ウサギさん、暗殺者、居候する
グレースのお金が居る理由だが、どうやら病気がちの弟が居るわけでも、母が危篤状態というわけでもなかった。
ただ単に生活難でお金に困ってるだけらしい。
それでなんで暗殺業に身を落としたのか。
え? ハーフエルフだから森で暮らせなくて人の街に来た?
しかも春を売るような職業に付きたくなかったし、普通の職業は殆どクビにされたから楽に稼げる冒険者になろうとした。でも雑草と薬草区別が付かなくて冒険者も無理だと悟った?
で、落ちぶれるように闇ギルドに来て暗殺を始めた、と。
成功は? 今の所一つも無い? というか俺が暗殺初めて? 二つ名は仕事が舞い込みそうだから自称した? いや、ダメじゃん!?
暗殺者の才能もないよチミ。諦めなさい。
「ふええええっ! ウサギがイジメますぅーっ」
「あー、はいよしよし」
ユーリンデはなんでグレース慰める係になってるの?
一旦落ち付いたんだから放置でいいでしょ。
いや、まぁ別にいいんだけども。
「んー、でも他の奴を暗殺に向かったとしてこんな状況だとしたら、確かに向いてないわね」
「いや、雲浦、向いてないとかそういう問題じゃないだろ。まず間違いなく返り討ちで殺されるぞ」
「えぇ!? そ、そんな。私殺されるんですか!?」
いや、暗殺者続けてりゃ護衛とぶつかることもあるんだし、今日みたいに屋敷内で迷ってれば普通に捕まって普通に犯されて普通に殺されて普通に道端に捨てられるパターンだろ。
「ひぇーんっ、ウサギがイジめるぅーっ」
「あなた、あんまりイジメちゃだめよ。めっ」
ちょ、待って、俺は事実を言っただけで、実力の無い暗殺者とか普通に殺されるの当然だからな!?
「ふえぇぇ、だったら、だったら私どうしたらいいんですかっ! このままじゃ餓死しちゃいますぅっ」
ユーリンデに縋りつき涙と鼻水流しながら告げるグレース。
いや、なんでそんな顔になっちゃうの。黒尽くめ状態だった時の冷徹そうな声どこいった?
「じゃあ、私のメイドになる? 衣食住は付いて来るわよ?」
「い、いいんですかぁ!?」
ユーリンデ、安請け合いしない方が……
「食事とか掃除とか洗濯とか出来ませんけどいいんですか!?」
話では普通の仕事を斡旋して貰った時にメイドの仕事もやったらしい。全部出来なかったそうだ。なんでやねんっ。
皿洗いで皿割りまくり、掃除は適当、洗濯すれば色落ち色移り、服破れ。
だからなんでやねんっ。
貴族女性の髪を結えばこんがらがり、服を着せようとすれば服を破り、身体を洗おうとすれば垢すりで背中をずりっ。
ワザとやってんじゃねーのか!? ってくらい酷い内容だった。
えっと、結局メイドとして何が出来るんですかね?
さすがのユーリンデもあ、これ早まったかも? といった顔をしている。
うん。最悪俺が引き取るよ。ウサギさんに襲われるだけの簡単なお仕事ならチミでもできるでしょ。いろんな男相手取るよりはマシだと思うよ。
何やっても空回りするなら初めから何もしない職業でいいんじゃない?
なぁ福田?
「そこでなぜ俺に振るかな!?」
「Oh、言われてみれば福田何もしてマセーン」
「ぐぅっ!? 反論しようと思ったけどジョージの奴地味にスキルが有能だから戦闘で役立ってやがる……」
残念だったな福田。お前のスキル、何だっけ、黄金の右手?
金色に光るだけ? あ、違う、金運上昇効果があるな。
つまり居るだけでパーティーメンバーのお金収集率があがるってことだ。
ほほぅ、君はそこに存在するだけで皆に役立つ存在だったのか。
「おぅ、マジか? お、俺役立つだろ! ふ、はは。役立たずじゃなかった。なかったんだよジョージ!」
「Oh、福田役立ってないわけではなかったですね」
まぁ、俺は出会う前にストロめっちゃ持ってたけどな。
「煩い黙れうさ公。俺のスキルを馬鹿にすんな!」
「残念だったなゴールドフィンガーって言ったらあっちっぽかったのにな」
「上田、お前そんなこと考えてたのか……」
うわ、福田が引くとかよっぽどだぞ。空気読めよ上田。
「え!? なんでそうなるっ!?」
「上田ってそういえばスキルなんだっけ? 打撃強化? 戦闘クラスかぁ」
「元道さんたちのメンバー内だと俺のスキルより役に立たないんじゃね?」
「はぁっ!? 俺めっちゃくちゃ役立ってるし!?」
「え?」
楓夏が話を聞いていたようで、素の顔で驚く。
「え?」
それに反応した上田が嘘だろ!? と驚く。
「ふふ、冗談よ。それなりに役立ってたわよ。多分」
「多分!?」
「大丈夫だ。上田はしっかり闘っていたぞ」
「真廣さんっ」
うっわー、丸分かりだな。
真廣の言葉で一気に救われたような顔になる上田。他のメンバーが何を言おうが以降どうでも良さそうな顔をしている。
うん、つまりこいつは真廣に気がある、と。まぁ、前から分かってたことだけどな。




