ウサギさん、私達は守護者と認めません
さて、んじゃーキミにはこれから守護者をやる森の面々の前で自分が守護者になるぞってことを告げてくれ。
そんなことを唐突に言われたアボガランサーEX君はえぇーっとコミカルに驚き逃げようとする。
でも腕を掴んで俺が引っ張ると抵抗も無く連れて行けた。どうやら逃げるフリだったようだ。
腕力にモノを言わせた強制じゃないんだよ?
既に言われた通り集まっていた魔物の群れの目の前で、アボガランサーEX……折角守護者になるんだし名前ないと困るな。
皆、こいつに相応しい名前ってないかな?
「え? 私達で決めるんですか?」
―― いいねー。あっちのアーボくんはアボガードから来てるんだろ。ちょっと捻った名前とかいいなー。ランサー? ――
ダメだ。ランサーは良く死ぬから名前としては相応しくない。ランサーが死んだっ。って言いまくることになるぞ?
「おっし、あぼーでどうだダーリン!」
ゾンビの声か何かか? 却下。
「ではガランとかどうでしょう?」
ありきたりっ。
「アラン、とかどうですか?」
なんか男達の宴とか始めそうだから却下!
アトエルトもエペももうちょっといい名前にしてやれよ。
えーっと、って、おい、なんで今光った!? お前一体何をした!?
アボガランサーEXが唐突に光り輝く。ネームドモンスターになった証拠だ。
誰の名前が採用された? えーっと……名前、エクス?
おい、それどっから貰った名前だ? え? スラ子!? 念話来た!?
スラ子出来たのかよ念話っ!?
って、お前も念話できてんじゃん!? え? スラ子に加護貰った。なんでアボガード系ばっか優遇されんだよ!?
とりあえず守護者としてやっていってもらうため、仕方なくアーボと同じくらいの加護は与えておく。
んで、ネームドモンスターとなって念話が出来るようになったエクス君が皆の前へとやって来る。
本日より守護者になります、アボガランサーEXのエクスです。皆さんよろしく。
そんな念話を告げた直後、森の住民たちは殺意MAXでエクスに襲いかかった。
ありゃ、やっぱダメか。
守護者やるには実力がないとなー。
殺到する魔物達がエクスに激突。
アイギスの盾で突撃や攻撃を受け止め、ロンギヌスで薙ぎ払う。
腐っても神槍と神盾。その力は鬼神の如く。
押し寄せる魔物達が次々と宙を舞う。
竜巻でも起こったようにエクスに近づく魔物達が空高く飛ばされ地面に激突。
手加減されているのが凄いな。
エクスの実力かなり高くね? 下手すりゃアーボより高いぞ。
あ、そうか、アーボは天音とずっと移動してたからそこまで戦闘経験が無いんだ。装備のごり押しで闘ってたんだろう。
でも、エクスは違う。
アウレリスの森は丁度レッドキャップたちが居なくなったせいで他の森からの侵入者が山のように押し寄せた。
さらにコーライ村にやって来る外道な冒険者や盗賊たち。森に潜もうとした馬鹿どもを見付けだし、狩り、あるいは生かしたまま捕らえてギルドに突き出したり。
アボガランサーEXの数は多いとはいえ、強敵ぞろいの森で今まで毎日のように戦闘を繰り返して来たのだ。
たった一人になったからといっても森の魔物達程度に遅れを取る軟な鍛え方はしていない。
まさに万夫不当。片足前に出して槍を一閃。腰だめに槍を構えて、さぁ掛かってくるがいい。とでもいいたそうなエクス。
さすがにただただ突撃するだけでは敵わないと気付いた魔物達が気押されたように一歩退がる。
「つ、強ェ……」
―― アーボも凄かったけど技の切れが違うねー。どっから連れて来たのさウサギ君 ――
ふっ。彼はボガランサーEXの中でも最弱。奴らは未だとある森でその爪を砥ぎ、来るべき闘いに備えているのさ。
あ、ちょっとエクス。最弱じゃないって、いいじゃんかそれくらい、ちょっとしたエッセンスだって。言葉のあやだよ。
怒ってる場合じゃないでしょ。悪かったって。
「アボガードの進化系。これほどの強さになるのですか……」
あ、これクロウ君がよく知る魔物だから後で教えてやってくれ。俺殺そうとするよりマジヤバいから。アウレリスの森こいつが群れで存在してるからね。
「え? 群れ? この実力で?」
そう、この実力で。
「バケモノの群れが森の中に?」
そう、アボガランサーは群れで行動するほど強くなるんだ。
「まだ強いのですか……?」
唖然するアトエルト。
でも事実だからしょうがない。
アボガランサーたちは同種族が周囲に居る程硬く強くなるのだ。
何しろダメージを均一化して防御力も上がるからな。
しかも一体一体が超強力なアイギスの盾持ってて、攻撃武器がロンギヌス。
こんな部隊、誰が好きこのんで倒しに行くんだか。自殺志願者としか思えんよ。
正直アウレリスの森の防衛部隊にしとくのは惜し過ぎる戦力だ。
桃瀬達の護衛として連れて行ってやればよかったかも。
今更だけどな。




