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うさぎさん、Sランク冒険者会議10

 さって、ではでは、改めまして。

 このたびS級冒険者の一席に名を連ねることになりました。うさしゃんです。

 新人ですのでご迷惑をおかけするかとは思いますが、先達の方々には冒険者としての心得などを教えていただければと思います。

 ええ、ギルドに罰則を受けないために。


「それはお前襲って罰則受けた俺らへの嫌味かコラ」


 はっはっは、なんのことやらわかりませんなぁクロウせ・ん・ぱ・い。


「この、ウサ公……」


 クロウがイラッとした顔をするが、皆の手前俺への攻撃は出来ない。

 どうせ首根っこ掴んでぷらーんする気だろ。絶対やらせないからな。

 むしろやったら頭の上で粗相してやる!


「クロウ君、抑えなさい。ウサギ君も挑発しない。自己紹介はこれでいいね。形式的だがこれで君たち三人はS級冒険者の仲間入りだ。さっそくだがこの場の全員に新人研修として依頼を受けて貰う。

少し前から議題の一つとして温めていたのだが、折角S級冒険者がこれだけそろったのだ。マイケル君たちも過去のことは水に流して同じギルドの冒険者同士仲良くしてほしい」


 ガドウィンに言われ、お手上げするマイケル。

 その視線は未だに俺を見ようとしていなかった。

 恐れすぎだろ。そんなにウサギさんが怖いのかね。


「マイケル、あの戦いの後、ウサギ見るのも怖いなってるヨ」


 パオの言葉にマイケルにはウサギのトラウマが出来たらしいことを知らされた。

 だから、どんだけウサギに怯えてんだよお前はっ。

 S級冒険者だろうが! しかも死なないんだろあんたっ。


「いやぁ、あの後から目に入るウサギ全てが凶悪な気がして……もうウサギ狩れそうにないっす」


 マイケルの心の傷はあまりにも深かった。

 お、俺のせいじゃないよ。俺のせいじゃないからな。

 そ、それで、ガドウィン、依頼の内容は?


「あ。ああ。それについてはアトエルト君、頼む」


「ええ。皆さんカントロノアは知ってますか? ここコロアの南に位置する国なのですが」


 本来のS級冒険者たちはコクリと頷く。

 しかし俺達新人と勇者組は初めて聞く国に首を横に振った。


「内陸の国です。コロア、ピーザラ、ヘクルポリス、キューロン、はとぽっぽぽっぽに囲まれた……あの、皆さんなぜ笑いだすんです?」


「き、気にしないでください」


 勇者たちが急に笑いだしたので気になったらしいアトエルトだが、俺には分かる。

 唐突に国の名前にはとぽっぽとか出てきたらそりゃ笑うよな。

 だって日本人だもの。シリアス顔ではとぽっぽぽっぽとか言われたら笑うわっ。


「それで、そのはとぽ……じゃなかったカントロノアがどうしました」


 このままだと皆がヤバい、と気付いた中井出が慌てて続きを促す。はとぽが出て来る辺りお前もツボってるな。よく笑いを我慢したよ。


「ええ。カントロノアのギルドに依頼がありまして、最近ウサギが見当たらないので異変が起きてないか調べてほしい、とのことでした」


 ウサギが?


「冒険者を募り調べたところ、とある一団が不思議な証言を持って来たのです」


 皆、ここからは遊びで聞く訳にはいかない、と笑いを鎮め居住まいを正す。


「曰く、ウサギだけを狩る魔物が発生している。一度遭遇したが自分たちは襲われることなく近くに隠れていたウサギだけを的確に狩り取ったそうです」


 おいおい、まるでウサギに恨みある魔物の犯行みたいじゃ……

 ……いや、まさか、なぁ?

 ディアリオさん、ボルバーノスさん、どう思う?


 ―― ふむ、我は想像通りだと思うが? ――


 ―― 偶然にしちゃ出来過ぎじゃねー? 君が倒した後から発生したんだろー? ――


「とはいえ、その冒険者たちは日頃から偽証報告などを行っており信頼性が乏しく、しかし妙に切羽詰まっていましたし、前日までの彼らからすれば凄い焦燥具合でしたので、あるいは真情報である可能性も高いのでは、と皆に依頼を出してみようと思った次第です」


 なるほど、確証はまだ無い訳だ。

 でも、可能性は高い、と。

 奴、なのかなぁ。いやだなぁ。まだアレと闘うのかよー。


 あ、そうだ。ジョゼ。早速だけどアレ使う用意頼む。

 俺はジョゼにだけ念話連絡をしておく。

 ジョゼは不敵な微笑みだけで返して来た。

 多分理解したってことだろう。


「では、本日の会議はこれで終了する。残りは新人研修が終わった後、でいいな?」


「了解」


 え? これで終わりじゃねーの?


「毎年その時期までの報告を一人一人上げねーといけねぇんだわ。長くなるし、専門用語とか多いからな、新人がいる場合は研修受けさせてある程度慣らしてから発表会になるんだよ。まぁ、今日はこれで終わりだ。明日の朝早くにアトエルトを迎えに寄こす。カントロノアに行くから用意しとけよ。あと天空城は使うなよ。研修にならないから」


 えー、メンドクサイ。城でぱっといって森ごと焼き払っちまおうぜー。

 あいたっ、ちょ、ボルバーノスさん、嘘、嘘です。守護者の事考えますって。マジで。許して、ウサギジョークだよ。ジョーク。

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