うさぎさん、Sランク冒険者会議8
あ、でもさ真廣、お前ら以外で奴隷にされた奴がいるかもしれなくね?
新しく尋ねて来た勇者を奴隷化してる、みたいな?
「いや、それはないだろう磁石寺。よく考えてくれ。全員の名前と現在地だ」
「参考までに最初に決めた班を教えておこう。1班、坂上博樹、相田勇作、鏡音孝作、福田孝明、田代康弘。2班、中井出勧、瀬尾祷、ジョセフィーヌ・ラングウッド、木下麗佳、戸塚葉桐、イルラ。3班、高藤桃瀬、九重西瓜、二階堂ロア、戒涙亞、河井稲葉、天竺郁乃。4班、桜坂美与、夜霧天音、雲浦兎月、ヘンドリック・ワイズマン、ジョージ=W=ロビンソン、東雲咲耶。5班、元道真廣、赤穂楓夏、真壁莱人、上田幸次、ルルジョパ、中浦沙希だ。イルラ、天竺、東雲先生、中浦は6班だったが、途中で別れて別班に合流したらしいからこれが俺達のメンバーだ」
と、中井出が教えてくれた。
えーっと、坂上は死んで、相田も死んで、ハーピーちゃんが転生して福田がアホで田代がデブだったな。
んで、田代は桃瀬たちと合流して魔族領へ、ハーピーちゃんと福田は今目の前に居る、と。
中井出達も全員揃ってる。桃瀬たちは魔族領。天音のチームもここに居るし、真廣たちも全員集結。
おお、なんだよ、全員の居場所判明してんじゃん。
「つまり、ナリアガリッパーが未だに奴隷として勇者を手に入れているなら、可能性が高いのは坂上と相田の転生後の姿くらいだな」
んじゃ、どうでもいーか。
ディアリオさん、一応聞きますがどっちか囚われてます?
「だぁう」
―― いや、気配すら微塵も無いな、おそらくその噂はそこに居る者たちのことだろう。必死に隠そうとして既にいない彼らがまだ囚われてるんじゃないかと噂されているだけだと思われる ――
んじゃ、俺らは関与しないってことで。
「了解した。ではナリアガリッパー王国は現状維持。一応アトエルト君はそのまま情報収集に努めてくれ。いやー、君が積極的に協力してくれてよかったよ。コピー体能力持ちは貴重なうえに思考回路が特殊なのが多いからね」
あ、このスキル持ちってアトエルト以外にもいるんだ?
「ええ。昔出会った存在は一つの国を自分で満たそうとしてましてね。さすがにこれ以上は手に負えなくなる、と私が同時暗殺で全て殺しました。増殖スキル持ちは貴重ではありますが、使用者次第で世界の敵にもなる危険なスキルですからね。私のようにS級冒険者。という楔を打ち込んだりしておかないといろいろとマズいのですよ」
「国落としくらい楽に行えるからな、一人で大軍と闘えるし、力を付けた増殖スキル保持者程脅威なもんはねーよ。ほれ、お前もなんかZなんたらで増殖する存在創りだしただろ」
黒歴史だぜクロウ。
しかし、納得した。増殖系スキルはいくつかあるらしいけど見敵必殺状態な訳だな。アトエルトは冒険者としての肩書きがあるし、本人の心根が人のために動く、という思考回路だから問題視されていないだけ、ってことか。
正直俺以上にワールドエネミーとして的確なんだけどな。
―― 実際ワールドエネミー候補じゃぞ? ソイツの思考が破滅型になればワールドエネミー完成じゃ ――
うおぉっ!? ジジイ、いきなり念話送ってくんなっ!
分かってるよ。あれだろ。増えよ満ちよ蹂躙せよ。そして、世界は一つになった。で、人類滅亡エンドって奴だろ。こいつホントヤベェスキル持ちじゃねーか。バーテンやってる場合じゃねーよ。どんな最強の酒場の主人だ。
「さて、他には議題はないかな?」
ガドウィンが一段落したのを見計らい尋ねて来る。
当然のようにリピラが手を上げた。
皆、ついに来たか、と意識を整える。
視線がリピラから全て外れ始めた。
うん、お前ら絶対に自分関わりたくありませんって面だな、オイ。
「えー、では、リピラ君、だったかな。どうぞ」
「は、はいっ。あの、お父さんを正気に戻して下さいっ、このままじゃお母さんと離婚しちゃいますっ」
だから無理だって。
ほら、皆明後日の方向向いちゃってるじゃん。
「お願いしますっ。皆さんのせいで女装に目覚めたんでしょっ、なんとかしてくださいっ」
「いえ、ですが、アレは本人の趣味ですし……」
耐えきれずべルクレアが答える。
言わなきゃ良かったって顔で俯いてしまった。
「あんなのお父さんの趣味じゃありませんッ」
「そりゃ、ウサギのテクニシャンタッチ受けちまったし……」
「ウサギさんと敵対しなければこうならなかったんですよね! クロウさんがお父さんを招集したんでしょっ!」
「あー、いやー、でも、な。冒険者は依頼で何かが起こっても自己責任っつーか、その……」
「この、ひとでなしっ」
幼女から泣き顔で睨まれ憎悪の叫びを吐きつけられるS級冒険者。うん、ざまぁ。
ただ、なぁ。別に放置してもマックスの幸せは問題なさそうなんだよな。
マックスのあの姿が可愛いとかいう理由で残ってる店員居るし、あの人と再婚しちゃえばいいんじゃね?
その方がマックス的には幸せだろ。趣味に没頭できるし、妻と一緒にパン屋経営できるし。
―― だったらそれ言っちゃいなよ、ユー ――
嫌だよっ!? ボルバーノスさんが言えよー。リピラに憎悪されて罵倒されるとか俺には無理だって。




