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冒険者、呪われる2

「ばかな!? 治ってない?」


 解呪を終えたリスターは、変わらぬガロンの姿に戦慄する。


「痛ぇ、痛過ぎだろォ。どうなってんだよォッ!!?」


「ガロン、落ち付け、とにかく落ち付けって」


「ふざけんなっ! 落ち付いてられるかっ、痛ぇんだよ! この痛みがお前に分かるか? なぁザイ……ザイン?」


「お、おう?」


「お前、その腕、どうした?」


「腕?」


 ガロンに指摘され、ザインは自分の腕を見る。

 赤く腫れあがった指先があった。


「な、なんだこれはっ!?」


「お、おい、ちょっと待て。お前ら二人が呪いに掛かったってことは、俺も……?」


「そりゃそうだろ。ベッツだけ呪われてないなんてありえねぇだろ」


「う、嘘だ。俺は、俺は……」


 冗談じゃねぇぞ!?

 ベッツはありえないと否定しながらも自身もまた恐ろしい呪いを受けているんじゃないかと気が気じゃない。

 大丈夫だろうか、鼻を触り、指先を確認し、赤みがないことに安堵する。


「は、はは。俺はどうやら大丈夫みたいだぜ」


「馬鹿言うなよ。いつ来るかなんて分かるもんか」


「な、何言って……いっ!?」


「ベッツ?」


「痛ぇ!? なんだ? あ、足が、つま先に痛みが……」


「そ、それ……まさか」


「お、おい、どうでもいいから俺の鼻どうにかしてくれぇっ」


 もはやパニック寸前の三人。

 打つ手も見付からず困った顔のマリルとリスター。

 解呪もダメ、解毒もダメ、もやは何が理由か分からない。

 まるで神の怒りに触れたかのようだ。


 だが、彼らが行った行動で怪しいといえばウサギの巣穴を襲ったことだけだったらしい。

 恐ろしく臭い布による被害だけでも充分なのに、これはさすがに手酷いのではないだろうか?

 マリルとリスターは三人の為に神に祈る。


「おお、我らが神よ、迷いし三人の子ヒツジにどうか救いの手を……」


「いくらなんでも可哀想です、神様……あっ!」


 祈りをささげた瞬間、天啓とも呼べる閃きがマリルを襲う。


「ステータス確認は可能ですか?」


「え? あ、ああ。ガロン、ちょっとステータス見るぞ」


 アイテムでガロンのステータスを確認するザイン。そのステータスを見て、全身が震えた。


「ぢぐじょぅ、痛ぇ……どうしたザイン?」


「なんだよ……これ?」


「何がありました!?」


「状態異常……ドクササコ」


 ドクササコ? マリルとリスターが小首を傾げる。

 彼らは毒キノコの存在を知らなかったのだ。

 だが、ヒントは出された。

 彼ら三人はドクササコという状態異常に掛かっているのだ。

 呪いの類ではない。


「理由はともかく状態異常であるのなら何かしらの対策が出来る筈です。リフレッシュでダメなら、医者に聞いてみましょう」


「い、医者? そうか、村に常駐している爺さんが居たな」


「耄碌してないか? いや、今は一刻も早く行くべきだな!」


「い、いぞごう、俺はもう限界だ」


「マリルさん、私も付き添って来ます」


「リスターさん!? わ、分かりました。こちらは私たちでやっておきます」


 マリルが教会に居残り、リスターは三人に付きそう形で村に常駐する医者の元へと向かうのだった。

 医者はこの村に一人だけ在中している。

 この世界では魔法があるため必要無い存在に思える医者だが、魔法にだって限界があるのだ。

 特に人体の回復となると、ただ回復魔法を使うだけでは傷こそ治れど折れた腕は骨がずれた状態で治癒されたり、細菌や異物を取り込んだまま治癒されることで早死にする可能性だって存在する。

 だからこそ、医者という職種が存在しているのだ。


 といっても、昔この世界へとやってきた異世界人が持ち込んだ医療技術が独自進化しただけではあるのだが。

 基本的な治療術は医療ギルドによってしっかりと医者たちに教え込まれているので耄碌していたとしてもここに居る医者の腕は確かなのである。


 魔法を使って直すのが怖い、とか、簡単な傷、風邪などの場合は村人たちも教会よりも医者に診て貰うことが多いのである。

 今回も、それなりの人々が医者の元で時間待ちをしていた。


 軽い風邪の者、軽度の傷を持つ者。皆が三人の異常な患者を見て驚き道を開ける。

 一目で緊急患者だと理解出来たのだ。

 顔面破顔状態のガロン、両手の指先が真っ赤に炎症しているザイン。歩くことすら困難になりリスターに背負われているベッツ。


 三人は驚き呆然とする患者たちに見送られながら医者の元へと辿りつく。

 そこに居たのは齢80を越えてそうな細腕のお爺さん先生。白衣を身に付けた彼は、自身が医者を欲してそうな程にぷるぷる震えながらリスターたちを出迎えた。


「ほぅほぅ、神官がこちらに来るとは珍しいのぅ」


「それだけ緊急なんですよ。この三人は状態異常でドクササコという状態に掛かっています」


 リスターが三人の状態を告げる。

 医者はほぅほぅと頷き、結論から述べた。


「そりゃ治らんわい」


 にべもなかった。

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