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ウサギさん、ジョゼの選択

 ゆっくりと、意識が浮上する。

 おそらく、夢は見ていなかった。

 彼女は寝ぼけた眼で眼を開き、横に顔を向けた。


 ベッドに眠らされていたジョゼ。何を隠そう、王妃様部屋の豪奢なベッドだ。一番最初に寝れたことを光栄に思いたまえ。

 そんなジョゼの視線の先にいたのは、椅子に座ってジョゼを見つめていた戸塚葉桐。

 仏頂面の彼女を見てしばし。


「どれだけ待っても謝らないわよ?」


「起きて一番がそれかいっ!?」


 どう会話を始めるべきか思考錯誤したジョゼは、結局シャコタン王国で彼女を裏切り縄目の恥辱を味あわせようとしたことについて先手を打つことにしたらしい。


「イルラは? といっても私が聞く資格はないかしら?」


「イルラも無事よ。今は交代で見張り中よ、あんたをね」


「そう……ところでここは?」


「気を失う前の記憶を精査してみれば?」


 けっとやさぐれるようにいて葉桐が告げると、むーっと思考に埋没し始めるジョゼ。

 その顔が、次第羞恥に染まりだす。

 眉を顰め、頭を抱え、両手で顔を覆って絶望する。

 自分が何をして何をされたかフラッシュバックしたらしい。


「一つ……聞いていいかしら?」


「ええ。いいわよ?」


「私は、負けたのね?」


「ええ。それはもうシャコタン王国兵の前で盛大に。神前契約とやらで奴隷宣言までしてたわね」


「なんとい……人生一番の失態だわ。ウサギなんかに負けただけじゃなく、スキル発動もウサギの許可がいるようになるなんて……」


「気持ちは分かるわ。アイツ遊びまくってたし。あんなおちょくられ方したらそりゃ悔しいでしょ」


「あのウサギは?」


「そこにいるでしょ? まだ正座中よ」


「正座?」


 と、葉桐の視線の先を見るジョゼ。

 まさか俺が同じ部屋で正座しているとは思っていなかったようだ。


「このウサギ、結局なんなの? 本当にワールド・エネミー?」


「ええ。それは確かよ。ねぇ磁石寺君」


 おい、それ言っちゃうのかよ。もうちょっと場というのがあるだろ。言うならもうちょっと相応しい場所で暴露しようぜ?


「磁石寺? 誰?」


「そこのウサギよ。私達のクラスメイトだった奴。中浦さんに殺されたのいたでしょ」


「……?」


 小首を傾げ、心底不思議そうな顔でこちらを見るジョゼ。まさかお前……


「ごめんなさい、興味の無い人間なんて覚えてないわ」


 ひでぇなオイ!?


「でも、確かにクラスメイトの誰かが死んだのは覚えているわ。それが、ウサギになったのね?」


「正確にはウサギに転生したそいつのいる世界に私達が召喚されたってところね。偶然にしても出来すぎよね?」


「必然でしょう? 大方そのウサギに引っ張られたとかじゃないの?」


 失敬な。俺じゃなく神を名乗る爺さんに言ってくれよ。あいつが元凶だって。


「神……ですか、本当にいるのですか?」


 いるよ? マジにどうしようもない飲んだくれだけどな。あと神っつっても本人曰く俺らよりも高次元の生命体ってだけらしい。

 つまり、俺らが使ってるスキルのさらに上位スキルを使って世界創造とかやっちまう存在なんだとよ。


「そう……この世界もそいつらの箱庭なのね。ワタシはゲーム感覚で国を掌握したけど、神はゲーム感覚で世界を作っていた訳、か」


 はぁ、と溜息一つ。

 ジョゼの奴妙に落ち着いてるな。

 普通は戸惑ったり焦ったり暴れたりする所なんだけど。


「驚いてるし戸惑ってるわ。絶望もしてるし、でも、それで何かが解決する訳じゃないでしょう?」


 そりゃそうだ。


「それで、少し落ち付けたから聞かせてくれる? ここは何処? 今はどういう状況?」


「そうね……簡単に言えば、ウサギに負けて散々公開処刑された女帝様が天空城に消えたことでシャコタン王国軍が大混乱、ボザーク帝国が追撃再開してシャコタン王国領に攻め寄せてるところ、かしら?」


「……そう、おもったよりは早めに起きれたようね」


 どうやら最悪を想定していてシャコタン王国が滅びた後に起きた、とかを考えていたようだ。

 まだ起死回生できる状態で起きれたということか?


「あんたまだシャコタン王国で天下統一とか考えてんの?」


「そのゲームは天空城のせいでゲームオーバーだったわ。もうシャコタン王国は捨てるつもり」


 うわーお、国あっさり捨ておった。

 こいつは襲ったからって安心してたら俺を捨てて再び敵対とかしちゃいそうだな。神前契約で縛っといてよかった。

 といっても、奴隷契約というよりは、固有スキルを使う際に俺の許可が必要なことと、俺を彼女自身では殺せないってことだけだ。

 それ以外は全く縛ってない。


「そうね、次は、このウサギの参謀として遊ばせて貰おうかしら」


「ちょっと磁石寺、こいつ本当に回収して大丈夫だったの? シャコタン王国にリリースしない?」


 しません。

 既に襲ったので俺の女っすわ。

 俺の念話を聞いたジョゼがうぐっと顔を赤らめる。

 クール美女が顔を赤らめるとかなにその御褒美。あと葉桐さん、その汚物を見るような目は止めて? 癖になったらどうすんの!

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