天音、レパーナ親衛隊6
「アーボはあのまま授業、ですかね」
「うむ。まだまだ掛かりそうじゃしのぅ、リンドバック、授業に移るなら泉の方でやっとくれ」
「お? おお、すまんすまん。ではアボガードよ、こちらに来るがいい。稽古であるが、良いか?」
えいえいおーっとジェスチャーするアボガードにリンドバックが笑みを浮かべる。
「では場所が空いたので次行こうかの。儂とボルバーノスは最後で良かろう。次は、チーム戦か」
「おう! 頼むぜ!」
狒狒爺さんの言葉に真壁君が答える。
スポーツやってるからか声がやたらおっきい。
正直この声聞いてるだけで身が竦んでしまう。
もう少し声量絞ってほしいなぁ。
まぁ無理なんだろうけど。
でも、やっぱり煩いからちょっとイラッと来る。
戦場に向かったチームは元道真廣、赤穂楓夏、真壁莱人、上田幸次、ルルジョパの五人。
元道さんは剣道部。赤穂さんは陸上部のマネージャーだったよね。真壁君が陸上部。上田君は……たしかバスケだったかな。ルルジョバさんはダンス部だっけ? あ、チアリーディング部だ。
前にぽんぽん持ったままサンバ踊ったからって野球部の応援出禁になったんだよ。本人は納得いかないらしいけど、当然だよね?
「ふむ。全員運動が得意、か」
私が五人を適当に紹介すると、レパーナ親衛隊の誰が良いかを狒狒爺が考える。
「ふむ。ではΨЖЯア、そなたでどうかの」
ΨЖЯアさんが茂みから現れ……え? 今、なんてった? 何アさん?
「あの……」
「ん? ΨЖЯアのことかの。リザード族の発音は難しいんじゃ。おそらく人間には出せぬ音であろうな」
成る程、言われるまま出現した魔物を見れば、二足歩行のトカゲであった。
先程のリンドバックのように甲冑を装備しているが、兜はない。
トカゲな顔がしっかりと見える軽装甲型の魔物である。
得物はショートソード。銀色に光っているからシルバーソードかな。それともミスリル?
盾は装備しておらず。代わりに硬そうな手甲を装備している。
防具に出来るし、そのまま握って殴れるので結構使い勝手がいいのだ。
問題は盾程硬い訳ではないので受けた瞬間諸共に腕を切り取られる可能性があることだろうか?
でも、今回ステータスに差があり過ぎるので四肢欠損の危険はないだろう。
むしろダメージが通るかどうかも怪しいくらいだ。
それだけ、このΨЖЯアさんの防御力が高いのだ。
リザード種ってことは竜種でもあるわけだし。かなり強そう。火とか吐くのかな?
ガシャン、ガシャンと重たそうな音を響かせ、ΨЖЯア……私的にはシャリアさんと聞こえるのでそう呼ばせて貰おう。
で、シャリアさんが定位置に付くと、狒狒爺さんが開始の合図を行う。
もう闘い開始らしい。
というか、元道さんたち普通に反応して動き出した。
さすがスポーツ部所属は動きが速い。
私だったらまだ準備すらしてなくて慌ててるところだ。
多分準備が整うまでは美与がフォローしてくれるだろうけど。
フォローされてるようじゃまだまだダメだよね?
ルルジョバさんだけが所定位置に佇み、他のメンバーはシャリアさん向けて走り出している。
結構速い。何だこいつ等。無駄に均整が取れてるというか、均整? 均整は違うか。えっと、なんていうんだっけこう言う時。連携? 連携だ。連携が取れてる、だ。
たまぁに出て来ない時があるんだよね。
元道さんが真正面から切り込む。
ロングソードっぽい剣だけど刀みたいに扱っている。
アレだと西洋剣としての威力がでない気がする。
真壁君は元道さんの背後から拳を握って迫る。
どうやら格闘戦を挑むらしい。
防具でガチガチに固めた相手に? 馬鹿なのかな?
赤穂さんはナイフを両手に一つづつ持って側面へと回り込む。
いや、そのまま背後に向かった。
死角からの奇襲みたいだけど、多分通用しないよ?
上田君は槍を扱うみたい。
皆よりも少し遅れて側面から接近していた。
そして、元道さんの一撃とシャリアさんの一撃が金属音を響かせる。
「ぬぅ、この程度か?」
「前座だからなっ」
相手の押し込む力を利用して一気にバックステップ。
元道さんが逃げた後ろから真壁君。拳を振り上げ雄叫び上げて突っ込む。
「んん?」
さすがに想定外だったようで、一瞬驚いたものの、手甲でガード。
「いってぇ!?」
そりゃそうだ。
鉄に拳打ち込んだら拳の方がイカれるよ。
拳をさすりながら横に逃げる真壁君。
遅れ、上田君が槍を構えながら突っ込む。
直ぐに反応するシャリアさん。
だが、その死角から迫る赤穂さん。
どうやらこの二人が本命らしい。
真壁君の一撃で呆気にとられたところに二人同時攻撃。結構考え抜かれた闘いだ。
下手な魔物ならまず狩れるだろう。
でも、相手がどういう存在かわかってないなぁ。
格上だよ? しかも防御が硬い相手だよ?
ついでに言うなら爬虫類だよ? 温度に反応する彼らに人間の奇襲とか奇襲にならないからね?




