暗殺兎。
これだけじゃ不安だな。さらに経験値振り込んでラビットアサシンに進化。
折角だから最上位種まで上げとくか。首狩り兎進化。お、もう一つあった。
進化確定、ボーパルラビット。
ボーパルラビットより先はないようなのでここの進化先は打ち止めだ。
んでボーパルラビットの種族説明は? っと。
出会えば首を落とされる。何の変哲もないシロウサギにしか見えない死神ウサギ。
……一周回ってシロウサギになっちまった。
「死ねッ!」
背後に殺気。
次の瞬間、俺の身体を通り過ぎるギョギョン君の手刀。
確実に首を落とす軌道の一撃は迷わず俺の首に直撃し、通り過ぎていく。
ええ、はい、スカッと通り過ぎました。
「は、はあぁ!?」
物質透過スキルマジ重宝。
どんな会心の一撃を叩き込む暗殺術であろうとも、当たらなければ意味が無いのだよ。
アストラル系トラップみたいに霊体にダメージ与える暗殺技ならさすがにヤバかっただろうけど、そんなスキル持ってる訳ないよねギョギョン君。
んじゃ、反撃だ。
御形無常・自然一体・温音気無・ボーパルスラッシュ。
御形無常でギョギョン君から見えなくなり、自然一体で動きを自然に紛れ込ませる。
さらに温音気無で体温、音、気配を消し去る。
そして背後に回ってボーパルスラッシュ。
「あぇ?」
あ、しまった。寸止めせず普通に振り切っちまった。
というかお前マーダーピエロだろ。暗殺特化だろ!? 暗殺されてどーすんの!?
ギョギョン君の頭が落下した。え? これ、俺普通に殺っちまったのか!?




