うさぎさん、ゲスターの森6
空を埋め尽す魚の群れは未だ減らない。
というよりは次から次に増援が向かって来ている。
正直迎撃面倒になってきた。
なんっつーかこう、ドバッと倒せる大技ないかな?
空掴みのパオが底引き網漁みたいなことしてるけどそれでもまだまだ敵は減らない。
クロウ、さっきのもっかいやってくれよ。
「一日一回が限度だよッ」
八つ当たり気味に叫ぶクロウ。
アーボが使ったせいで、唯一自分が使えるスキルだと思っていたのが根底から崩れ去ったからってこっちに飛び火しないでくださいな。ざまぁ?
「テメェ……」
はっ、殺気!?
転移した瞬間、俺を掴もうとしたクロウが頭の上に手を向けて空を切る。
その真上を何かが通り過ぎた。
……宝箱?
「クソ、外したにゃっ」
声がした方を見れば、投擲姿勢でこちらを睨む猫娘が一体。
おお、猫娘だ!? 四肢が人間のように二足歩行になった獣人型の女の子だ。
っていうかお嬢さん、今クソッとか舌打ちしました?
女性としてはそう言うの使っちゃはしたないよ?
「死ね、クソウサギッ!」
うおぉっ!? ソニックスラッシュって奴か?
爪の一撃が振るわれ、衝撃波が俺に向かって来る。
なんでそんな殺気立ってるんだ?
まさか、こいつがウサギ殺し!?
「まさかこんな場所で会うとはなぁ、ここであったが百年目! テメェを去勢してやんにゃ!」
おいおい、相田……じゃねぇ!? ステータス確認したらこいつタマだ!?
ディアリオさんに消し飛ばされたんじゃねーのかよ!?
「なんだ、知り合いか?」
お前らS級冒険者と共に俺を殺しに来てた魔物の一人だよ!
「チッ、人間共はテメェーについたか。それにクソウサギ、テメェ、雌ならなんでもいいのか!? 俺は元雄だぞ? 分かってんのにゃ?」
「あー、こいつ元男だったハーピー襲ってるからすでに経験済みらしいぞ。襲われたくなければ逃げとけ。俺らはアレの迎撃で忙しいんだ」
「知るか! ウサ公見付けちまったら殺すしかねぇにゃろ! よくも俺らを殺してくれやがったにゃ!」
よかろう、ならば戦争だァッ!
女に生まれ変わった事を喜べるように人生観変えてやんぜッ!
タマに向き直った瞬間。危機察知が仕事した。
脱出スキルで転がるように避ける。
「くぅ、不意を付いても躱すか!」
背後から女性の声。
転がった後に視線を向ければ、宝箱からこちらを覗く女性の顔。
ステータスを見れば、狒狒爺!? マジかよ!?
お前ら記憶持ったまま転生しちゃったクチか。しかもこんな場所とはな。
近場ッちゃ近場だな。
「ミミックレディにワーキャットか。今は闘ってる場合じゃねーんだが?」
「それこそ私どもには関係ありませんな。この森を守る意義もないしのぅ」
「つまり、ウサギさえ殺せりゃ俺らはなぁーんの問題もないにゃ」
というか、さっきから語尾が気になるんだが?
「煩いにゃっ、この身体になってから語尾がおかしくなってるんだにゃっ」
「多分ワーキャット特有の種族スキルだろうな」
嫌なスキルもあったもんだ。
俺からすればワーキャットのお嬢さんが語尾ににゃを付けるのはむしろバッチコイだけどな。
語尾付けする本人からすればいらないスキルであるのは確実だった。
「クソウサギ、テメェーも一度死んで俺らの苦しみを少しでも知るにゃ!」
既に一回死んだからもういいよ、ようやく巣穴が出来て守護者になろうかと考え始めた時だっつの。
テメェ―ら纏めて俺の女にしてやるから覚悟しろッ。
「馬鹿っ、今はそいつらに構ってる暇ねぇーっつってんだろウサ公ッ!?」
やらなきゃやられんのは俺だろが。
あの時の狒狒爺とタマ相手なら確実に殺されてただろう。でも転生でレベルが1に下がっちまったお前らは幾らレベル上げようと俺の所まで這いあがれる訳が無い。
スキルだけで俺を倒せると思うなよッ。
「行くぞタマ!」
「任せるにゃ!」
ウサギVSワーキャット&ミミックレディの闘いが始まった。
突撃を開始するワーキャットと補助魔法を唱え始めるミミックレディ。
ワーキャットのステータスが上昇して行くが、俺の上昇力よりは弱くね?
死者への誓いだけで圧倒出来そうな気がする。
でも、例え獅子を相手にしようともウサギさんは常に全力。
ゆえに全力で相手してやんぜ!
「いいかタマ、奴は女相手なら触れただけでオトす能力を持っている。決して近づかれるな!」
「近接戦闘に無茶いうにゃ!?」
突撃しようとしたタマが慌てて距離を保ってソニックスラッシュ。
ひょいっと避けたウサギさんにミミックレディからの魔法が飛んで来た。
あっぶね!? ただのファイアーボールかと思ったら螺旋描いて超高速で襲いかかって来たのだ。やっぱ狒狒爺はオリジナル魔法編み出してやがるな。気を付けねぇと




