表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
574/981

天音、レパーナ親衛隊10

 ついに私達の番がやってきた。

 桜坂美与、私こと夜霧天音、エペ、ユーリンデ、チェルロの五人である。

 正直寄せ集め感しかない。


 私と美与は地球組だし、エペさんはカラザンの人だっけ、ユーリンデさんはレッセンの侯爵令嬢だし、チェルロさんはメイドさんである。

 戦力的に見ても不安しかないので聞いてみた。

 私は後衛補助、エペさんも後衛補助、ユーリンデさんは後衛狙撃、チェルロさんは斥候、美与は重戦士になりたい。重戦士じゃなくて私を守れるように重戦士になりたい。だ。なんちゃって重戦士だ。重戦士みたいに防御力は高くないのにタンク役だ。


「では対戦するのは……ふむ、普通の戦士系で充分そうじゃなぁ。パリトン、主が揉んでやれ」


 現れたのはガイコツ騎士。

 威風堂々現れた青銅色のガイコツは、漆黒のプレートメイルを着込んだちょっと豪奢な騎士といった様子のガイコツだ。近衛兵とか言われてもしっくり来る姿である。


「パリトンはもともとどこぞの国の騎士らしくての。ドルアグスが連れて来た時には記憶が混濁しておったんじゃが、今はしっかりと自分の意思で動けるようになっておる。かなり強いぞい対人戦に関しては、じゃがな」


 予想通りに近衛騎士とか一番強い騎士とかだったのだろう。

 気を引き締めて闘おう。

 というか、この面子で闘いになるのかな?


「近づかれたら終わりね。チェルロと美与さんだったかしら、二人がどれだけ妨害できるか。私達は後衛ですし、矢もあまり効果はないでしょう。今回流石に夫から貰った弓を使う訳にも行きませんし」


 イチイバルだっけ? 障害物越えて目標に当る武器。

 便利だけど威力が高過ぎて相手を殺しかねないので今回は使わないそうだ。

 強力な相手だけに手を抜けないので万一に勝ってしまう武器を封印するようだ。


「ですが、チェルロ共々ディアリオ様より頂いた加護は少し使わせていただきますわね」


「あ、加護貰ったんだ」


「ふふ。人間にも加護が付けられるか調べて貰ったのですわ」


 悪戯っ子のように笑みを浮かべるユーリンデさん。磁石寺君の正妻らしいけど、私より襲われたのは後らしい。順序ってどうなってるんだろうね、ちょっと後でいろいろ問い詰めよう。

 納得できなかったら戦争だ。私も加護貰ったからただの後衛特化じゃないのだよ。


「じゃあ、やりましょうか」


「ええ。お互いに頑張りましょう」


 拳を突き合わせる私とユーリンデ。それを見た美与とチェルロが少し困った顔で苦笑いしていた。

 エペさんは二人の会話が終わったのを確認してから私の隣にやって来る。

 後衛型なので私とエペさんはユーリンデさんの背後に隠れる形になるのだ。


「み、皆さん気合入ってますね」


「うさしゃんの隣にいるためには実力も必要になって来るから」


「……え? そ、そうなんですか?」


「アレ、ほっといたら敵ばっかり作るから。その内強敵がきっと現れる、その時何も出来ないまま死んだって聞かされるより、私は一緒に闘いたい、って、思ったの」


「そっか……そう、ですよね。一緒に……後衛ですけど私も頑張ります」


 ふんすと力を入れるエペ。

 二人で笑みを浮かべあうと、正面の敵を見据えて詠唱を準備する。


「では、試合開始ッ!」


 狒狒爺の言葉と共に動き出すパリトン。

 大盾を構えて身体を隠し、隙間から視線をこちらに向けて皆の動きを伺う。

 隙のない構えだ。

 下手に向かえば即座に討ち取られるだろう。


「ウィアハイパワーアシスト」


「ウィアスピードハイブースト」


 魔法を唱え全員に補助効果を付けた時だった。既にチェルロさんが消えていた。

 さらに矢を撃って行くユーリンデさん。

 結構でたらめに打ってるのはいいんだろうか?


「弓って面倒よね、メイルがないと胸抉られるっていうし」


「ちょ、世間話しながら闘う相手じゃないですよ!?」


「大丈夫よ。私の弓矢、ホーミング仕様だから」


 どうでもいいように告げたユーリンデ。それを証明するようにでたらめに撃たれた矢が一斉にパリトン向かって方向転換。襲いかかる。

 驚くパリトン、防御できずに焦るが、矢自体は刺さることすらなく防具にカツンと当たって落ちて行く。


 なんだったんだ?

 小首を傾げたパリトン。その背後から飛びかかる何者か。

 はっと気付いた時にはパリトンの首に両足を掛け、首を掻っ切るようにナイフを当てたチェルロさん。

 か、カッコイイ。あれ、私もやりたい!


「人間ならこれでアウトです。まだ、やりますか」


 ―― 見事。弓は陽動か。だが、我は人間ではなくアンデッドである。甘いぞ娘よ ――


 突然ギュンと回転するパリトン。

 舌打ちしながら伸身スワンで背後に逃れるチェルロさん。

 メイドの前は暗殺者か何かだろうか? ちょっと後でアレのやり方教えて貰おう。


 防御を止めて走りだすパリトン。

 向かう先は美与。

 大盾構えて立ち向かうのだけど、彼女は重戦士ではなく重戦士になりたい女の子。

 ずどんっと盾を前にしてぶつかってきたパリトンに吹っ飛ばされる。


 ごろごろと地面を転がる姿をさらし、そのまま気絶してしまった。

 突進力がヤバい。

 思わず舌打ちするユーリンデ。

 防壁役があまりに脆かったせいだろう。御免なさい。私が代わりに謝ります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ