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ウサギさん、親の代わりに赤ん坊に彼女紹介してみた

「ここに、いるの?」


 闇ギルドを出た俺は、アジールを魔神に会わせるという約束をしていたために彼女を貴族邸へと案内していた。

 目の前に出現した貴族邸を見上げ、アジールは珍しく気後れしたような顔をしている。

 まさに陽キャの城だ。陰キャが立ち向かうにはあまりにも無謀な場所かもしれないな。


 貴族邸の玄関に向かう。

 若干怪しい動きになっていたが、ゆっくりとアジールが玄関前に辿り付きドアノックを叩く。

 現代日本とかなら呼び鈴鳴らせばいいんだけど、この世界の貴族邸は大抵ドアに取りつけられたライオンの顔の彫刻とかにくっついた吊革の持ち手部分みたいな丸い奴をドアに叩き付けるドアノックを行うことで屋敷内の誰かに来客を告げるのである。

 呼び鈴付けて引っ張ったら鳴るようにすればいいのにな。そっちの方が来客分かりやすいぞ?


 ドアノックをした次の瞬間、開かれるドア。

 そこに執事さんがそーっと出て来る。

 警戒してらっしゃるな。

 よっすと手をあげたウサギを見て安心したらしく、直ぐにドアの後ろからでてきた。


「ウサギ様、こちらの御仁は?」


 ―― おいらの客です。中入れてもいい? ――


「旦那様より、危険が無ければ問題ないと言われておりますので入って頂いても構いませんが……その……」


 アジールの容姿を下から上から見る執事さん。

 どう見ても不審人物ですね、分かってます。


「あまりこういうことは言いたくないのですが、できうるならば貴族邸に出入りしても問題の無い服装にしていただきたいのですが」


「これ、一応私達の正装なんだけど?」


 魔女ですもんね。魔女としては確かに正装だ。でもやっぱり幸運の首イヤリングとか指の指輪とかはちょっと貴族邸に出入りしていい存在じゃない気がします。


「今回だけは、ウサギ君の知り合いということで多めにみましょう。次来る時はドレスと言わずとも普通の服でお願いたします」


 くっ、貴族邸に入るのにドレスコードが必要になっちまったか。

 仕方ない。アジールあとで普通の服買いに行くぞ。


「似合わないと思うけど、魔神様に会うために必要なのなら、仕方ないわね」


 溜息を漏らすアジール。安心しろ、俺がしっかりコーディネイトしてやるぜ!

 



 ディアリオさんの部屋へとやってきた。

 クラスメイトたちは全員もう戻っているらしく、自分たちに割り当てられた部屋でゆったりしてるらしい。

 福田達は結局ナンパ成功はならなかったようだ。

 一部おっさんが釣れたらしいが身の危険を感じたのでお暇して来たらしい。

 残念だったな。彼女は出来なくても彼女に成れたかもしれないのに。


 ―― こちらが魔神ディアリオさんです ――


「だぁぅ?」


 ベビーベッドに座っていたディアリオさんが小首を傾げる。

 どうやら今は俺を覗き見してなかったようだ。

 なんだその女? といった視線を俺に向けて来る。

 なんか魔神に会いたいらしくって、ディアリオさん紹介してみました。


 ―― ウサギよ、流石に魔神といえど転生した我は人の赤子、幻滅するだけでは? ――


 呆れた念話を俺に飛ばして来るディアリオさん。

 しかし、アジールにはこれで充分だったようだ。

 片膝ついて傅くと、両手を組んでディアリオさんに祈りを捧げるアジール。


「ウサギの言動間違いなく。魔神様、お目通りさせていただき恐悦至極にございます」


 ―― う、うむ? ――


 ディアリオさんが困惑していらっしゃる。

 純粋な崇拝をぶつけられて動揺しているようだ。

 ってか赤子なのに信じちゃうの?


「私達魔女が見るのは相手の魂力だと言ったでしょ。この輝き、間違いなく強力な魔に連なるモノ。魔王などお呼びも付かぬ魂力だわ。なんと神々しいのでしょう」


 ―― そ、そうか? ――


 ディアリオさんがたじたじだ。

 めっちゃ憧れの瞳でディアリオさん見つめるんだもん。さすがにディアリオさんもこんな目で見られたことはあるまい。

 どうしていいか分からないようだ。


「魔神様。どうか、どうか私にご加護を頂けませんか? 魔神様からの加護である、というだけでいいのです。例え内容が呪いであったとしても構いませんっ。どうか、どうか迷える子羊を贄にする如く私にお慈悲を」


 言ってる事無茶苦茶じゃね? とりあえず魔神の加護を貰ったというステータスが欲しいらしい。

 魔女にとってはそれがとてつもない偉業になるんだろう。

 ディアリオさん、ちょっとだけお願いしてもいいですか?


「おんぎゃぁ」


 ―― それで満足するようだしな。何でもよいというのならやろう ――


 そういえばディアリオさん、狒狒爺が言ってましたけど加護の隠蔽してやったらどうです? どんな内容か分からなければ他人に自慢しても大した加護貰ってねーじゃん、とか言われませんし。


 ―― そんな酷い加護与えるつもりはないのだが。まぁいい隠蔽はしておこう ――


 と、いうわけでアジールはディアリオさんの加護を手に入れた。

 いまさらだけど人間にも加護与えられるんだな。リアになんかあげてみようかな。

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