ウサギさん、これは正当防衛だから!
古城の中へと入る。
光が全く入り込まないせいで物凄く暗い。
「ハイ・ライト」
楓夏が率先して魔法を唱えた。
ライトの魔法を強力にしたハイ・ライトにより昼間のように周囲が明るくなる。
へー。ハイ・ライトって攻撃スキルじゃなかったのか。
「大体一時間くらい持続するわよ」
「へー。このスキルダンジョン探索に便利だね」
「ええ。むしろその為に覚えたのよ。私達よくダンジョン潜ってたんだけど松明って結構暗いのよね」
必要に駆られて覚えた魔法らしい。
確か俺も使えたな。光系兎さんに一度進化しないとだけど。
あっちの兎はアッシュラビットから止まってたからそろそろ進化進めとこうかな。
ま、古城攻略が終わってからだな連続進化は。
光に照らされたのはエントランス。
赤い絨毯が敷かれた入口の広間で、目の前には中央階段が二手に分かれて二階に繋がっている。
さらにその横には扉が左右に一つづつ。
さらに階段の裏側が壁と離れていて、階段に隠された奥の扉が一つ。大きな扉なのでおそらく食堂に向かう扉だろう。
いくつか青銅甲冑のようなモノが壁に並べてある。
これ、勝手に動いたりしちゃうんだろうか?
城のギミックとしてはありきたりかな?
「へー。こんななってたんだ」
「ルアネさんはここ入るの初めてなんでしたっけ?」
「ああ。あたいが守護者になったのは百年程前だから、百年以上手つかずだ」
それにしては内装滅茶苦茶綺麗だよな。
「ここ、古代で天空に浮いてた城らしいですよ。数千年前だそうですが」
「へー。そんな昔の遺跡なのかい」
なんか、天音とルアネが楽しそうに会話してる。
名前が似てるから親近感湧いちゃったのかい?
しっかし、なんか生活感あるなここ。誰か住んでるっていうのも確実なのかもしれない。
んじゃ、時間もあるし一部屋ずつ調べますかボルバーノスさんや。開けてねー。
―― いや、自分で開けなよー ――
いまスラ子に突き刺さったままなので動けんとです。脱出していいっすか?
―― そのままでー。天音っちよろー ――
おいおい、ボルバーノスさんが開けるんじゃないのかよ。何かあったらどうするつもりだ。
―― どうせヤバそうなら瞬間移動で君が助けるでしょ。この姿だから扉開けるのメンドイんだよ ――
なんてものぐさな。
だったら俺の拘束解けッてんだ。
「あんたの拘束解いたらルアネさん襲うでしょうが」
何を言ってる雲浦、拘束解かなくても転移して襲えるんだぞ?
「だったら勝手に転移してなよっ。いちいちふざけるな、ムカつくッ」
雲浦よ、ムカつくなら俺に話しかけなきゃいいじゃーん。
へっへーんムカつかれるウサギさんだよー。やーいべろべろばぁ。
「この、腐れ怪人がっ!」
ぎゃー、正義の味方が怒ったぁ、ボルバーノスさんへるぷみーっ。
―― はいはい、がんばえー ――
スルーしやがった!? 畜生、転移っ!
天音が一つ一つゆっくりとドアを開く中、俺は正義の味方をおちょくりながら転移で逃げ回る。
いくつかの扉を開いた時だった。
唐突に危機察知が仕事した。
天音の前に即転移。
目の前に襲いかかるハーピーが一匹。
索敵に反応無かったぞこいつ!? 特殊なスキル持ちか!?
「隷属け……」
唸れ俺のゴールドフィンガーッ!
テクニシャン、最大限に仕事しろぉっ!!
ハーピーが何か声を出していたが、放っておけば天音に危害が加わりそうだったのと、滅茶苦茶好みの顔立ちだったのでウサギさんは全力で妨害、そのまま逆に襲っちまうぜぇっ!!
……
…………
………………
えー、そのー。只今土下座で反省中のうさしゃんです。
ちょっとした手違いでハーピーさんが痙攣する事態になったのですが、止める暇なかったということで事後にオイラが怒られました。
なんで天音の危機を救った筈なのに俺が怒られなきゃならな……あ、はい。反省してます。
最初の一撃だけでノックダウンしてましたもんね。追撃のうさしゃんはいりませんでしたね。
「ちょ、ちょっと? こいつ、ステータス見てよ皆っ!」
ん? どうした?
新しい俺の彼女がどうかし……は?
え? ハーピーちゃん、ネームド? 名前……鏡音……孝作? ? ッ!!?
「こ、こいつ、鏡音の転生体ッ!?」
「え? 嘘だろ!? 鏡音って、あのネクラそうな男だよな? 死んでたのか!?」
「あ、そうか、中井出たちは知らなかったんだったか、僕がトドメを刺したんだ。こいつの固有スキル奴隷契約はかなり凶悪だったし、咲耶を奴隷にしてたしね」
「そういえば、さっき奴隷契約って言おうとしてなかった?」
「うわっ、じゃあこのハーピー、夜霧さん奴隷にするつもりだったのか!?」
どうしよう、元男襲っちまった……ボルバーノスさん、ど、どうしようっ!?
知らんがな~、じゃないよっ!?
……ま、まぁ、今生は雌だし、も、問題ないよね?




