うさぎさん、問答無用の無慈悲な反撃
「うおぉ、動いたっ!?」
福田が思わず感嘆の吐息を漏らす。
いや、あのな、クソジジイ。
「どうじゃねM・C。ここが新たな我等の城よ!」
だからな、クソジジイ。俺ら中にいるんだわ。
外、見れないんだわ。
外から城が浮かぶ姿も、見れないんだわ。
エレベーター乗ってるのと何処が違うのか言ってみろ。
「……おおっ!? 確かに何も見えないのは辛いの、そら皆の衆こっちゃこい」
ポルンクスタの中央部に皆を案内するチョコミント。
戸惑いながらも皆が集まると、ポルンクスタに手を当てるジジイ。
すると、この部屋の白い壁がブゥンと外の景色へと切り替わる。
「ふぉっふぉっふぉ。どうじゃ360度の大パノラマ。これもともと備わっとった機能じゃぞ」
それ自慢にならんよな?
ジジイが作ったもんでもねーんだろ。
というか、すっげぇ注目されてるんですが?
床一面も外の景色が見えるようになっているので、眼下でこちらを見ながら叫んでいる兵士達の群れが見えた。
というか、おい、あそこに居る魔法部隊、こっちに攻撃しようとしてねぇか!?
「む? ほんとじゃな。バリア張っとくかの」
バリアあるのか!?
っていうか城からだとバリア張ったかどうかわかんね……ぎゃあぁ!?
無数の魔法の光が瞬き、こちらに向かって超高速で飛来する。
外の景色が見えるせいでこちらに向かって来る魔法弾が普通に迫って来るのが見えて……城に当る直前で爆ぜる。
一応、バリアは張ってあるみたいだな。
どういう種類なのか全く分かんないけど。
「よいかM・C。主が起動キーでこの城を浮かせたとしよう、バリアのバの字も知らんおまいさんじゃこうして城を守ることすらできまいて」
うぐっ。確かに言われた通り、俺が起動してたら防御は不可能だったろうな。
下手すりゃ城が撃墜されてたかもしれない。
その場合はディアリオさんに頼んで外に転移。その場の全員壊滅させるけどな。
七大罪系うさしゃんになるのも吝かではないのです。
「その点、このポルンクスタを調べ尽くした儂が城の駆動系統を任されとれば、じゃ、これこの通り、防御万全迎撃も万全じゃ!」
迎撃?
不審に思った次の瞬間。城が唸りを上げる。
ヴォンヴォンヴォンヴォン、とまるでハイメガ粒子砲でも溜めこんでいるのかと思うほどに不気味な唸りと共に城の周囲に電光が走る。
そして……
神の鉄槌とすら思しき雷撃が城の真下から出現した砲塔から、攻撃して来た魔法師団向けて撃ちだされた。
着弾と同時に大爆発。キノコ雲が噴き上がり、周囲に強烈な風が吹き荒れる。
「ちょ、何よこれぇ!?」
「おおぅ。撃つの初めてじゃったがこの城にある第二位の迎撃システムじゃ。神の裁きと呼ばれとるぞ?」
なんつーもん装備してんだこの古代遺跡!?
「他にもの、レーザー砲320門、波動砲4門、対空機関魔法銃200門などなど、武装はまだまだ沢山あるぞい。全部メンテナンス済みじゃ」
この城、何と闘ってたんだろう……
「しかも前門下にある超大型ニュートリノイレイザーは同じ空飛ぶ城相手でも粉砕できる威力らしいぞい。こちらが最大級の攻撃になるぞい」
だから何と闘ってたんだよ!?
この城だけで全世界相手取っても勝てそうな気がするぞ。
「ポルンクスタ制御は儂が受け持とう。そもそもドクターである儂は研究出来れば何処でも良いからの。この設備は特に儂ごのみじゃし? そのついでに城の制御もしてやるぞい。代わりに儂に危害が及ぶのを防ぐのじゃ」
うーん。実質的な実害はなさそうだから制御任せちまうのも問題は無い、かな。
「機械共にも主の知り合いは登録して友軍機として認識させるから自由に使って良いぞ。メイドロボは今までも掃除に使っておったし。メンテナンスロボも大手を振って散らばらせることができるの」
まぁ、掃除しなくていいってのは助かるな。
でもチョコミント、あんたなんでここに居たんだ?
ピスカの居た研究施設でも充分だっただろ。
「いくつかの秘密結社で情報をやり取りしておってな。儂は始めそっちにおったんじゃが、ここにおったドクターが寿命で死んでの。死ぬ間際にこっちの作業引き継がないかと言われたんでこっちに来たんじゃ。ピスカはお前さんみたいなのが来る事を願って向こうに置いて来たがの」
なるほど、初めからピスカは新しいご主人待ちだったのか。
多分チョコミントがもうすぐ寿命で死にかねないからだな。
っておいジジイ、お前が死んだらこの設備どうすんだよ!?
「ピスカに移譲させようと思っとったんじゃが。どこじゃ?」
あー、残念、今は別行動だ。いつ戻るか分からんぜ。
「それは残念じゃのぅ。仕方ない、では適当に……」
「それでしたら家のことですし、私が」
と、ユーリンデが立候補。何か装置頭に付けて知識をインプットするらしいけど大丈夫か?




