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べルクレア、うさぎさんを追い詰めたらとんでもない状況になったんだけどどうしたらいい?

 起き上がる。

 起き上がる。

 起き上がる。


 死んだ筈の魔物達がゆらりゆらりと起き上がる。

 視線定まらぬ瞳で、濁った瞳で、あ――――と喉から音を漏らしながらゆっくりと歩み出す。

 右によろめき左によろめき、生者向けて歩きだす。


 まさにゾンビパレード。

 黄泉返りの死者たちがゆっくり、だが確実に広がっていく。

 必死に攻撃を始める魔物達。

 しかし、近距離系スキルしか持たない者たちは死人に近づいた瞬間もがき苦しみ死に至る。

 やがて起き上がり、歩く死者の群れに仲間入り。


 呆然としたままゾンビに近づかれたアトエルト数名も唐突にもがきだし、死に絶える。

 幻影ではなくコピー体だからだろう。消えることなくゾンビ化して歩きだす。

 このままゾンビが拡散すればマズいことになるのは明白だ。

 何しろ近くにはコロアの街があるのだから。


「ど、どうするネ!?」


「さすがにこれは想定外だ。ドランク、マージェスなんとか出来ないか!?」


「ゾンビを直す薬は未だに出来てない。頭を破壊するか脊椎を破壊して動けなくするしかない。魔法で吹き飛ばせドランク!」


「ちょっと待てドランク。爆裂魔法は使うなよ、アレの肉片がこちらに来れば感染するかもしれん」


 ストナの言葉に爆裂魔法を唱えようとしたドランクが詠唱を止めた。


「ストナ、神聖魔法でなんとかできるか?」


「おそらくだが。やってみよう」


 詠唱を開始し、聖属性の魔法を撃ち放つ。

 ゾンビの群れに直撃し、しかし何も起こらない。


「何故だ? 普通のゾンビなら消滅するはずだぞ?」


「正確にはゾンビじゃないってことか? どういう状態だあれ?」


「えっと、種族名ウォーキングZ。聖属性無効が付いてますッ!?」


 ゾンビの癖に聖属性が無効らしい。

 べルクレアの悲痛な声にS級冒険者たちは撤退を始めながら考える。


「弱点は?」


「ありません。皆普通の種族特性です。ゾンビ特有の弱点が書かれてません。代わりに、ステータス異常、寄生? 痛覚無効? 同族殺し……これ、ゾンビはゾンビでもカタツムリが寄生された状態のゾンビ化みたいです」


「ああ、あの気味の悪いカタツムリか。ってことはZウイルスか何かが感染すると操られた状態になるってことか」


「つまり厳密には死者じゃない、ゆえに聖属性が効かない」


「そして感染すれば周囲三メートルに感染する空気を漂わせるウォーキングZになる、か」


「めちゃくちゃ面倒くせぇ敵じゃねーか。寄生を解くことはできそうか?」


「無理だ。抗体を作ろうにも近づけないしな。とにかくアレが拡散しないよう繋ぎとめるしかない」


「クソ、完全な死人じゃなく生きてる奴が寄生された状態かよ。助けられるかどうかわからねぇけど助けられる可能性を見せつけられるせいで攻撃が鈍るぞ!?」


「魔物達がどんどん感染してやがる! どうするクロウ!」


「とにかくマックス担いで逃げろっ、マイケルじゃどうしようもねーだろ! アトエルト、コピー体は感染源になるだけだ、早く消せ!」


「そうしたいのは山々だが。感染したコピー体を消せないのだよ。もう既に百体近く感染してしまった。どうしよう」


「どうしよう、じゃねーよ!? なんでそんなに感染してんだ!?」


「ちょっと助けようとして、こう、ぶわーっと」


 蔓延してしまったようだ。

 こっちの方じゃなくて良かったと思うべルクレアだが、三メートルの縛りはキツい。

 知らない間に範囲に入ってしまえば一瞬でゾンビウイルスに襲われるのだ。恐怖感も半端無いし、不慮の事故でゾンビ化する可能性があることで疑心暗鬼になりかねない。


「こ、これ、飛び道具投げた後回収したら感染、なんてこともあり得るのか!?」


「どうしたカ? クロウ」


「いや、うさしゃんがばらまいてたロンギヌス回収しようかと思ったんだが、菌がついてて感染の可能性があるのなら回収もしない方がよさそうだな、と」


「言ってる場合か!?」


「命優先してくだサーイ」


「マイケルに言われたくねーよ!?」


「さすがにこれは俺でも生還不可能デース!」


 ゾンビ達に対処している魔物達を放置して、一先ずコロアへと逃げ去るS級冒険者。

 まずは国を優先に、逃そうというのだ。

 その間ゾンビの侵攻は魔物に任せよう、という算段らしい。


 とにかくうさしゃんを放置して必死に逃げ始める。

 追って来る気配はないので逃走に余裕はできるが、S級冒険者が全員揃って尻尾巻いて逃げた、となればさすがに醜聞となるだろう。

 だが、まずは国に危機を知らせなければならない。


「つか、リクゥーたちはどうした!?」


「リクゥーとコルトエアは不明だ。下手すればもう眷族に成っているやもしれん。回収ができなかった……」


 アトエルトが哀しそうに告げる。

 おそらくだが百人もの犠牲がでたのはリクゥー達を探して森を駆けまわっていたからなのだろう。

 結局彼女達を見付けることは叶わず、無駄にアトエルトたちがゾンビ化する結果になってしまったようである。

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― 新着の感想 ―
[一言] まさかの急展開で、本当に読んでいて楽しいです 続きを楽しみにしています。
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