うさぎさん、ゲスターの森3
「この森、事前に聞いてた出現魔物と違くね?」
「確か動くミミックとかワーキャットとかウサギの群れが居たんだよな?」
「目に付く魔物全部空飛ぶ魚介類なんだけどもっ!?」
「ああクソ、こっちまで回って来たぞ!」
「丁度良い、Sランク冒険者ばかりの闘いで見学は暇そうだと思ってたんだ!」
クラスメイト達が円陣組んで迫る魔物達の迎撃を始める。
ボルバーノスさんとディアリオさんがいるからよっぽどのことがあっても安心だ。彼らについては好きにやらせるとしよう。
「変だな。あんな奴らは報告に無かったぞ?」
―― そりゃあそうさ。今他の森から襲撃受けてる最中だもんよ ――
うおっ!? 誰だ今の念話っ!? あそこか!?
念話が来た方角を見てみれば、そこにはどろっどろのなんかやっべぇのがいらっしゃった。
茶色の水溜まりから坊主頭の巨顔な生物が浮上し、空洞の目と口だけをこちらに見せてる……液状化した埴輪っぽいのがいらっしゃった。
―― やぁ、皆のトモダチ、マッドクラッターのゲスターだよー ――
やっべぇ、ボルバーノスさんが二体に増えた!?
―― ちょっとウサギ君、どこが僕なのさ!? ――
―― ほんと失敬だねー。僕がそこの蜘蛛と同じ? 冗談じゃないよ ――
あかん、本当に二体に増えたようにしか思えねェ!?
「それで、マッドクラッター? マッドゴーレムじゃないのか?」
―― ああ、少し前に進化したんだよ ――
「そうか。それで? 先程襲撃されていると聞いたが?」
―― あれ? 知らない? 守護者の森って他の守護者の森から頻繁に襲撃されるんだよ? 皆領地は多めに欲しいでしょ? ――
ああ、そういえば昔そんなこと聞いた気がするな。
―― おいおいウサギ君、教えなかったっけ? ……しかし、君の森から反撃が見られない気がするよゲスター君。どういう状況? ――
―― ウサギ狩りにやられてね。さすがに攻撃したら反撃されるみたいでパリィングアーマーもやられちゃったんだよねー。今生存してるのは僕に従う気配の無いワーキャットやウォーキングミミック系だね、というわけで助けてくれると嬉しいなー、なんて ――
うっわー、他人任せだ。
でも原因が原因だけに助けない訳には行かなそうだなぁ……
「これも仕事さウサギ君。準備はいいかい?」
「さぁって、久々に全力出せるな」
え? クロウ君、俺相手に全力出してたし久々じゃなくね?
「ばっかやろう。知り合い相手に本気だす訳ねーだろ」
「というよりも、本気出す前に倒されてなかったか」
「……気のせいだろ」
「しかし、空中戦か、空飛べないから面倒なんだよな」
「空飛べてもこう多いと集中砲火だぞ?」
S級冒険者どもは落ち付いてるな。
基本ドランクが魔法で迎撃。リクゥーがブレス、べルクレアが投げナイフで迎撃している。
他のメンバーは見学か? と思えばマージェスが空高く何かを投げ、それが光を発して空に浮かぶ魔物達を襲う。
おいおい、あいつケミカル系の毒とか散布する攻撃だろ、大丈夫なのか?
え? 大丈夫? 人間には問題ない毒だから? 魔物には猛毒? う、謀ったなぁ!?
―― ボルバーノスやゲスターがいるのだから魔物にも配慮してほしいところだな小僧 ――
おお、流石ディアリオ先生。
マージェスのクソ野郎、覚えとけよ。俺ら魔物組の怒りを買ったからな。アーボ、あいつの尻に特大のロンギヌスブチ込んでやれ!
って、驚く必要ねーだろ。他人任せ反対? 俺がやっちまったらもう、チョンよ?
それにしても、さすがS級冒険者だな。ストナは斬撃飛ばしまくってるし、クロウは武器を投げている。神聖系武具を惜しげも無く投げてるから俺のロンギヌス連射と威力自体はそんなに変わらんな。
アトエルトも武器を弓に変えて数千人規模で一斉射してるし、マイケルは爆弾抱えてコルトエアに投げ飛ばして貰って自爆。
あいつ、俺を恐れてる癖に自爆は恐れないのな。
というか、今まで一言も喋ってなかったから気付かなかったが、マックスだけじゃねぇ、ローエンもちょっと女っぽい動きになってるぞ!? ディアリオさんによって男としての象徴を取り戻したはずだが、それまでの時間で既にニューハーフっぽい仕草を覚えてしまったようだ。
まぁ、こいつはどうでもいいとして、俺と敵対してた時からしても、桁違いに頼りになるのが、あいつ、だよなぁ。
点穴のパオ・クゥエン。こいつの空掴みは空を泳ぐ魔物達からすればチートとしか言いようのない理不尽型の攻撃だ。
何しろ何もない場所掴むだけで空気ごと掴み取って投げ飛ばされ、地面に叩きつけられるんだぜ?
空気固められるから身動き一つ取れなくて、離れた場所に居るパオに投げ殺される訳だ。
正直チートすぎてやっとれんわい。
S級冒険者たちの桁違いの殲滅速度に、クラスメイトたちもユーリンデ達もただただ唖然としている間に空に浮かぶ魔物達が片付けられていく。
新人となるエフィカとリルハも活躍していた。
ただ、二人にはこれといったチートスキルがある訳ではなく、レベリングで強化されただけの一般冒険者。
近づいて来た魚系魔物を拳一つで爆散させているものの、殲滅力からすれば、べルクレアにすら劣っていた。頑張れ二人ともー! え? なんだよクロウ? 俺も働け? 面倒くせーなぁ。




