天音、レパーナ親衛隊2
ウサギが赤ちゃんを乗せて森の中へと消えていく。
話を聞いていた限りでは、赤ちゃんが満足するまで走りまわって来るらしく、ボルバーノスさんが凄く複雑そうな顔をしていた。
彼の森がディアリオさんに半壊させられたからだろう。
さて、ウサギこと磁石寺君たちが戻ってくるまで、歴戦の魔物達と闘うのは残されたメンバーだ。
私、夜霧天音を含めたクラスメイトは、桜坂美与、雲浦兎月、ヘンドリック・ワイズマン、ジョージ=W=ロビンソン、福田孝明、中井出勧、瀬尾祷、戸塚葉桐、イルラ、元道真廣、赤穂楓夏、真壁莱人、上田幸次、ルルジョパ、中浦沙希それと先生の東雲咲耶。
さらに異世界組はエフィカ、リルハ、エペ、リベラローズ、イリアーネ、ペルセア、ユーリンデ、チェルロ、カルセット、ガロワ、シュリック、ボルバーノス。今更だけど随分と大所帯になったものだ。
「えっと、ガロワさん、どうします?」
「おお、そうだな。俺やシュリックは一人で闘うとして、お前さん等はパーティー単位で相手して貰え。向こうも闘いながらいろいろ指導してくれるらしいしな。いやぁ、今回はいい経験になりそうだ。あの実力ならS級冒険者数人がかりで闘って互角くらいじゃねぇか。そんな奴らが殺しに来るんじゃなく稽古してくれるってんだ、やるしかねぇだろ」
「あれ? おかしいな。僕が一人きりで闘うのだけ確定してないかい?」
「B級の先に行きてぇんだろ。だったら今のうちに格上との闘いを経験しとけ。おまえさんなら伸びるだろ」
「まぁ、やってみますけども。ふふ、僕様の溢れる実力はついにA級冒険者にも認められてしまったよ」
額に手を当てふっと笑みを浮かべるシュリックさん。なんでこの人は何か言うたびに恰好付けるんだろう?
薔薇が咲き乱れる幻視すら見えるし。
私はアーボを抱き締めながら皆を見る。
「ふむ。そうなると見知った仲間で連携を取った方がいいのか? ならば班ごとに分かれるか?」
「だな、中井出の言う通りだろ」
「待って真壁君。確かに貴方たちの班は今までの闘いでパーティー通りでもいいと思う、でも散り散りになった6班は? ジョゼさんの居なくなった2班も、1班なんて福田君だけよ?」
「そ、それは……」
中浦さんの指摘に困った顔をする真壁君。
ここは……ある程度闘いがやりやすいメンバーでチームを組んで、余ったメンバーを再編成するのがいいかも。
提案してみると、中井出君がふむ。と顎に手を当て考え出す。
「中井出君、とりあえず組みたい人同士でまずパーティーを組もう。それを見てから考えてもいいんじゃないかな。それから真ん中には誰と組んでも問題ないフリー組を集める感じで」
「そう、だな、ヘンドリック。その案で行こう」
そして私達は組みたい相手同士で集まりだす。
まず26人居るので5人組を5チーム作ろう。と言うことになった。
で、その5人で最初に決まったのは元道真廣、赤穂楓夏、真壁莱人、上田幸次、ルルジョパの五人。彼らは今までずっと変わらないパーティーだったので確定である。
二つ目に決まったのはエフィカ、リルハ、リベラローズ、イリアーネ、ペルセア、カルセットの六人チーム。王族組は初心者ばかりと言うこともあってエフィカさんとリルハさんがフォローに入った形である。
で、三チーム目は中井出勧、瀬尾祷、戸塚葉桐、イルラに中浦沙希を入れたチーム。
イルラがいるから、という理由で中浦さんが入って行ったことでチームとしてメンバーが埋まったのだが、元道チームじゃなくてよかったのだろうか?
残りで二チーム作ろうという話になるのだが、兎月さんがウサギに関連するのとは組みたくないとか言い始めた。
なので、私と美与、エペさん、ユーリンデさん、チェルロさんで一チーム。
ヘンドリック・ワイズマン、ジョージ=W=ロビンソン、福田孝明、東雲咲耶、雲浦兎月でもう一チーム。先生も既に毒牙に掛かってるけど、ヘンドリック君に知らせる訳にも行かないので兎月さんも気付くことはないだろう。なので、多分問題無し、である。
「んじゃー、チーム分けも終わったな。狒狒爺だったか、俺とシュリック、ついでにアーボは一人で闘う。指導よろしく頼む」
あれ? アーボも一人だけ? まぁボルバーノスさんやエリスエール相手に闘ってたらしいから一人でも大丈夫か。だとすると、アーボに防御お願いする訳には行かなくなっちゃったな。
「うむ。実力を確認してそれなりに闘いになる者に相手して貰おう。順番を決めておきなさい」
「まぁ、このチームのリーダーみたいなもんになってるしな。俺が一番槍だ」
「了解した。バルバッツ、相手してやるが良い」
「うぉれかぁ? 力ゆるめんのぁ苦手だぞぉ」
野太い声を響かせて、茂みを掻きわけやってくる緑の巨人。
3メートル大の巨大な男は、丸坊主の頭に角一つ。
顔には口と鼻と巨大な目が中央に一つ。
ゴブリンを一回りも二回りも巨大化させたような体躯のソイツは、がははと笑いながらガロワさんの前に立ちはだかる。
「お、おいおい、サイクロプス? マジかよ……」
「よろしぐなぁ。ぐへへ」
ズドン、休め態勢に移るために持っていた巨大鉄棒を地面に突き立てるバルバッツ。それだけで、地震が起きたかのような衝撃が地面に伝わったのだった。




