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ウサギさん、それぞれの日常7

 はい、連なって出まーす。

 杖がくっついて出て来ると、おぉーっと歓声が上がる。

 いつの間にか冒険者ギルドの前に人垣が出来ていた。

 何人いるんだ? 皆暇人かよ。


 よーし、次は人体切断を……おりょ?

 首根っこに感触があり、唐突に俺の身体が宙に浮く。

 どうやら騒ぎを聞き付けたギルドの職員がやってきたらしい。


「全く、ギルドの前で何してんだうさ公。冒険者達が出入り出来ねぇだろうが」


 呆れた顔のおっさんにぷらーんと捕まえられたまま、俺はギルドの中へと放り込まれる。

 後手に、皆を散らす職員さんたちがいらっしゃった。

 もう終わりかーっと去っていく町人たちと、残念がる子供たち。またなーっ。


「お前だろ、うさしゃんとかいうウサギの冒険者は」


 おお、よくわかったなおっちゃん。


「老人冒険者の探し人とコロアギルド長から詫び状が来てるからな。片耳でシロウサギ。たまにマジックスキルを使い、女性を見れば襲いかかるエロウサギ」


 酷いな、いや、確かにその通りだから反論しないけど。


「あと、人の言葉を理解して念話も扱える。だったか? レッセン共和国ギルド長のバッツだ。ちょっとギルド長室まで面貸せや」


 え? マジか、こいつギルド長かよ。言葉遣い悪いな!?

 多分だけど冒険者からギルド長になった口だな。

 そんなギルド長にぷらんぷらんされながらギルド長室に向かう俺。

 先々で出会った受付嬢とか職員さんが、え? ウサギ? みたいな顔で驚く。

 でもバッツは気にせず俺をぶら下げながら歩いて行く。

 どうでもいいけどさ、もうちょっと持ち方なんとかしてくんね?


 ギルド長室に招かれる。

 なんていうか学校の校長室みたいな部屋だな。

 デスクワークには最適だろうけど、殺風景だ。


 机の上に乗せられ、おっさんが席に付く。

 その椅子、この世界の社長椅子だろ。座り心地よさそうだな。

 どかっと座ってから机に両肘付けて指先を組むバッツ。


 厳ついおっさん顔が俺を見つめる。

 いやん。出来れば見つめて来るのは女の子だけにしてください。

 で、何の用ッすか。


「まず、確認のためにステータス確認するぞ。……よし、やっぱうさしゃんじゃねーか。コロアギルド長のガドウィンさんよりお前さんに謝罪状が来てる。今ギルド員が向こうに所在を告げてるが、構わねぇよな? お前さんギルド前でマジック披露してるくれぇだし、居場所バレても問題ないだろ?」


 ―― まぁ、問題はないかな。で、謝罪状? ――


 一瞬念話に驚いたバッツはデスクから一枚の手紙を取り上げ開封する。


「マジで意思疎通可能なのかよ。えぇと、だな。あー、先日S級冒険者たちが貴殿に襲いかかったのはギルドの知らぬところであり、A級冒険者ガロワによる指名依頼でギルドを通さずに行った事だった。しかしながらギルドではハンター同士の殺し合いは禁止となっており、これを助長したA級冒険者ガロワは一定期間ハンター業の禁止、またハンターとしての優遇措置の期間内廃止、S級冒険者達については一定期間の無休無給による塩付け依頼の強制受領。また女性陣は冒険者を引退したマックスが始めたパン屋で一定日数無休バイト。アトエルトは各国ギルドにて無休無給による受付業務強制とさせて貰った。本来ならギルド証の剥奪や無期限の業務停止にすべきところだが、S級冒険者全員がその罰を受けると各国のS級依頼が滞り世界的危機が起こる可能性が高いため、このような処置とさせていただく。他に何かしらの罰則を望む場合はコロアギルドにて会議をさせていただきたい。Byガドウィン。っと」


 最後のガドウィンは読まなくて良かったんじゃね?

 でも、成る程、ガロワ達が呼ばれたのは罰則のためか。

 コロアに行けばパン屋で働くリクゥーたちが居る訳だな。ちょっと見てみたい。

 でも、マックスさん辞めたのか。確か俺がゴールドフィンガー使ったおっさんだったな。うげぇ、いらん記憶蘇って来た。もう考えないようにしよう。


 S級冒険者への罰則なぁ。

 とりあえずバッツさんや。S級冒険者の女性陣全員孕ませるってのは罰にできますか?


「出来るか馬鹿野郎。そもそもS級が動いたのァテメェが人間の女性襲いまくってるからじゃなかったか」


 うぐっ。チッ、しゃーねぇ、また突っかかって来るならその時、いや、次に出会った時が奴らの人生観が変わる時よ。ふっはっはっはっは。


「このウサギマジ害悪じゃねーか」


 溜息吐くバッツさん。なんだよぅ、俺だって雄なんだから別に女性求めたっていいだろう?


「まぁいい。そっちは俺にゃぁ関係ねぇしな。んでな、こっからが重要なんだ」


 なんだよ、まだ何かあんの?


「S級冒険者に襲われて見事返り討ちにしただろうが。お詫びも兼ねてお前さんのギルドランクがS級になった。おめでとさん。これでお前さんもS級冒険者って訳だ」


 マジッすか!?

 え、S級ってそんな簡単に成れるものなの? 飛び級? この間Dランクになったくらいじゃなかったっけ?

 いや、そもそもS級冒険者に遅れとってないってことだけでS級冒険者になる資格は充分なのか。


「んでな。S級冒険者になったお前さんにさっそくS級の指名依頼だ」


 それが狙いかぁーっ!?

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[一言] こんな簡単になれるのかぁ?
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