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ウサギさん、ラドウィン塔へ行く

 ラドウィンが暴れている。

 それはもうすんごい暴れている。

 押さえつける兵士が二人から四人になった。

 四肢を押さえつけられ寝転ばされたのにまだ暴れている。


 あ、兵士の太ももつねって痛がらせた。ムカついた兵士が思い切り殴りやがった。

 静かにしろって、相手一応王族ですよね?


「残念だラドウィン。自決は無理か……」


「罪人ラドウィンを幽閉の塔行きに処す。連れて行け!」


 ビルが叫ぶように告げる。厳かな声に兵士達が無理矢理ラドウィンを持ち上げ、四肢を拘束したままどっかに連れて行ってしまった。

 どうやら幽閉の塔の滑り台体験してくるようだ。

 登って来れたりするのかね? ばいびぃーラドウィン。


「さて、セレスティ―ア。罪状は理解できているか?」


「国家転覆……王権奪取未遂」


 言っちゃうんだ?

 なんかもう全て諦めたような顔だし、これは服毒死するつもりかね?

 惜しいなぁ、この身体の持ち主が死ぬのは本当に惜しい。


「ウサギさん……お願い、助けて……」


 俺にしか聞こえないように、呟く。

 アレ、あんた絶望したんじゃねーの?

 目を見て気付いた。っつか、今めっちゃくちゃ凄い眼してたぞ。

 あれは、私はまだこんな所では終わらんよ。という執念が宿った目だ。

 私が居る限り、やらせはせん、やらせはせんぞーっという叫びが文字になって見える気がするぜ。


 つまり、絶望したような眼は演技。

 俺に同情を誘うためだったのか、この女、こんな時までまだ男を手玉に取ろうとしてやがる。

 お、恐ろしいぜ。こいつは死ぬ直前まで絶対に諦めずに成り上がる道を探す女だ。

 なんか、このまま死んだら記憶持ったまま転生して王国にざまぁしそうだな。

 それもそれで怖い。


 どうしよう。この女は助けない方がいい気がして来たんだが。

 なんかこう、助けたが最後獅子身中の虫みたいに内側からぼろっぼろにされて操り人形にされた後ぽいっと捨てられそうな気がします。

 でも、うーん。何かいい歩法は……


 神様神様、応答ねがいまーっす。


 ―― なんじゃいうさしゃん。あたりめはやらんぞ? ――


 なんでアタリメ!? 絶対酒盛りしてるだろ!? 神がやるこっちゃねー!?


 ―― 神だからこそやることなくて暇なんじゃ。儂らの世界じゃ仕事なんてあってないようなもんじゃし? 食糧などは自分の作った世界から取り寄せれば事足りるし? 衣食住は自前でできるんじゃよ。金のために働く必要ないからの、毎日暇なんじゃ ――


 だからちゃぶ台作ってそこでアタリメ食べながらお酒をぐびりかよ!?

 いい御身分だなオイ!? くそ、こんなのが神だなんてぇ!?


 ―― おかしいのぅ、なにやら願い事がありそうな会話かと思ったんじゃが、用が無いなら回線切るぞい? ――


 いやーっ!? 神様仏様。ぜひにぜひにお願いかなえてくださいませぇー、ははぁーっ!!

 俺は思いついたことを神様に願いでる。あ、いいの? それくらいなら問題ない?

 だよね、今まで俺にやらかして来たことを鑑みてもそれくらいはサービスだよね?


 よし、話は決まった。

 ならば後は国王の判断次第だ。

 さーって助けてみるぜぇセレスティ―ア。


「ではセレスティ―ア、国王陛下の慈悲により、即、死罪となるところを服毒に加え幽閉の塔行きが加えられた。そなたの尊厳を守りたければ服毒を、嫌だというのなら塔へ向って貰う。好きな方を選……」


 ―― はい、陛下、提案があります ――


「うさぎ……」


 はぁ、とやっぱりか、といった様子で溜息を吐く王族の皆さま。

 なんだよ、俺が何かすると全員思ってたのか。

 畜生、皆に俺が何か言ってくると知られていやがる。なんか手玉に取られてる気がしてやだなー。


「で? なんだ?」


 ―― セレスティ―アに選択肢一つ追加とかどうでしょう? ――


「選択肢、なぁ、なんとなく予想が付くが、言ってみろ」


 ガッパイさんがとげとげしい。でもオイラ負けないっ。


 ―― これからの一生をウサギさんの奴隷とかどうでがしょ? 王女様である以上奴隷生活はあまりにもキツイ生活、しかもウサギの奴隷となればさらに辛い、それが一生続きます。国家転覆する位ですし、野心に溢れた彼女にとってはただ死ぬよりも屈辱的かと思うのですが ――


「単にお前がセレスティ―ア欲しがってるだけだろうが、本当に変態だなウサギめ」


「どうします父上?」


「ふむ……まぁ、良かろう。だがウサギよ、セレスティーアがどういう存在か、理解できてない訳ではあるまい? 囲い込むというのならばそれ相応の覚悟がいるぞ? 何しろ、男の扱いはあまりにも抜きんでておる。この国の主だった大臣は皆、兄弟となっているらしいからな。宰相含めて」


 知ってた。

 うん、それが怖い。だからこそ、セレスティ―アには絶望して貰った方が良いのだ。

 ゆえに、俺が奴隷として飼わせて貰おう。ウサギに飼われる人間なんだぜ? ぐふふふふ。


「セレスティ―アよ。自ら罰を選ぶがいい。一つは毒を自ら呷る。一つはラドウィンと同じ幽閉の塔へ行く。一つは……ウサギの奴隷として一生を費やす」


「ウサギさんの、奴隷になります」


 うっわ、さっきまで絶望の瞳してたのに、今はもうしてやったりな顔してやんの。

 王様が気付くより早く元の絶望的な顔に戻ったけど、これはもうギルティですわ。


 ―― ではセレスティ―ア。奴隷の誓いを述べて貰う ――


「え? 奴隷の誓い? 奴隷契約は奴隷屋などで契約するだけの筈……」


 おいおい、困るぜセレスティ―アさんよ。それじゃあ国家転覆の罰として軽すぎるだろ。

 神の契約だぜ。契約内容を違えることは事実上不可能な、神前奴隷契約に決まってんだろぉがぁっ!! ひゃっはーっ!!

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