うさぎさん、Sランク冒険者会議5
翌日、俺たちはアトエルトに導かれて冒険者ギルド会議室へと向かった。
普通はS級冒険者だけの会議なのだが、いろいろイレギュラーがあったのと、勇者の実力はこの世界の人々よりも成長が速いので、S級になるもの、と見越して、またギルド長と天音たちが知り合いなのでついでに参加しても良い、と話がきたので参加させることにした。
と、言う訳で、ついでにユーリンデたちも参加である。
ユーリンデ、昨日までちょっと危ない状況でクスリでもやってるんじゃないかと心配するほどだったのだが、今日はなんとか正常に戻った。それでも二日酔いの症状がでているらしいけど。
本当に二日酔いではなくそういう症状に似てるってだけなので状態異常とはまた別らしく、ディアリオさんの魔法でも快癒しなかった。
まぁ、ちゃんと意識取り戻せたから良しとすべきだな。
そんな訳で森に帰っちゃったルアネの姐さん以外は全員参加である。
アトエルト曰く、歩いて来る時間を考慮して、俺達の方が先に付くらしい。
途中でマックスの店に寄ってリピラと合流する。
彼女も参加するのだ。
昨日決まったことだが、父親の議題になるので本人は気合入りまくりである。
天音の横を歩きながらいろいろと語りかけている。
天音自身は引っ込み思案なはずだが、リピラの父親談義は相打ち打つだけなので会話が成り立っているらしい。
リピラは結構話し好きなタイプらしいな。
ルルジョバ辺りとなら話し合うんじゃないか? いや、あいつ特殊な陽キャだから無理かもしれん。
ウザい系に入るもんな。暇があればサンバ踊ってるし。でも、腰振り姿はエロ可愛いです。
会議室に辿りつくと、クラスメイト達用に設置された椅子の群れに彼らが座って行く。
おっと、Sランク冒険者達の名前椅子の前に書かれてるのか。
リピラ、なんか君の名前書かれてるぞ。
「あ、本当ですね。いいのかな、私S級冒険者じゃないんだけど……お父さんの代わりかな?」
それはいいんだけど俺の椅子はどこかね?
ありゃ? リルハの名前がある? こっちはエフィカ?
なんであの二人の名前が? Sランクじゃなかったよな二人とも。
ま、まぁいい、それより俺の名前だよ。
なんでないんじゃーっ。
S級として呼び出したんじゃなかったんかいっ。
「どうかしたかね?」
おい、アトエルト、俺の席ねーんだけどっ?
「ん? ああ、たしかリクゥーが自分の膝の上に座らせるとか言っていたぞ?」
マジかよ。そりゃ仕方ねぇな。
「いいのかそれで……」
「あ、うさしゃん!」
「先に来ていたのか。レッセン振りだな。私達もSランクに昇格したらしい。同僚だ、これからよろしく頼む」
お、おう。
俺が何か聞こうとするより早く、部屋に入ってきたリルハとエフィカが自分たちが昇格したことを告げて来た。
喜んで告げるならともかく、まさかの淡々と告げて来るとは想定外だ。
「これからは一緒にお仕事もできますね。あの、私達S級に成ったばかりなので、うさしゃんと一緒に仕事出来たらなって、思うんだけど」
構わんよ。しかしリルハってサポーターだったよな? S級の任務とか大丈夫?
「こいつは最近ほぼ物理で殴ることしかしてないから問題はない。サポーターという枠組みで見ていると殴り殺されるぞ」
そりゃすげぇ、リルハは小柄なグラップラーだったのか。
「ち、違うよっ!? 違いますッ。私はサポーターだからね、今回も皆の荷物持ちだからっ」
ん? 今回も?
「へ!? あ、いや、あのど、どどどどどど。どうしようっ!?」
「とりあえず落ち付けリルハ」
エフィカがリルハを諭していらっしゃる。
「一応、後で議題に昇るらしいが、新人三人に対して研修のような全員で受ける依頼をするらしい。リルハはサポーターなので皆が自分に荷物を預けて来ることを既に想定しているらしい」
俺達新人さんはSランクとしての立ち振る舞いとかを先輩方の動きをつぶさに観察することでこれからの活動に役立ててくれっていう無言のメッセージなのだろう。
それが読み取れなければSランクの資格が無いということなのだろう。
俺としては別にSランク冒険者に成っても成らなくてもいいんだが、というかむしろ強制で仕事とか面倒臭いっす。
「げっ、ウサギっ!?」
うわぁ、タラコ唇だ。
「おい、クソウサギッ、このタラコ唇どうしたら治るんだよッ!」
知るかばーか。胡散臭いんだよタラコ唇がッ。
「だぁぅ(仕方ないから我が直してやろう)」
って、ディアリオさんっ!? まさかのご参加ですか!?
ボルバーノスさんの上に乗ってるし、何時来たんだよ!?
それからそこのストナ、お前も何時の間に来て座ってんだよ!?
ついさっきまで居なかっただろ。なんで視線一度外した間に当然のように椅子に腰かけ腕組んで片足太ももの上に乗せてカッコ付けた座り方で皆を一時間前から待ってました、みたいな顔で座ってんだよ!?




