ウサギさん、S級の心得、右から左に受け流す
エクスが守護者になりました。
ボルバーノスさんから守護者って何するの、っていう説明が開始される。
俺は暇になったのだが、ボルバーノスさんが説明の間、俺とエペにはアトエルトがS級冒険者の心得ってのを教えましょうとか言って来た。
まぁ暇だし、向こうの説明が終わるまで聞いとくかってことでアトエルトの話を右から左に受け流している。
「……と言う訳で、S級冒険者になるとギルドで受けられる手当などが一気に跳ね上がるんです。またギルド内に存在する遠距離通話装置を自由に使う権利を得られます」
桃瀬たちと会話した時使った奴な。
「他にもさまざまな恩恵がある訳ですが、まず……」
うん、覚えるの面倒だしエペがメモ取ってるから問題ないな。後で教えてくれい。
ノート見せてくれるだけでもいいからさ。
「それとですね、S級冒険者には……」
はー、早く終わんねーかなー。
「ちょっとウサギ君、ちゃんと聞いてる?」
聞いてませーん。
暇でーっす。
「これ重要なんだけど。S級冒険者会議、忘れず来なよ?」
え? なにその会議?
「うさぎさん。大切な話みたいですよ。年に一回、コロアでS級冒険者会議っていうのがあるらしいです」
マジかよ。面倒な。
「しかも前回は去年だったのですが、集まりが悪く全員揃ってませんでした」
ダメじゃん。
それ、行かなくてもいいんじゃね?
「さすがに最初の一回は絶対に出てください。そこでその年の方向性を決めたりしますから」
方向性ってなんだよ?
意味がわからん。意味がわからんから出ろってことだろ。はいはい、で、いつ?
「貴方本当に話聞いてませんでしたね。一週間後ですよ。丁度S級冒険者が全員コロアに揃ってますし、いい機会なのでべルクレアの紹介交えて行うと通達が……あ、うさしゃん君にはまだ来てませんか」
「来てないと思いますよ。ウサギさんの話じゃすぐこの依頼受けたらしいじゃないですか、多分帰ってから報告貰うと思いますよ」
だろうな。あのおっさんの事だから。伝え忘れてたわ。がはは。くらいは言いかねん。
「しっかし、あのアボカドはあたしより強いのかな?」
レパーナ、何も分かってないみたいだけど、この面子で一番弱いのがお前だからな?
で、どうした?
「おう、暇だ。なんか面白い事するか帰ろーぜ」
―― ウサギ、お嬢様を退屈させるな ――
スラ子は俺にオトされた筈なのに、なんでそんな命令口調なの!?
皆俺にキビしくね?
―― 終わったよー ――
お、ボルバーノスさん終わったか。
俺たちはエクスに別れを告げて森を去る。
ちゃんとS級冒険者としてこの森にFランク冒険者が来ても大丈夫なようにエクスと交渉しておいた。
ヤスから寝取った女性陣のお世話もよろしくな。天空城が俺の家になるようなら迎えに来るぜ。それまで誰も死なせるなよーっ。
―― ご主人、無茶苦茶でんがなーっ ――
エクスの念話か今の?
どっかのお笑い芸人かと思ったぜ。
やっぱりアボガード系はお気楽芸人気質っぽいな。
コミカルな動きはワザとやってる可能性がでてきたぞ。
笑いを取ることが心情みたいな感じならあいつらの変な動きとかに意味が出る。
驚き方からしてこちらの笑いを誘おうという魂胆が見え見えだったからな。
アボガードたちは笑いの刺客だったんだよ。
エクスと分かれた俺たちはレッセン共和国へと戻ってくる。
ギルドに戻ってみると、「伝え忘れてたわ。がはは」とバッツが笑いながら一週間後にコロアでS級冒険者会議があると伝えて来た。
マジでがははとか笑いやがったし。
でも、コロアには一週間後だろ。だったら別に急ぐ必要ないよな。明日はディアリオさんに送って貰って家を見に行くとしよう。
皆でピクニック気分でな。
そのまま浮かぶようならコロアに城ごと乗り込んでやろうかな。
どうやらアトエルトは俺にS級としての働きが出来るかを確認する試験官みたいな役割だったらしく、悔しいですが問題ありません。性格は問題ですが。とかいいやがった。ムカっとしたのでアトエルトを一体ゴールデンボールクラッシャーで撃破しておいた。
コピー体だったから本体にはノ―ダメージだったけどな。畜生。
さって、んじゃ所用は終わったし、街中に散った仲間たちの現状でも見に行くかな。
まずは武器屋から見に行こうか。
あ、ボルバーノスさんたちは帰るの? レパーナがオネム? そりゃ仕方ねぇな。
ボルバーノスさんたちと別れる。
スラ子の背中に突き刺さったまま鼻提灯ぶら下げてるレパーナはシュールだ。
あいつ、移動することすら面倒臭くなったらしく、帰りはずっとあの状態だったんだ。
町に付いた後に歩かすの忘れてたせいでギルド内ですっごい奇異な視線を集めちまったよ。
まぁ、本人気にしてないようだから問題はないか。




