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リルハ、昇級

「やぁ、わざわざ来て貰ってすまんな」


 そう告げて来たのはコロアギルドの長、ガドウィンに呼ばれたのは、リルハとエフィカの二人であった。

 二人とも、リクゥーとコルトエアに対戦して貰っていたのだが、ソレを見たらしいガドウィンが二人をギルド長室に呼び出したのである。

 正直何かやらかしたのだろうかと不安しかない。


 エフィカは、大丈夫だ。どうせウサギについて聞きたいだけだろう。

 と楽観的なのだが、普通のギルド長室ならば緊張こそすれ不安はない。

 全てのギルドを統括しているコロアのギルド長だからこそ不安しかないのだ。


 見るからに硬直しきった顔のリルハを見たガドウィンは思わず苦笑する。

 そう言うつもりはないのだがね、と告げるが、リルハはよく分かっていないようだ。

 察しが悪いというよりは緊張のし過ぎで頭が回らなくなっているのだろう?

 逆にエフィカの方はやはり失態をとがめられるなどの呼び出しではないと気付いたようで、少し安堵の息を吐いている。


「まぁ、なんだ、そんなに緊張せず座りたまえ」


 ギルド長室に置かれていたソファに促され、リルハは硬直した顔のまま座る。

 身体も硬直していたようで、座り方が随分間抜けな姿だったが、エフィカもガドウィンも必死に笑いを堪えて相対するように座る。


「さて、君たちを呼んだ理由なのだが……」


「は、はいっ!!」


 肩に力を入れ過ぎているリルハがぎゅっと太ももに乗せた両手を握り込み力の限り返答する。


「その前にまず確認だ。リクゥーとコルトエアと闘っていたね?」


「え? は、はい」


 そこがまずかったのか!? といった顔になるリルハ。

 完全に思考停止してとがめられる前提での考えのため、ネガティブな考えに至っていた。

 ソレを顔で察したエフィカは詳しい説明を自分が行うことを決める。


「実際には稽古を付けて貰っていた、と言ったところです」


「らしいな。リクゥーとコルトエアから聞き取りしたところ、二人は経験不足な所があるらしいからな」


「ええ。そもそも数カ月前まではロスタリスのコーライ村でゴブリン狩りをしていましたので、経験面と言われても一般冒険者としての知識くらいしか」


「うむ。だが、実力自体は二人に引けを取らない、だろう?」


「そうでしょうか? まだまだ加減されているため勝てるかと言われると無理としか」


「だが、相手の動きは見えている。攻撃を受け止め反撃を加える余裕もある」


「それは……」


 エフィカは答えながら相手の目的を探る。

 咎めるためではないらしい。

 ならば、何を求めてこの問いを行っている?

 相手はコロアギルドの長。


 もしかして……


「一応、リクゥーさんから戦闘面については充分モノになる、と言われましたね」


「ほぅ」


 そういうことなのだろうか?

 だが、自分たちはギルドランクが駆けだしだ。

 元々奴隷身分とサポーターだったのだ。

 ゆえにランクはようやくDに上がったくらいである。


「では、こちらを」


 ギルドカードに似たモノを渡して来るガドウィン。

 受け取ったエフィカは戦慄を覚えた。


「ぎ、ギルド長、これは……本気ですか!?」


「え? え? え、Sランクギルド証!? え? 私……の?」


 二人が渡されたのは彼女達自身のSランクを証明するギルド証だった。


「今持っているギルド証は使えなくしてある。今からはそのカードを使ってくれ、すでに前の証に入っていた情報は連携済みだ」


「い、いや、可能性としては考えたが、流石に過剰評価だ! ここまでランクをあげられても期待には応えられないっ」


「成り立てだからな、不安もあるさ。だが、こちらとしてもSランク級の実力者が居るなら余らせている余裕がないんだ。どうにもきな臭い情報がそこかしこから上がって来ている。君たちには悪いがS級冒険者達と行動を共にして早急に独り立ちできる下地を作ってほしい。勝手ながら期待している」


 思わず互いに顔を見合わせるエフィカとリルハ。

 想定外のことに唖然としているリルハは既に思考停止中だ。


「しかし、本当に役に立てるとは思えないのですが」


「どうせ君たちはウサギ君と行動を共にするのだろう。なら肩書きだけでも問題はないさ。実力は嫌でも追い付いてくる。彼も、S級になっているからね。三日後のSランク会議には出席して貰うことになっているからもうそろそろこちらに来る筈だ」


「うさしゃんが、S級……」


「笑えん冗談だ。リルハは嬉しいのだろうがな」


「全くだ、あのエロウサギを頼らねばならんとは。娘もどうにもウサギ好きになっているし、部屋にウサギを飼い始めおったし、いったいどっから拾って来たんだ六匹も……」


 それ、産んだやつじゃ……思わず口にしかけたリルハはさすがに言葉を飲み込んだ。

 何も知らぬ父には真実を告げるべきではないのだろう。

 入らぬ心労を増やす必要はないのである。

 ゆえに、ありがたくギルドカードを頂戴し、二人はお礼を告げてギルド長室を後にしたのであった。

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― 新着の感想 ―
[一言] ギルド長、強く生きてください(´・д・`)オマゴサンカワイイデスネ
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