表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/981

うさぎさん、の巣穴に来た生物

 気分は酔っ払いだ。きっと路上で寝る酔っ払いはこんな気分なのだろう。

 草の地面が気持ちいい。

 瞼が自然落ちて来る。


 ガサリ、叢が揺れたのはそんな時だった。

 夢見心地だった俺はその異常事態に思わず飛び起きる。

 咄嗟に近くの茂みに隠れた瞬間、叢を揺らして出現する緑色の人間。

 いや、子供くらいのそいつは魔物。ゴブリンだ。


「ゴブ?」


 鷲鼻だ。めっちゃくちゃ鷲鼻だ。魔法使いのお婆さんみたいだ。

 頭は禿げあがっており身体は緑色。手には錆付いた斧っぽいものを持っている。

 錆付いていることからして手入れはしていないようだ。後一回振るったら折れるんじゃね?


 ゴブリンは汚い腰布を付けただけの半裸姿で現れるとごぶ? と首を捻る。

 獲物がいると思って来たけどその獲物がいなかった。とかだろうか。

 危うく見つかる所だったと安堵する俺を尻目に、ゴブリンはしばらく周囲を探っていた。


 ごぶ。ごぶ。と三体程のゴブリンが追加で現れる。

 これはヤバい。見つかったら確実に追われるだろう。

 ゴブリン達が消え去るまで、俺は気配を殺してじっとしているのだった。


 ああヤバかった。

 眼は完全に覚めちまったよ。

 今日は疲れたしさっさと巣穴に帰ろう。


 あんな危険物には絶対に敵わんし。狩られたくないからさっさと逃げるぞ。

 俺は全力疾走で巣穴へ一直線、わき目も振らずに帰りついた。

 だが、まだ混乱していたのだろう。俺は気を付けなければいけないことを忘れていたんだ。


 巣に帰りつく。

 今日は頑張った。

 頑張って食ったからちょっとでっぷりしてるかと思いきや、余りの苦さに悶絶したおかげか適度なシェイプアップが出来ていたらしい。

 良かった。野生で太るとか絶対即死フラグじゃん。

 丸々太れば食いでが上がるので様々な魔物や動物に狙われてしまう。

 これからは運動もしっかりしよう。食ってばっかりだと直ぐに殺されそうだ。


 ……ん?

 なんか巣に入った途端他のウサギたちが俺から距離を取り出したぞ?

 なんで……ああっ。そうか。さっきまで物凄いマズい草食べていたせいで自分の身体に草汁が付きまくっていたのだ。

 そりゃあ臭い。

 物凄い臭いはずだ。


 近くの泉に洗いに行ってくるか。

 他のウサギが物凄く迷惑そうにしていたので、俺は一人泣きながら水浴びに向った。

 兄弟にすら嫌われるウサギさん。この世界に来ても俺は爪弾きモノらしい。泣ける。


 自浄とか出来るようになりたい。水の魔法とか使えたらできるかな? それとも生活魔法? どの道なんとか覚えないと意味がない。

 そして魔法を使う術がない今では使えそうにもない。そもそも魔法があるかどうかもわからないし。ゴブリン居ても魔法があるという保証はないのだ。それでもあると信じたい。じゃないとMPの欄が無駄になってしまうじゃないか。


 泉に辿りつくと周囲の匂いを嗅いで天敵の有無を確かめる。

 これを疎かにすると確実に食われるから念入りだ。

 確かめ終わると俺は水の中へと入り全身の臭いを取って行く。


 と言ってもウサギの身である以上大したことは出来ない。

 水の中でも泳げなければ沈むしかないし窒息するので短時間しか潜れない。

 犬掻きならぬウサギ掻きしかできないんだよ。

 あ、でも折角四肢があるんだし平泳ぎ練習してみるかな。


 ぷはっ。あーだめだ。1分も潜ってられん。

 これも練習だな。スキルで平泳ぎとか覚えられたら水攻めに遭うような場合があってもなんとか……そんな場合あるか?

 前世じゃないんだから、任務失敗で落とし穴落とされて水攻めとかないよね。お仕置きは怖いんだよ。


 でもウサギ掻きでも頑張れば水の中でも普通に移動できるようにはなりそうだ。

 暇を見付けて水泳の練習もしておくことにしよう。

 潜水も練習すれば水中兎になることも可能かもしれないし。マリンラビットってか?


 とりあえず水に顔を付ける練習。

 そう言えばここって水飲んだりして大丈夫か?

 まさか食中毒起こしたりしないよな。そうなると俺、微生物に殺されることになるんだが。


 ああもう、今更過ぎるか。腹をくくろう。感染するなら既に感染済みである。

 あとで腹下したら泣き叫びながら薬草を食べよう。

 頼むぜ薬草さん。あとは俺の耐性力で何とかするしかないだろう。


 ふぅ。とりあえず今日は洗うだけにしてさっさと帰ろう。

 水に浸かった御蔭で多少眼は醒めた。

 臭いも落ちたみたいだし、森から帰る時は必ずココで汚れを落としてから帰った方が良さそうだな。

 ……おや?


 俺が巣穴に戻って来ると、何か細長いモノが巣穴から出て揺れてます。

 ちょっと、巣穴塞がれたら戻れないじゃないか。

 なんだよこの長い物体。めっちゃくちゃ邪魔じゃないか。

 細長くもそれなりの太さを持つ斑模様の鱗尻尾。

 ……これ、蛇じゃね?

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ