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クロウ、決死のパンデミック駆逐作戦

 コロアに舞い戻ったクロウは即座に冒険者ギルドに緊急依頼を出した。

 コロア全域に知らせてパンデミック阻止のために人全てを移動させるためだ。

 ただ、流石に国民全てとなると小一時間で脱出、などという訳にも行かない。


 着た物以外捨ておいて逃げろと言われても、人間、いきなり逃げるなど無理である。

 ついつい家財道具を集めたり、寝たきり老人を背負ったり。

 家を捨てて逃げるなど一朝一夕で出来るものでもないのだ。


「マズいな。逃げろと言われても浮浪者や看護必要者は捨ておくしかないか」


「なに言ってるカ、ここにアトエルトという人手がいるじゃないか」


「ああ、そうだった。クソ、想定外の事が起こり過ぎて頭が回ってねぇ」


「マックスはまだ起きないのか? こう言う時こそいい案だすだろ?」


「ダメだ。まだ覚醒すらする気配が無い。昏睡状態って奴だな」


「おい、街に向かってアトエルトが戻って来てるぞ?」


「私がか? コピー体は街に居るモノ以外は……待て」


「まさかっ!?」


 クロウたちは慌てて街壁から外を望む。

 遥か遠方、レパーナの森方面よりゆっくりと迫り来る一人のアトエルト。

 右にふらつき、左によろめき、かくんかくんと首を揺らしながら近づいてくる。


「ダメだ、回収出来ん。あれは感染固体だ」


「おい、確か木々や草も感染するんだったな。ってことは歩く周囲三メートルが感染源になるのか?」


「それだったら街の前にある草原地帯も既にゾンビ化しているはずだ。おそらく草木からの感染速度はそこまで早くないんじゃないか?」


「少しお待ちください、全体鑑定を行います」


「大丈夫かべルクレア。アレって下手すりゃ脳が破裂するとか聞くぞ?」


「私は大丈夫だったのでS級に昇格したんです。サポート系だけは突出してるので。戦闘面ではA級イケるかどうかですけど」


 べルクレアはそう言って全体鑑定を行う。

 周囲全てを鑑定するこのスキル、人が扱うにはあまりにも危険なスキルだった。

 何しろ眼に映る全ての情報が一気に脳に入って来るのだ。


 情報を一気に取り過ぎ脳がパンクする。

 普通の人が使えば即死してもおかしくない情報を受け取るのだ。

 べルクレアはそれを精査して必要な情報を手に入れることが出来るらしい。


 ただ、やはり多用出来るものではないらしく、たらりと鼻血が垂れて来る。

 脳への負荷はかなり重いらしい。

 よろめきそうになったべルクレアを背後からストナが受け止める。


「どうだ?」


「不自然なくらい感染速度が鈍っています……その、アトエルトさんのゾンビ体の歩いた場所はゾンビ化してますが、感染はそれだけですね。誰かが感染を阻害していると思われます」


「マジかよ。そりゃ感謝だな。だが、あいつは確実にここに向かってる。潰せるかドランク?」


「まだ遠い。魔法もどの属性を使うかがネックだな」


「確か、爆炎魔法だと飛び散った肉片から周囲に感染するんだったか?」


「土魔法で埋めてもダメだぞ。結局肉の周囲3メートルが危険だからな。下手すりゃそこ通った誰かが感染しかねねぇ。モグラが感染したりすりゃ大問題だ」


 言われてみれば地下でも3メートル縛りがあるのだ。クロウは思わず頭を抱える。

 今この時、知らない間に地中深くで感染拡大していたら、幾ら地上を食い止めても必ずゾンビ化が蔓延してしまう。うさしゃんを追い詰め過ぎたことで世界の危機が訪れてしまったらしい。

 どうすりゃよかったんだよっ。と自問自答してみても答えなど誰も与えてはくれなかった。


「風魔法もダメだ。ウイルスを散らすことになりかねん」


「と、なると氷か?」


「雷魔法だと焼くだけよね? 高熱処理だから大丈夫じゃないカ?」


「確かに、氷だと溶けた後にまた感染の可能性が残るしな」


「了解、じゃあ雷撃魔法で……」


「待て、何か来るぞ!」


 ドランクが魔法を唱えようとした時だった。

 ゾンビアトエルトの背後から、猛追するように迫る烈火の小動物。

 赤き体躯のそれは超高速で地面を走り、周囲全てを燃やしながらゾンビアトエルトに迫る。


 灼熱の体躯に包まれたそれはゾンビウイルスなど一瞬で消滅する程の熱量を持ってアトエルトに突撃する。

 燃え上がるアトエルト。ゾンビが燃えるだけのはずだが、本物のアトエルトが燃え盛るコピーを見てあわあわしていた。

 さすがに目の前で自分が燃える姿を見せられるのは嫌らしい。


「あれ……うさしゃん……か?」


「それはおかしいネ。さっきワールドエネミー・うさしゃん討伐された言てたネ」


「いえ、名称うさしゃん、種族サンラビットですっ!」


「なんだサンラビットって? 初めて聞いたぞ!?」


「あのウサギ、また進化先増やしやがったのか……」


「もう嫌デース、ウサギ大嫌いなのでドロップアウトしマース」


 マイケルはウサギはもうこりごりだ。とばかりに両手を上げて降参の構えを見せた。

 しかし、ウサギが彼を見付けたら見逃すかどうか。

 目の仇にしているので向こうから攻撃仕掛けて来るかもしれない。


「しかし、ゾンビを駆除してくれたのはありがたいな。自分で後始末でもしてるつもりか?」


「アレがそんなタマなら与し易いんだがな」


 しみじみ答えるクロウ。ウサギの性格を知っているだけにただゾンビの後始末をしに来たというよりは。クロウ達に報復に来たと思った方が良さそうであった。

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